ステータス1
僕は、強くなるために、剣を振っている。
「はっ!」
僕は、大切なものを守るために、体力を作っている。
「やあああぁあ!」
そして、走る。風を感じる。
また、剣をふるう。
「フッ、フッ……」
荒野での生活は、決していいとは言えない。
いずれ終わりを迎えることも承知している。しかし、その終わり方は……まさかの形に終わった。
僕はいつも通りの訓練を終えて、昔ソラン師匠様が作ってくれた木造の小屋の前に立っていた。少し汗を拭きながら、持っている剣をドアの近くに置く。
ドアを開ける前に、僕は深呼吸をしてから開ける。なぜなら、心の準備が必要だ。
「ただいっ――」言いたいことがまだ終わっていないのに、柔らかい感触が顔面に直撃!こんな行動を取る主は一人だけ――
「お・か・え・り!アーベル君♡」
「っちょ!リョウコさん!前も言ったじゃないか!師匠様の姿で抱きつくな!男の様子に戻れ!」僕は少し熱くなった体を抑えて、抱きついてきた人を退かした。
退かされた人は少し口を尖って、手が空中で何かをいじっているようで、ソラン師匠様だった容姿は知らない男の様子に変貌した。
「アーベル君はひどいな。こんな扱いを受けたら、ソランさんは泣くよ。」このぐずぐず言っている男は井戸村涼子という。異世界から飛ばされた人……らしい。
一ヶ月前に、突然僕の前に現れた人だった。
そして二週間前に、なぜかソラン師匠様の姿になれるようになった……
「それでも師匠様の身体で抱きつくな!恥ずかしいだろう!」
「恥ずかしがらないでよ。これはただの充電よ充電……(だってそうしないと、身体が持たないからな。)」
「……何か言った?」
「いいえ。何でもなーい。」
変な奴……
「そんなことより、リョウコさん。僕の“ステータス”をチェックしてください!」
「ええーまた?」
「ええ!僕は確実に強くなっているのかが知りたいし……それに、リョウコさんができるのはそれだけだろう!」
「うっ……」
井戸村涼子は突然僕の前に現れたにしても、とても駄目な人だった。
魔物が倒せないし、体力もダメダメ。家事全般を手伝わせてみたが、ところが荒らされる一方だった。ソラン師匠様とは全然違って、リョウコは駄目な人間だった。
彼は荒野を通って、近い町に辿り着く実力がない。だからこの一ヶ月、ずっと僕と一緒に住んでいる。そして家も出ず、ずっとこの小屋でゴロゴロと。
もしソラン師匠様の言葉を借りてで言うと、井戸村涼子は無能の引きこもりである。
「わかったよ……」井戸村涼子は渋々と了承した。