瘴気と呼ばれてたものが、花粉だったって信じられるか?
俺はヒイ。勇者の血を引いている。ファジーワールドで生まれ育ち、18になった俺は、王国へ向かった。すれ違う人に声をかけつつ、家から出ている人が異様に少ないな…と思う。
どうも最近寝込んでる奴が多い。親父…ユーソ…も、目と鼻を真っ赤にして寝込んでる。ま、親父は花粉症を患っていて、この時期はいつも寝込んでいる。が、今年は異様に酷そうだ。
花粉症だけだったら良いが…。
王国に着き、城の中に入ると、兵士が俺を迎えに来てくれた。…弟だ。
「やぁにいざん。おうざまがおよびだよ。」
俺はロウ…弟…の後をついていく。俺も12になってから17になるまで、この城で訓練をしていた。
ロウも苦しそうにしながらも訓練をこなしている。これから授かる先祖勇者の力で、なんとか出来たら良いが…。
玉座に着いた。どうしても俺は、玉座にいる王様…ライ・トーク…が偉「そう」に見えてしまう。
俺がそれっぽく顔を伏せると、ライ王が口を開いた。
「よく来たな、勇者の血を次ぐものよ。」
正直、ライ王に名前で呼ばれたことは一度もない。母さんなど、勇者を産んだ女と呼んでいる。正直名前も呼ばないコウマンチキな王に敬意など示したくない。しかし…。
「ここ最近、謎の瘴気が漂ってる様だな。きっと魔王の仕業であろう。勇者の血を次ぐものよ、お前がこの世界の勇者として、魔王を倒し、世界を救うのだ!」
ライ王の言葉で、俺は先祖勇者の力を…本来のの勇者としての力を…手に入れた。どうも俺達のご先祖さまとライ王のご先祖さまとの仲はズブズブだったのだろう。18になっても素直に勇者の力を使えない、忠誠の誓いという名の面倒くさい呪いだ。
「はい、必ずや、世界を救ってみせます。」
(先祖め、めんどくせえ呪いかけやがって)
心の中で悪態をつきながら忠誠のポーズをとる。2代目勇者から続いてるんだろうな、これ。
城を出て、母さん…イツワ…に別れを告げ、魔王の城へ向かった。
…と言っても、転移魔法で一瞬だがな。
ま、俺達のご先祖さまの強さやらこの世界の神様の影響やら魔王の城には行ったことあるやらで、そうなった、みたいなものだ。
魔王の城の門にはは、不思議なことに誰もいなかった。色々思うところはあるが、閉まっていなかったので進むことにした。
俺は魔王の玉座まで最短ルートで進んだ。
「おーーい、なんか瘴気とか撒いてたら、ちょっと抑えといてくれねーかー!?」
魔王の玉座に着き、魔王に語ろうとするが、様子がおかしい。
「ぶぅえっぐし!!!!どおじてびいがごんなどぎにぐるんだよぉ!!」
どうしてひいがこんな時に来るんだ…って言ったのか?ただでさえ低くこもっている声が聞き取りづらい。まるで、親父と同じ状態じゃないか。
「おいおいオーマ、どうしたんだ?」
オーマとは、魔王の名前だ。魔王は初代から転生しまくってる形だけの魔王であり、人に危害を加えたり侵略したりするようなヤツじゃない。
ぶっちゃけロウと3人で一緒に遊ぶような仲だ。
「どおじたもこおじたも…どーぐがざいきんずんごいぎをうえで、ばほうでそだででるだろ?」
確かに木を植えて魔法で急成長させてると偉そうに言ってたな、とオーマに相づちを打つ。
「あのぎがらでるがふん!!!っぐしゅい!!かふん!花粉だ!」
花粉…でもオーマは花粉症になんてなってなかったよな?
「ぎをうえすぎで、がふんがたぐざんでて、ぞのぜいでばものぜんいんおれどおなじようになっだんだよ!!!!」
は???え???
この花粉、魔物やオーマに影響が出るほどなのか!?
「どーぐにだのんでぐれよぉ、だのぶよびい…がふんがでるぎをごれいじょううえだら、このぜがいほろびるよ!!」
ただただ驚いた。ライ王の無知さに…ただただ木さえ増やせばこの世界を良くしたと思いこんでいる無知さに…もう何もかも驚いた。
そして、呆れた。
魔王から魔剣を借り、今までの恨みを込めて思いっっっきり振った。
「あんっっっっっのおおばかおうがよぉおぉぉおぉぉぉおおぉぉおぉ!!!!」
城と森が焼き払われ、花粉という名の瘴気と無能という名の王様はキレイサッパリ無くなった。