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蛇姫様は慈悲深い

作者: たまる

衝動書きしたものなので、ふわっとした設定になってます。ごめんなさい(´;ω;`)


※※※※※


私の住む村では、蛇を祀っている。かつて、嵐が村を襲った時に真っ白な大蛇が現れ、村を救ったらしい。その大蛇に村人達は感謝し、村のはずれにある洞窟に御堂を作って祀った。大蛇は村を救った後、天に昇って帰っていってしまったので、中身は空っぽなのだが…

この村の人達が、蛇を祀り始めて200年が過ぎた頃。また村に、真っ白な大蛇が現れた。実際の大蛇を見た事がなく、不信感を抱いていた若者たちの中にはその姿を見て気絶したものも居たらしい。村人達はその大蛇をかつて村を救った大蛇だと思い、沢山の物を貢ぎ、大蛇の願いはなんでも叶えた。ある日、大蛇は『人間の女が欲しい』と言った。村人達は村一番の美女を捧げ、そして、美女は大蛇の子を産んだ。子が産まれると、大蛇と美女は忽然と姿を消した。今はその代わり、大蛇と美女の間に産まれた子が祀られている。

さて、ここからは私の話をしよう。私は美女と大蛇の間に生まれた者である。村人達は私の事を『蛇姫様』と呼び、祀っている。貢ぎ物の中に、金の装飾が施された鏡というもので自分の姿を見たことがあっる。真っ白な髪にルビーのような真っ赤な瞳に。ここまでは人間っぽいのだが、頬やふくらはぎから生えた白く輝く鱗や、二股に割れた舌、骨盤の下から生える長い尻尾は、人間では無かった。そんな微妙な存在の私はある日、貢ぎ物を捧げに来た村人に、我慢が出来ずにこう言った。


「腹が空いた」


すると村人は青ざめながら、「す、すぐ用意致します!!!」と言って洞窟から走り去って行った。そんなに急いで用意しなくてもいいのに、と思いつつ、運ばれてくる食事はどんなものなのだろうか、と期待しながら待つ。生まれて60年、ほとんど食事を捧げられたことがなく、常にお腹が空いた状態だった。まぁ、私は不死の存在なので食べなくても大丈夫なのだが、お腹が空くのは辛い。貢ぎ物の殆どは装飾品や酒ばかりだったのだ。


「お待たせして申し訳ございません!蛇姫様、どうぞこちらをお召し上がりください」


結局その日は食事が来ず、私は不貞腐れて眠ってししまった。

次の日、目を覚ますと、簀巻きにされた男が運ばれてきた。これはどうゆうことなのだろうかと、困惑する私に、昨日貢ぎ物を捧げに来ていた者が、簀巻きの男を食べるように勧めてきたので私はさらに困惑した。


「あぁ、食べる所を見られるのは嫌ですよね!はい、私は退散致します!!」


そして洞窟から去っていった。


「「・・・・・・・」」


簀巻きの男と私の間に沈黙が流れる。簀巻きの男は冷や汗をかきながら、怯えた様子で私を見ていた。恐らく、この男を運んできた者は私が人間を食べると思ったのだろう。確かに、父のように大蛇であれば顎を外し、人間など丸呑みできるだろうが…私の体は人間寄りで、顎を外しても人間の頭蓋骨ですら入らない。この男には帰ってもらわなければ…


「なぁ…」


私に話しかけると、男はビクッッ!!!!と跳ねた。


「すまない。私は人間を食べない。どうやら勘違いをさせてしまったようだ。帰ってくれていい」


私は御堂から出て男に近づいた。


「あ、あの…」


私の声より低く、響く声が洞窟に広がる。


「動けないんです。その…きつく縛られてて…」

「む、そうなのか」


確かに簀巻きにされている状態では、手足は使えない。人間は私と違って力が弱いのを思い出し、私は頬から一枚、鱗を取った。そして鱗を男を縛る縄に軽く滑らせる。すると、それだけで縄は簡単に切れた。


「これで大丈夫か?」


縄を全て切ってやった。


「ありがとうございます。あの、頬が…」


男は立ち上がり、私に礼を言うと、私の頬に触れた。鱗越しから伝わる温かさにゾワリッとしたが至って平然を装う。


「んあ?これくらい大したことじゃないしすぐ治る」


鱗は皮膚から生えていて、それを引っ張り取ってしまったので私の頬から血が出ていた。父譲りの不死の力のおかげでこんなものはすぐに治ってしまうので心配ないのだが、男は泣きそうな顔をしながら私の頬を摩っている。


「気にするなと言っている。早く帰れ」


男の手を払う。初めて人間に触れられ、気恥ずかしかった。手を払われた男は、困ったように眉を下げた。


「えっと、あの…ここって何処ですか?」

「ん?何故分からないのだ?この村の者では無いのか?」


私の問いに、男は違うと言った。男は馬車に乗っているところを襲われて連れてこられたのでここが何処なのかわかないと言う。


「ば、しゃ?馬車とはなんだ?」

「え、知らないんですか?」


馬車を知らない私に首を傾げて男は聞いた。私は知識を殆ど持たない。この洞窟から出たこともないので当然のことである。人間の言葉は貢ぎ物を捧げに来ていた者達の会話を聞き続け覚えたものだ。と男に言うと理解してくれた。


「馬車というのは…え~と馬が引っ張って運ぶ車で」

「馬?車???それはなんだ?引っ張るということは動くものなのか!?」


初めて聞く言葉に私は男に迫る。


「えっ…ええっと、その…馬という生き物が居まして…それがタイヤがついてる…え~と」

「んん!!タイヤとはなんだ!?タイヤとは!!そして馬とはどんな姿をしていのだ!?どれくらいの大きさだ??私より大きいのか!?小さいのか!?」

「えええええ!えっと、えっと…」


さらに男の口から新たな言葉が出て来た。私は興奮し、男にしばらく質問責めをした。


「ふむふむ、お前の知識は興味深い…長い間すまなかったなもう帰っていいぞ!」


色々知識を男から聞き出した。もっともっと聞きたいが、長い間引き止めるのも良くないだろうと思い質問をやめた。


「え、あぁ…僕、帰る場所がないんですよ」

「ふむ、何故だ?」


会ってからというもの、この男はずっと眉を下げ困った顔をしている。


「その、実は…」


男はゆっくりとここまで来るまでのことを語った。男には兄がいたのだが、ある日、兄が高い地位を持つ者に無礼を働いてしまったらしい。何をしたのかは男は知らなかった。男の兄はその罪を弟である元簀巻きの男に擦り付け、男は馬車に詰め込まれてしまった。そして、運ばれている最中にここの村人達に攫われたらしい。


「ふむ…半分理解した。大変だったな、お前は可哀想な奴だ」


分からない言葉が幾つか出てきたが、男が家族に裏切られ、可哀想な状況にあることは私にも理解出来た。私は、可哀想な男の頭を撫でてやった。

さて、どうしたものか、男は自分を蛇に食べ物として捧げた村には住みたくないと言うし、どうすべきなのか私は頭を悩ませ…そしていい考えを思いついた。


「私は蛇姫だ。お前の名はなんだ?」

「え、あと…僕はライゼット」


私は、ライゼットと名乗った男に手を差し出す。人間は友好の証に握手、というものをすると聞いたことがあるからだ。


「ライゼット、これからはお前はここで過ごせ、私はお前を食べない。約束する。だが、お前は私に捧げられた。お前は私の物だ。私のゆう事はなんでも聞くのだ。お前は私の話し相手になれ!」


我ながらいい考えだと鼻を鳴らす。これからはライゼットに沢山質問をして、会話をしよう。人間の暮らしや生き物…沢山聞きたいことがある。御堂の中は広く、2人で過ごして問題ないだろう。それと、ライゼットの食べ物は貢ぎ物で要求するとしよう。


「え、いいんですか?じゃ…じゃあ、よろしくお願いします!」


私の言ったことを理解したライゼットは、嬉しそうに笑った。


※※※※※


蛇姫 年齢60歳


白髪に真っ赤な瞳を持つ少女。蛇と人間の間に産まれた子。傲慢な喋り方に見えて中身と見た目は意外と幼い。


ライゼット 年齢18歳


黒髪に緑の瞳を持つ人間の青年。商人の息子なのだが、次男だからと親や兄に相手にされてこなかった。見た目は、整っている。


何故、村人達がライゼットを連れてきたか…というのは、蛇姫に捧げるならやはり整った顔立ちの者ではなくてはと考え、村には蛇姫に相応しい整ったものがいない!となり、たまたま近くを通った馬車を捕まえてみたら中にライゼット〔めちゃくちゃ顔いい〕が居たため、奪ってきたとの事…



蛇姫は居るだけで恩恵を与えています。蛇姫がいるおかげで村は栄えている為、貢ぎ物は絶えず捧げられています。










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