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91話:サバト

いつも読んで下さりありがとうございます。


今回から第四章のスタートです。


今回登場の魔女達、後書きにざっくりと名前をまとめました。


追々詳しく書く予定ですが、とりあえず参考までにされて下さい。

 南方諸島。


 大陸の南海域に位置する諸島群。


 長きに渡り、魔女達によって支配されてきた魔の海域である。


 世に僅か七人。


 にもかかわらず、東のポラリス正教会、北の魔王領と並び、三大勢力の一角に数えられる魔女達。


 その魔女達が、海域中央の孤島 "マギア・トゥーレ島" に集まっていた。


「数年ぶりの魔女集会(サバト)ですのに、相変わらず集まりが悪いですわね」


「いつも欠席の二人と……今回はベラトリックスも来てないのか」


 枯れ木の立ち並ぶ荒涼とした島の中心。魔法陣の描かれた石造りの舞台に並ぶ、背もたれの高い七脚の玉座。


 中央を向き、円形に配置された玉座には、四つの強大な魔力が腰掛けている。


「今回はベラトリックスの件で召集されたのだろう? なぜ当の本人が来ていない!」


 声を荒げ、キツイ目つきを更に尖らせる長身の女。


 軍服に身を包み、特徴的な青色の髪を外側にはねさせているその女こそ、七人の魔女の内の一人 "力の魔女" ヴァルンホルンである。


 苛立たし気に脚を鳴らし、息巻くヴァルンホルンへ向けて、対面の席から甘ったるい声が上がる。


「ヴァルンホルン、あなたも人が悪いわよぉ……まんまと体を奪われたのですものぉ、お恥ずかしくて顔も出せないでしょぉ? うふふぅ」


 声の主である、長い黒髪の隙間からほっそりとした切れ長の目を光らせる女。


 "千里の魔女" ミンタオが艶やかな笑い声を上げる。


「ミンタオ、ちょっと良いかしら? ワタクシ一応確認しておきたいのですけれど」


 笑みを浮かべるミンタオへ、隣席から上がる疑問の声。


 風に揺れる、ウェーブのかかったブロンドヘア。


 白磁の様に白く輝く肌。


 色鮮やかなドレスに身を包み、愛嬌のあるタレ目をやんわり細める三人目の魔女。


 "元素の魔女" エカテリーナが続けて口を開く。


「ベラトリックスの本体が奪われた、という情報は間違いありませんの?」


「それは間違いないわぁ。使い魔が確認してるしぃ、わたしぃも千里眼で見てたものぉ」


 エカテリーナの疑問に答えるミンタオ。その答えを聞き、顔をしかめるヴァルンホルン。


「見ていて手を出さなかったのか、お前の方がよほど人が悪いじゃないか」


「うふふぅ……」


 ミンタオの反応に更に顔をしかめながら、ヴァルンホルンは言葉を続ける。


「それで? ベラトリックス本人、というか精神体はどこへ消えたんだ?」


「わたしぃの千里眼ではぁ、西の地に向かったところまではぁ、確認できたわぁ。その先は視野の外だからぁ、分からないわねぇ」


「はっ、人間に遅れを取った挙句、本人は逃げ出したという訳か?」


 呆れた様に手を広げ、鼻で笑うヴァルンホルン。


「ですから彼女は、魔女階位(ウィッチ・オーダー)において最下位なのでしょう?」


 ヴァルンホルンと同様に嘲笑いを浮かべるエカテリーナは、煌びやかな扇子で口元を隠しながらミンタオへと問いかける。


「そんなことより、ベラトリックスの本体はどこへ運ばれたんですの?」


 エカテリーナからの質問を受け、たおやかな所作で空中に魔力を集めるミンタオ。集まった魔力の先をじっと見つめながら口を開く。


「使い魔からの情報によればぁ、本体は勇者の手によってぇ、東に運ばれてるわねぇ。ただぁ、どこに運ばれたかまではぁ、まだ調査中よぉ」


「ふんっ、人間ごときが我々魔女に手を出すなど、身の程を知らずなことだ」


「そうですわね、理由はどうあれワタクシ達魔女に手を出したらどうなるか、分からせて差し上げる必要がありますわ」


 立ち上る濃密な魔力。


 交じり合う三者の魔力によって歪む空間。


 漂う緊張感の中、場違いに素っ頓狂な声が上がる。


「あぅぁ!」


「……マリア、どうかしたのかしら?」


「あぅおぅ、まぁ?」


「……相変わらず、何を言っているのかさっぱり分からんな」


 大きな丸い瞳をキョロキョロと動かし、言葉にならない声を上げる、マリアと呼ばれた幼い少女。


 長く尖った獣耳をピョコピョコと動かし、愛らしい仕草を見せる彼女だが、れっきとした七人の魔女のうちの一人である。


「きっとぉ、戦闘はまだなのかってぇ、聞いてるのよぉ」


「あぃっ」


「なるほど、血気盛んなことですわね」


 マリア、エカテリーナ、ヴァルンホルン、ミンタオ。四人の魔力が混じり合い、より濃密な緊張感が場を支配する。


「それで、我々の今後の方針はどうする?」


「そうですわね、欠席の三人は放っておいて、ワタクシ達で決めて良いのではなくて?」


「ならぁ、もう結論はぁ、出てるじゃなぁい?」


「あぁーい」


 言葉と共に、視線を交差させる魔女達。


「ええ、人間や魔物が勝手に争うのは知ったことではありませんが、ワタクシ達魔女に手を出したのは見過ごせませんものね」


「議論の余地はない、魔女に手を出した者には報いを!」


「うふふぅ、久しぶりにぃ、大陸に渡ることになりそうねぇ」


「ぅあう!」


 思い思いに口を開きながら、玉座から立ち上がる四人の魔女。


「それでは、ベラトリックス本体の場所が分かり次第動きますわよ。ミンタオ、引き続き捜索をお願いしますわ」


「えぇ、すぐに探し出してぇ、お知らせするわぁ」


「血が滾るな、知らせが楽しみだ」


「あぃー」


 吹き荒れる魔力に、大気が火花を散らせる。


「それでは、次の魔女集会(サバト)はミンタオからの連絡後にしましょう」


 エカテリーナの言葉を最後に、一瞬にしてその場から姿を消す四人の魔女。


 暗雲立ち込める大陸の南側。


 魔女達は、静かに動き出す。

ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。


★ ★ ★ 以下、魔女達のまとめです ★ ★ ★


Ⅰ.????の魔女

  今後のお話で出てきます。


Ⅱ.????の魔女

  今後のお話で出てきます。


Ⅲ.????の魔女:マリア

  獣耳の幼い少女。

  言葉が話せず「あぅあ」等、曖昧な声しか上げられない。


Ⅳ.元素の魔女:エカテリーナ

  ウェーブのかかったブロンドヘアに、白磁の様な白い肌、タレ目が特徴の魔女。

  色鮮やかなドレスに煌びやかな扇子と、優雅な雰囲気を醸し出している。


Ⅴ.力の魔女:ヴァルンホルン

  軍服に身を包んだ長身の魔女。キツイ目つきに、外側にはねた青色の髪が特徴。

  怒りっぽく、きつい話し方をする。


Ⅵ.千里の魔女:ミンタオ

  長いストレートの黒髪に、ほっそりと切れ長の目元。甘ったるい話し方をする魔女。

  千里眼によって遠くの情報が把握できるらしい。


Ⅶ.反魂の魔女:ベラトリックス

  半透明の体でフワフワと浮いている、黄緑色の長いツインテールをした魔女。

  第三章で初登場。関西弁で話し、ノリツッコミをするなど調子が良い性格で、スピカに気に入られている。

 本体と精神体で分かれており、本体はとある洋館に安置されていたが、第四神託勇者エステルに発見されてしまった。

  勇者の手によって本体が奪われてしまった様だが……

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