61話:魔の集い
いつも読んで下さりありがとうございます。今回で初投稿から二ヶ月です。
そして今回から第三章のスタートです。
これからも頑張ります、引き続きよろしくお願いします。
なお、今回登場キャラクターが多いので、後書きにざっくりと名前をまとめました。
追々詳しく書く予定ですが、とりあえず参考までにされて下さい。
大陸北部。
凶悪なる魔物達が跋扈し、生き物を拒む厳しい環境に覆われた魔の大地である。
その大半は険しい山岳地帯と森林地帯に覆われており、たとえ魔物であっても生半可な強さでは決して生き抜くことは出来ない。
そして、北に進めばさらに過酷な豪雪地帯へと突入し、そこでは選ばれし強靭な魔物のみが生きていくことを許されている。
そんな過酷極まる地域。その北端に位置する山こそ、世界最大級である九千メートル峰にして、最も凶悪な魔物の住まう禍峰、"ヴァンナドゥルガ"である。
禍々しい妖気に覆われ、鋭く尖った岩石の密集したその姿は、まさに地獄の剣山を思わせる様相だ。
その中腹、ヴァンナドゥルガの妖気の中にありつつ、それすらも上回る凶悪な妖気を立ち昇らせる巨大な城がそびえ立っている。
その城こそ、魔物達の本拠地にして、魔物達の頭目である"モンスターロード"が集う城。
そして、そのモンスターロードを統べ、全ての魔物の頂点に立つ存在である、"魔王"の住まう居城。
"万魔城"である。
その尖塔。豪雪に見舞われながらも吹き抜けとなっている巨大なホールに、六体の凶影が立ち並んでいた。
「アナスタシオス。最近奴隷の数が少ないんだけど、どうなってんのさ?」
「あぁ、どうやら人間共が街に立て籠もり始めてな、おかげであの忌々しい城郭都市も守り固められて下手に手出しができん状態なのだよ」
二メートルを超える漆黒の巨体。
陽炎のごとく揺らめく漆黒の法衣に身を包み、錆びた宝冠を戴く巨大な影。
その顔、そして体には一切の"肉"がついておらず、禍々しい波紋の走る髑髏の姿をしている。
死を体現したかの様な姿。
死霊共を統べる者。アンデットロード"アナスタシオス"である。
「吾輩に問う前に、お主はもう少し自ら奴隷を集めることに力を注ぐべきだ、エリスカリスよ。さもなくば見る間に食料が尽きてゆくぞ」
骨ばったアナスタシオスの指で差され、不機嫌そうにそっぽを向く女。
背に一対の翼と、両腕から生え揃ったもう一対の翼。都合四枚にもおよぶ極彩色の美しい翼で体を覆うその女。
鮮やかな見た目に妖艶な顔立ち。扇情的な体つきでありながら、三メートルにも及ぼうかというその巨体からは威圧感しか感じることができない。
翼を広げれば倍以上にまで広がるであろう巨躯は、その女が紛れもなく魔物であると物語っている。
彼女こそ、ハーピィにして獣共を統べる者。ビーストロード"エリスカリス"だ。
「うるっさいわね。そもそも何で人間共は引き籠っちゃってるのさ? それに亜人はどうしたのよ? 人間が獲れないなら亜人を獲ってくれば良いじゃない」
「それがだな、どうやら亜人共は西に移動をしておる様なのだよ。最近ではとんと亜人達の姿を見かけなくなったからな」
「西に?」
「そうだ。城郭都市も亜人が次々と流出したことで労働力や戦力の不足が起きておる様でな、それで人間共が引き籠り始めたという訳だ。おかげで我がヴァン・デスティーユ砦も食料不足が起き始めておるわ」
「はんっ、城郭都市ねぇ……あそこの盟主はホントにビビりね!」
アナスタシオスの言葉を受け悪態をつくエリスカリス。そこへ、空気を震わせるような重低音がホールに響き渡る。
「アナスタシオスよ、人間共は捨て置いて構わぬ。それより西は今どうなっておる?」
低く響き渡る重厚な声色。ホールの中央で鎌首をもたげる巨大な竜、その竜から発せられた声にアナスタシオスが恭しく反応する。
「どうやらかの地を統べていた邪神に何か動きがあった様ですな。土地を覆っていた瘴気もその姿を消した様です。現時点ではこれ以上の情報は得られておらず……」
「あら、その話なら私も聞いたわよ。うちの獣ちゃん達が結構遊びに行ってるみたいなんだけど、どうやら亜人の村があるみたいね。それから異様に強い人間が一人いるらしいわ」
「エリスカリスよ、お主そういう報告はもう少し早く上げぬか」
エリスカリスの言葉を受け、苦言を呈するアナスタシオス。しかし、エリスカリスはどこ吹く風といった様子で話を続ける。
「それからつい最近のことだけど、正教会の連中が乗り込んでいったみたいね。で、凄いのはここからさ、なんと正教会の連中返り討ちに会っちゃったんだって! 一等級勇者に加えてあの死を拒む者もいたらしいのにさ」
「何? 死を拒む者までもが、だと?」
怪訝な声を上げるアナスタシオスに向かい、鋭い牙の生えそろった口を開く巨大な竜。
「アナスタシオスよ、実に興味深いと思わぬか? エリスカリスの報告が間違いではないとしたら、相応の力を持った人間と、大量の亜人が一ヶ所に集まっているということになる」
「確かにその通りですな。なるほど、考えが見えてきましたぞ」
竜の言葉に、カラカラと喉を鳴らすアナスタシオスは、髑髏を傾け首肯する。
「流石はアナスタシオスよ、俺様の意図を読むのは早いな」
「何百年の付き合いだと思っているのですかな? カカカッ」
「ちょっと、化け物同士でイチャついてないでさ、何考えてるのか説明しなさいよ!」
眉をひそめるエリスカリスの言葉に、フンッと鼻を鳴らし、竜がその口を開く。
「では、コントラカストラの征服については一時保留とする。先に西の地に出来た亜人の村とやらを襲撃するのだ。速やかに攻め落とし、集まっている亜人と件の人間を回収することを優先する」
竜の言葉に、静かに頷く五つの凶影。
「作戦指揮はアナスタシオス、貴様に一任する。ヴァン・デスティーユ砦の防衛と並行しつつ、最短で亜人共を獲りにいくのだ」
「承知いたしました。このアナスタシオス、見事その役目果たして見せましょう」
片膝をつき、深々と礼をするアナスタシオス。
「あーらら、大変な役割与えられちゃって、頑張ってね?」
「何を言っている? エリスカリスよ、もちろんお主にも手伝ってもらうぞ?」
「はあ!? ちょっと、なんで私なのさ?」
腕を組み余裕の姿勢を見せていたエリスカリスだったが、アナスタシオスの言葉に大きく声を張り上げる。
「当然であろう? 吾輩はヴァン・デスティーユ砦の責任者でもある故、砦を離れることはできぬ。それに、お主は配下の獣共から情報を得ているのであろう? であれば実働部隊としてはお主が適任ではないか」
「ちっ、分かったわよ、一つ貸しだからね」
苦い顔で舌打ちをしつつも了承するエリスカリス。その様子を見ていた竜は、まるで笑みを浮かべる様に、牙に覆われた口を大きく引きつらせる。
「アナスタシオスよ、捕らえた奴隷共はひとまずヴァン・デスティーユ砦に保管しておけ。どの程度の成果が上がるか、俺様が直々に見に行ってやろう」
「承知いたしました。ゲオルギオス様の仰せのままに……」
「グオオオオォォォォッ!!」
恭しく頭を下げ、敬服の意を表する五体のモンスターロード。
その中央で悠然と巨躯を起き上がらせ、空気を震わす雄叫びを上げる巨大な竜。
十メートルを超える巨体は、その全身が黄金に輝く鱗で覆われており、圧倒的な迫力を備えている。
剣山の様に鋭く並んだ牙は、見る者にその威力、凶悪性を一目で分からせる。
深淵のごとく漆黒にぎらつく相貌からは、邪悪な意思が溢れており。目の周りの鱗には、禍々しい黒い文様が入れ墨のごとく彫られている。
その竜こそ、全ての竜族の頂点。
竜王と呼ばれる最強の竜。
そして、全ての魔物の頂点に立つ存在。
魔王"ゲオルギオス"。
その凶悪な雄叫びをもって、魔の集いは幕を閉じるのだった。
ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。
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★ ★ ★ 以下、魔王とモンスターロードのまとめです ★ ★ ★
・ドラゴンロード(竜王 / 魔王):ゲオルギオス
黄金の鱗を持った巨大な竜。
体長十メートル以上、漆黒の瞳で目の周りに黒い文様が入っている。
世界最大九千メートル峰"禍峰ヴァンナドゥルガ"と"万魔城"の主
・デーモンロード:???
今後のお話で出てきます。
・アンデットロード:アナスタシオス
真っ黒の法衣に身を包んだ骸骨。
錆びた宝冠をかぶっている、身長二メートルと魔物の中では小さめ。
"城郭都市コントラカストラ"と対立する魔物の砦"ヴァン・デスティーユ砦"の責任者
・ゴーレムロード:???
今後のお話で出てきます。
・ビーストロード:エリスカリス
極彩色の翼をもつハーピィ。背中に一対、両腕に一対、計四枚の翼をもっている。
身長三メートル、翼を広げれば七メートル弱とかなりの巨体。
翼で隠しているが基本的にいつも全裸。
・スライムロード:???
今後のお話で出てきます。




