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57話:死の戦場 ~戦いの終わり~

長かった戦闘回も今回で一旦の終了です。


次回からは第二章のエピローグ的なお話です。


長々とグロテスクな回を続けてしまい申し訳ございませんでした。


引き続きどうぞよろしくお願いします。


(でも書いてる方はすごく楽しかったです……)

「我が…………神…………!!」


「《ええぇぇぇ!!?》」


 シャウラの言葉を聞き、揃って疑問の声を上げるスピカとトレミィ。様子を伺っていたジャンルーカとフェルナンド、そして獣人達も何事かと様子を伺っている。


「えっと……どういうこと?」


「あなた…………から…………我が神の…………力を…………感じた…………円卓の言っていた…………神託を受けた…………勇者…………あなたのこと…………」


「うぇっ!」


《ちょっと! どうして神託の事を知ってるのよ?》


 驚きに目を丸くするスピカ。トレミィもまたシャウラの言葉に疑いの色を強めていく。


「さっきの…………攻撃…………私の…………奥まで…………ぐちゅぐちゅに…………掻き回した…………あの攻撃…………あの時…………確かに…………我が神の…………力を…………感じた…………」


(うわぁ……何だかとてもエッチィなことをしてしまったみたい……)


《そうね……って、別にそんなことどうでも良いのよ! 大事なのはそこじゃないでしょう!!》


 押し黙っている様に見えて、暢気な会話を続けるスピカとトレミィ。恍惚とした表情を浮かべるシャウラを前にじっと思案する。


(神の力って何だろう? 神託の力のことだとは思うけど……)


《そうよね、あの魔法はスピカの魔法だから私とは関係ないはずだし、そもそも我が神って、私は邪神だから神違いじゃないかしら?》


 小首をかしげながら考え込むスピカとトレミィ。そこへ、シャウラが小さく口を開く。


「我が神…………邪神様の…………力を…………感じる…………」


「《邪神!?》」


 シャウラの言葉を聞き、再び揃って驚きの声を上げるスピカとトレミィ。


(どうしよう? トレミィ)


《分からないわ、一体何を言っているのか……》


 うーんと唸り考えるスピカだったが、唐突に面倒臭くなり大きくため息をつく。


「はぁ……あなたが何を言ってるのか全く分からないから、どういうことかちゃんと説明して!」


《ちょっと、そんな雑な感じじゃあ――》


「ええ…………分かった…………」


《ああ、分かっちゃうのね、まあ良いけど……》


 呆れるトレミィの事はつゆ知らず、口を開くシャウラ。



「私は…………神前…………シャウラ…………死を拒む者(ネクロマンサー)とも…………呼ばれている…………正教会の…………教会員で…………僧侶…………」


 間延びした独特の話し方で言葉を続けるシャウラ。


「正教会は…………正神クラウディオスを…………信仰している宗教…………でも私は…………子供のころから…………別の神を…………ずっと信仰していた…………それが…………邪神様…………」


 チラリとスピカに視線を向けるシャウラ。自分のことを言われたトレミィは、スピカの中でドキリと身を強張らせる。


「邪神様の…………逸話は…………とても魅力的で…………いつか会いたいと…………思ってた…………それで…………ずっと…………信仰を…………続けていたら…………いつの間にか…………神前…………なんて…………呼ばれる様に…………なっていた…………」


 そう話すシャウラの目はどこか遠くを見ている様である。


「邪神様に…………ずっと…………会いたかったけど…………邪神様の土地は…………不可侵の領域…………私でも…………立ち入る許可が…………下りなかった…………それが…………数ヶ月前に…………突然…………瘴気が…………消え去った…………」


 心配そうに様子を伺うジャンルーカを手で制しながら、黙って話を聞くスピカ。


「逃げ帰ってきた…………勇者がいて…………亜人の村が…………出来ていると…………報告が上がった…………それと…………正教会では…………誰かが邪神様の神託を…………授かったのではないかと…………推測した…………それで…………調査団が組まれた…………それと…………亜人の殲滅…………それが今回の…………私達の…………任務だった…………」


 戦場に散らばる焼死体に目を向けながら語り続けるシャウラ。


「でも…………私は…………任務なんて…………どうでも良かった…………ただ…………邪神様に会えれば…………それで良かった…………だから…………邪魔になった…………あいつらは…………全員殺した…………」


 一瞬怖気の走る酷薄な笑みを浮かべるが、すぐに無表情へと戻る。


「邪神様に…………会えれば…………他はどうでも…………良かった…………戦いに勝つとか…………負けるとか…………どうでも…………ただ会えれば…………」


 そっと自身の胸に手をやるシャウラ。指先が胸元をそっとさする。


「そして…………さっきの攻撃…………私が…………祈りをささげる時に…………感じる…………邪神様の気配と…………そっくりだった…………きっとあれが…………邪神様の…………お力の…………一端…………」


 顔を上げまっすぐにスピカを見つめるシャウラ。アルビノ本来の美しい容姿は、まるで天使の様な印象すら与える。


「あなたの中に…………邪神様を感じる…………ずっと…………信じてきて…………良かった…………我が敬愛する…………神…………邪神様…………」


 先程までの邪悪な印象とは打って変わり、うっとりする様な、恍惚とした様な、そんな柔らかな微笑みを浮かべながら、両手をあわせ祈りを捧げるシャウラ。


 スピカの頬に手を伸ばすと、そのまま抱きしめる様にスピカの胸に顔を埋める。


「あぁ…………邪神様の…………存在を…………感じる…………」


 幸せそうに目を閉じるシャウラ。そんなシャウラの頭を胸に乗せたまま、冷や汗を流し続けるスピカ。


 ドキドキと心臓を鳴らし、引きつった表情で視線をさ迷わせている。


(トレミィの事がバレてる!? どうしようーー!!)


《おっ、落ち着くのよスピカ、とりあえずこいつは私の信者だったってことね! つまり今はもう敵ではないってことよ! つまりそういうことよ! 何が言いたいかって言うと、こんなに私の事を信仰してくれてる信者がいたってことで、つまり私の信者が……ふへへっ》


(トレミィこそ落ち着いてよ! 浮かれてないでどうすれば良いか考えてよ!)


《ぶぅひゅっ、浮かれてにゃいわよ! ちゃんと考ええれらてるわよ!》


(ほらもう、言葉がおかしくなってるよ!)


 シャウラに抱き着かれ固まったまま、頭の中では目まぐるしく思考が飛び交うスピカ。そこへ、恐る恐るといった様子のジャンルーカとフェルナンドが駆け付ける。


「スピカ殿、これは一体どうなっているのだ?」


「説明してくれ、その女はどうしたんだ?」


「あぁ、えーとね……うーんと……」


 頬をピクピクとさせ言葉を探すスピカ。


(どうしよう!? なんて説明したらいいか全然分からない、トレミィの事は言わない様にしたいし……)


《ちょちょちょっと待って、今考えるからっ、えーっと……うぇー……ぅむー……ぬぁー……ダメだわ! 何を言っていいか思いつかないわ!!》


(自信満々に言わないでよ!)


「スピカ殿?」


 ジャンルーカの声にビクリと肩を震わせるスピカ。テンパった表情で口を開く。


「えっと……つまり……つまり! 今日からこの人も私達の仲間……っていうことかな?」


 しんっ、と静寂が場を支配する。


「「「「「はああぁぁぁ!!!!??」」」」


 一泊開け、ジャンルーカとフェルナンド、そして周囲で話を聞いていた獣人達の叫び声がこだまする。


 正教会からの刺客である勇者達、そして神前シャウラとの壮絶な戦い。


 凄惨を極めた戦いは、思いもよらぬ形でひとまずの終わりを見せるのだった。

ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。


また、ブックマークやpt評価、感想も喜んでお受けしております。


執筆の励みとさせていただきますので、どうぞ応援よろしくお願いします。

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