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49話:正教会からの刺客 ~激突~

「アクション〔文芸〕」の部門で日刊ランキング入りしておりました。


読んで下さっている皆様、応援して下さっている皆様、いつもありがとうございます。


皆様のおかげで続けてこられて次回で50話です、これからも頑張ります。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオォォォォ!!!!


 轟音を上げ崩れていく岸壁。リゲルの錬金術によって生み出された土砂は、次々と調査団を飲み込んでいく。


「なっ」


「何だコレ!?」


 その先頭、先行していたことで土砂の範囲から抜け出していたジェルミーナとベリンダは、あまりの光景に思わず立ち止まり絶句していた。


 しかし、すぐに我に返ったベリンダは、鋭い眼光をジェルミーナに向ける。


「オマエが……オマエ達の仕業か! アタイ達を嵌めたな!?」


「っ!!」


 ベリンダの怒気に気圧されるジェルミーナ。じりじりと後ずさるジェルミーナにベリンダが飛び掛かる。


「許さないっ、死ね!!」


 一瞬のうちに間を詰めるベリンダ。爆裂術の籠った拳を振り上げると、ジェルミーナが反応する間も与えずその拳を振り下ろす。


「ガロロオォ!!」


「「!!?」」


 ベリンダの拳がジェルミーナを打ち砕かんとするまさにその時。茂みから巨大な黒い影が飛び出してくる。


「なっ!? 何だぁっ ブぐぅっっ!??」


 ジェルミーナを救うべく飛び出してきたプルートは、勢いのまま光の粒子をまとわせた前足でベリンダを弾き飛ばす。圧倒的な膂力の前になす術もなく吹き飛ばされたベリンダは、そのままグチャリと嫌な音を立て岸壁に激突し動かなくなる。


「プルート様、ありがとうございます!」


「ガルウゥっ!」


 自慢げにどやぁ? と顔を上げるプルート。大役を果たしきったジェルミーナは、その背に飛び乗ると戦場を後にするのだった。



★ ★ ★ ★ ★ ★



「何だ!?」


「くそっ」


「逃げられない!!」


 土砂の直撃を受けた調査団は、抵抗する間もなく土砂に流され次々と崖下へ消えていく。中には必死で回避行動を取る者もいるが、両側を崖に囲まれ逃げる場所のない一本道。多少抵抗はするものの、やがては崖の下へと姿を消していく。


「すごい、成功だよリゲル、こんなに作戦通りにいくなんて!」


《本当に計画通りじゃない、上手くいきすぎて驚きだわ……》


 感嘆の声を上げるスピカとトレミィ、しかしリゲルは険しい表情で戦場を見つめている。


「まだ作戦通りにいくかは分からねえぞ、それとジェルミーナだ、あいつは無事か?」


「ジェルミなら大丈夫、プルートがちゃんと退避させたから」


「そうか、なら良いが……」


 やや安堵した様子で再び戦況に目をやるリゲル。そんなリゲルをニヤニヤとした笑みで見つめるスピカ。


「あ? 何だよ?」


「フフッ、ジェルミの事が心配なんだね?」


《どれだけツンデレなのよ、いい加減もうみんなの事が好きですで良いじゃない》


「うん、皆の事が好き、で良いのにねー」


「あぁ? うるせえぞおい!」


 キッと目をとがらせ抗議の声を上げるリゲル。言われるスピカはヘラヘラとした様子だが、一瞬のうちにその雰囲気が険しいものへと変わる。


 バキバキバキッッ!!


 突如として響き渡る激しい氷結音。直後、土砂の中から幾本もの氷柱が立ち上る。周囲の土砂を凍らせながら次々と立ち昇る氷柱、その中心から槍を構えた褐色の男が姿を現す。


「まさか、亜人ごときにしてやられるとはな」


 崖の上から顔を覗かせるスピカとリゲル、その二人を睨みつけながら小さく呟くアレクシス。姿を隠す必要もなくなったスピカ達も、立ち上がり正面からアレクシスを見据える。


「あいつが一番強いのかな?」


「そうだろうな、あの氷魔法尋常じゃねえぞ、まともに戦える相手じゃ――」


「調子に乗るのもそこまでです!!」


 リゲルの言葉を遮る様に、甲高い声と共に降り注ぐ矢。風をまとったその矢は周囲の崖をえぐりながらすさまじい速度でスピカとリゲルに迫る。崖が崩れ始めた直後、風魔法により高く飛び上がり退避したクラーラ、彼女の放った旋風の矢である。


 一直線に標的に迫る旋風の矢。しかし、突如として真横から吹きすさぶ強風にその軌道が歪められる。


「何!?」


「貴様の相手は私達だ」


 強風の吹いた方へと忌々し気に視線を向けるクラーラ。その視線の先、ナイフを構えたジャンルーカと鋭い目つきのフェルナンドがクラーラと対峙する。


「亜人ごときが、あまり調子に乗らないことです!」


「その亜人ごときに自慢の攻撃を反らされた気分はどうだ? お嬢ちゃん」


「おじょっ!? 貴様!!!」


 顔を赤らめ目を吊り上げるクラーラ。挑発するフェルナンドは死角になる位置からスピカに合図を送ると、クラーラに聞こえない様小さく口を開く。


「ジャンルーカ、あいつは俺達で引き付けるぞ」


「分かっている、スピカ達は作戦の継続だな」


 小さく頷き合う二人。ジャンルーカとフェルナンド、そしてクラーラの戦いが幕を開けるのだった。


 一方、運良く崖下に流されなかった調査団の面々は必死で土砂から這い出そうとしていた。しかし、その隙を狙っていたかの様に次々と獣人達が現れると、一人一人丁寧にその息の根を止めて回る。


 土砂による戦力の無効化、それにより抵抗できなくなった人間達を確実に仕留めていく。リゲルの作戦が見事にハマった結果、前夜から付近で待機していた獣人達は難なく調査団員達を仕留めて回ることができているのだ。


「よし、作戦通りだ、次々行くぞお前達!」


「ああ! 次はあいつだ」


 倒れる調査団に向かい駆けていく狐型の獣人。間もなく標的に到達しようかというその時、底冷えするような殺気と共に、冷たい声が響き渡る。


「そこまでだ……!」


 パキイィィンッッ!!


 一瞬の静寂。前傾姿勢で跳躍の構えを見せていた狐型の獣人は、その体勢のまま全身を凍りつかせ一瞬のうちに命を奪われていた。


「なっ、いったい何が!?」


「お前たちも、調子に乗るのもそこまでだ」


 ビキビキビキイィィッ!!


 戦場を駆け抜ける強烈な冷気。近くにいた獣人達は抵抗する間もなく氷漬けとなっていく。驚愕に目を見開く獣人達だが、さらに驚愕の事態を目の当たりにすることになる。


「アレクシスさんっ、待ってくださっ――」


「俺はっ、俺はまだぃ――」


 冷気が駆け抜ける戦場。必然的に調査団側の人間もその場にいたが、アレクシスの放った冷気は彼等調査団をも問答無用で氷漬けにしてしまったのだ。


「仲間……同士で……」


 絶句する獣人達に、槍を構えたアレクシスがゆっくりと近付いていく。強大な殺気と冷気を受け、金縛りにあったかの様に動けない獣人達、そこへ良く通る甲高い声が響き渡る。


「プルート! 行け!!」


「ガルアウゥッ!!」


 スピカの掛け声と同時に斜面を滑り降りながら吠え声を上げるプルート。下降の勢いを利用し一気に飛び上がったプルートは、槍を構え迎撃態勢をとるアレクシスに全体重を乗せた一撃を仕掛ける。


「くぅっ!?」


 想定外の威力を受け、横っ飛びに吹き飛ばされるアレクシス。しかし、空中で上手くバランスを取ると、何事もなかったかの様に着地し再び槍を構える。


「こいつは、ただの魔物ではないな……」


「ガルルゥゥ……」


 強烈な殺気を飛ばし合いながら睨み合う両者。そこへ、やや遅れてスピカとリゲルも合流する。


「よし、プルート、あいつの相手は任せた、無茶はしちゃダメだからね?」


「ガルゥ!」


「スピカ、俺たちは作戦の第二段階だ、まだまだ気は抜けねえぞ」


「うん、分かってる」


 ポンッとプルートの背を叩くと走り去っていくスピカとリゲル。その背を見ながら一人思案するアレクシス。


「あの女は人間か……? ということはやはり、この魔物が報告にあったガルムで間違いないのか? 報告だとあの女が神託を受けている可能性があるとのことだったが……」


「ガルゥウアウ!!」


「ちっ、まずはこいつだな」


 ブツブツと呟いていたアレクシスだったが、プルートの吠え声に意識を集中させる。槍を構えるアレクシスと後ろ足に力を籠めるプルート。一瞬の静寂の後、示し合わせたかの様に駆け出していく。


 それぞれの戦いが幕を開ける。

ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。


また、ブックマークやpt評価、感想も喜んで受け付けております。


執筆の励みとさせていただきますので、どうぞ応援よろしくお願いします。

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