表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/94

37話:錬金術師と素材探索 ~VSゴーレム~

※2019/10/13 表記方法を修正しました。

《ゴーレムって……珍しい上に危険な魔物なのに、なんでこんなところに!?》


(そうなの?)


《ええ、繁殖をしないから数はあまり多くないのよ、でもその代わり一体一体がとても強力な魔物なのよ》


(本当に何でこんなところに……)


「スピカ! 呆けてる場合か!」


「ゴオオオオォォォォッ!!!!」


 轟く叫び声を聞き、意識をゴーレムに向けるスピカ。すると、先ほどまでじっとしていたゴーレムが、ゆっくりと動き出すところだった。


 夜の光に照らされながら、巨大な腕を振り上げるゴーレム。うつろな目で二人を見据えたかと思うと、窪地の斜面を転がる様に勢いよく迫って来る。


「リゲル、下がってて!」


 素早い動きでリゲルの前に立つスピカ。腰を捻る様に剣を引き抜くと、その刀身に光を纏わせながら、一気に振り抜く。


 目にも止まらぬ速度で振り抜かれたスピカの剣。その軌跡をなぞる様にして、光の刃が宙を舞う。勇者クライヴ達との戦闘で見せた光の斬撃だ。


 一直線にゴーレムを目掛け飛んでいく光の刃。斜面を下るゴーレムは、その勢いが仇となり、躱すことも出来ずに正面からぶつかる。しかし――


バチイィッ!!


「ゴッ!」


《嘘!?》


「うわぁ、硬い!」


 身をかがめ、体当たりの様な姿勢で光の刃に衝突すると、あっけなく光の刃を弾き飛ばしてしまうゴーレム。岩石質の表面には傷一つない。


「まだ来るぞ!」


 勢いに乗ってスピカ達の眼前まで迫るゴーレム。ズシンッと重量感のある音を響かせ、体制を整えると、巨大な腕を振り上げる。


「ゴオッ!!」


 地面をえぐる様にスイングされた巨腕。圧倒的な破壊力の籠ったその拳は、岩山の表面を軽々とえぐり取り、削り取られた岩石は、散弾銃の様にスピカ達を襲う。


《危ない!》


「リゲル、そこから動かないで!」


 リゲルを守る様に立ち塞がるスピカ。連続で回し蹴りを放ち、飛んでくる岩石を蹴りの風圧で吹き飛ばす。


「つぅっ、ちょっときつい……かもっ」


 回転する様に蹴りを放ち、岩石を蹴り飛ばしていたスピカだったが、絶え間なく襲い来る岩石の物量に押されて、リゲルを巻き込みながら洞窟の奥まで転がり落ちてしまう。


「痛ってぇ! おい、ちゃんと守れよ!」


「うん、ごめん!」


《スピカっ、まずいわ!》


 暗がりの中声を上げるトレミィ。その声にハッとして自分の体を確認するスピカ。その体からは、先ほどまで溢れていた光の粒子が出ていなかった。星空の下から洞窟内に押し戻され、星の力が途切れてしまったのだ。


「しまった、入り口は……」


 入り口の方へ目を向けるスピカ。しかし、その出入り口を塞ぐ様に、ゴーレムが立ち塞がる。


「あぁぁっ、リゲルどうしよう? 外じゃないとあんなの歯が立たないよ!?」


「あぁ!? 肝心な時に使えねぇ!!」


《きゅっ、来るわよ来るわ! 早く何とかして!!》


 素っ頓狂なトレミィの声で、再び洞窟の入り口に視線を向ける。すると、ゆっくりと洞窟を下って来るゴーレムの姿が。


「どどどっ、どうしようリゲル?」


《ヤバイヤバイヤバイじゃない!!》


「ああもう! 俺が何とかするから、防御は任せたぞ!」


 イライラとした声でそう言うと、片手を地面にあてるリゲル。うっすらとコートを光らせながら、何かに集中する様に目をつぶる。


「なるほど……単純な岩石だな、鉱物も混じってるみてえだから正確には鉱石か……これなら問題なくいけるな……」


 小さく呟いたかと思うと、狙いを定める様に鋭い視線を前方に向ける。そのまま視線は動かさず声だけでスピカに指示を伝える。


「三秒後にあいつの動きを止める、その隙に一気に走り抜けろ! 外に出てしまえばあいつに勝てるんだろ?」


「もちろん、分かった!」


《動きを止めるって、そんな簡単に……》


「いち……にの……」


 静かにカウントを告げるリゲル、そして。


「さん! 今だ!!」


 合図と同時にリゲルのコートが激しく明滅する。細かな刺繍の上を目まぐるしく光が駆け巡り、様々な模様を描き出す。直後、リゲルの手を伝い、見えない何かが地面を走り抜けた。


ボゴォッ!!


「ゴッ……ゴゴオ!?」


 ゴーレムが左足を着いた瞬間、その足が勢いよく地面を踏み抜く。膝の上辺りまですっぽりと地面に埋まってしまい、突然の事態に腕を振り回し、暴れ狂うゴーレム。


「凄い! 何これ!?」


「喋ってないで走れ!」


 錬金術により、洞窟内の組成を分析したリゲルは、ゴーレムの足元を狙い性質と状態変化の錬金術を発動したのだ。硬い岩盤を脆くし、液状に変化させた上に水硬性を持たせた。つまり、セメント状の落とし穴を仕掛けたのである。


 宣言通り見事ゴーレムの動きを封じたリゲル。その隙をついて一気に駆け抜ける二人。暴れるゴーレムの腕が二人に迫るが、闇雲に振り回されただけの攻撃は簡単に躱してしまう。


「外だ!」


《やったわ!》


 壁を駆ける様にしながら外に飛び出したスピカ。夜空の下で星の力を取り戻すと、全身から光の粒子を放つ。


「力が戻った! リゲルは……」


 剣を引き抜きながら振り返るスピカ、その目が驚きに見開かれる。


「リゲル!?」


 スピカの視線の先、リゲルはゴーレムの間近で足を止めて、何かを抱えていたのだ。


「リゲル! 何やってるの!!」


「くそっ」


 悪態をつくリゲルが大事そうに抱えているもの。それは、先程リュックにしまったはずの、採取した素材を入れた袋だった。無理やりリュックに押し込んだため、ゴーレムの横を通り過ぎる際に零れ落ちたのだろう。


「リゲルッ、早く逃げて!」


《あのバカ! あんなのほっといて早く逃げなさいよ!!》


「捨てていけるかよっ」


 素早く袋を拾うと、再び走り出すリゲル。しかし、その背後からゴーレムの巨腕が迫る。洞窟の壁面を削りながら、恐るべき速度で振り払われる巨大な拳。


《まずいわ!》


「後ろ!」


 スピカの声に振り向くリゲル。しかし、眼前に迫る巨大な拳は、もはや躱すことも出来ない距離である。


「ちくしょうっ」


 かばう様に腕を交差させる。その腕ごと叩き潰すべく、迫る巨大な拳。


「リゲルー!!」


 声を張り上げながら、とっさに手を伸ばすスピカ。


 次の瞬間、スピカの手から眩い光がほとばしった。

ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。


また、ブックマークやpt評価、感想も是非によろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ