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23話:襲撃者との戦い ~勇者達の力~

※2019/10/18 タイトルと表記方法を修正しました。


いつも読んで下さりありがとうございます。


今回登場人物が多いので、後書きに勇者達の名前や特徴をまとめました。読んでいて誰が誰だか分からなくなってしまわれた方はすみません、ご参考にされて下さい。


なるべく分かる様に書いたつもりですが、登場人物が増えると分かりやすく書くのが難しいですね。

「来たぞ!」


 ジャンルーカの声が響き渡る。亜人達の見据える先では、九人の人間がこちらの様子を伺う様に立っている。


「クライヴさんの話を聞いた時は正直半信半疑でしたが、本当に亜人共が村を作ってるとは」


 最初に口を開いたのは、短い黒髪を無造作に流した男だ。切れ長の目で亜人達を見るその男は、腰に差した二本の剣に手を置きながらクライブの方を向く。


「言った通りだったろうセドリック。あの数……アランの報告よりも多い様だ。お前達にも声を掛けて正解だったな」


「村の奥にはもっと亜人達がいるかもしれません。うじゃうじゃと増えて虫唾が走りますが、俺達とクライヴさんのパーティなら一匹残らず粛清出来ますね」


 セドリックと呼ばれたその勇者はクライヴと言葉を交わすと、後ろに控えていた仲間たちへ視線を向ける。


「シェリー、ジェローム、分かっていると思うが油断はするなよ。イアンは逃げ出す亜人がいないか監視だ」


「ちっ、俺は不参加かよ。まあ良いけどさ」


「良いじゃないの、あんたはスカウトなんだから。戦闘は私達に任せておきなさいって」


 ふてくされたように文句を言う、短い金髪の小柄な男イアン。そのイアンを宥めるのは、シェリーと呼ばれた長い黒髪に褐色の肌が印象的な女だ。


「その通り、亜人共は皆殺し、逃げる奴イアンに任せる」


 口数少なく話すジェロームは、細身で長身、灰色の髪に色白の肌が不健康そうな印象を与える男だ。


 勇者クライヴとそのパーティ。そして、勇者セドリックとそのパーティ。計八人が隙のない陣形を取る。その後ろ、様子を伺うように顔を覗かせる勇者アランにクライヴが声を掛ける。


「アラン、お前はその荷物を持って後ろで見ていろ。邪魔だから手出しするなよ」


 クライヴの指示に小さく頷くアラン。荷物持ち、兼案内役として連れて来られたアランは、おとなしく後ろに下がる。


 その様子を注意深く観察していたフェルナンドは、冷や汗を垂らしながら勇者達に見えない様一歩下がり、ジャンルーカの陰に隠れると口を開く。


「ジャンルーカ、もしもの時はお前だけでも撤退しろ……」


「どういうことだ……?」


「金髪の男、あいつは二等級勇者だ。黒髪の方は三等級勇者。どちらもコントラカストラでは有名な勇者だ……」


「二等級っ……」


 フェルナンドの言葉に驚きの表情を浮かべるジャンルーカ。フェルナンドは視線だけでコリーとイアンを指しながら続ける。


「あの男二人は確か僧侶と斥候だ、戦闘には参加はしないだろう。だが、他の六人だけでもこちらの戦力を大きく上回っているはずだ」


「……それほどのものなのか……」


「勇者二人は俺とスピカ、プルートで何とか抑える。だがもし俺達が倒さる様なら、妹や隠れている住人を逃がす役目が必要だ」


「しかしっ……」


 躊躇うジャンルーカ。だが、フェルナンドは不敵に笑みを浮かべる。


「そんな顔をするな。言うまでもないが、負けるつもりなど欠片もない」


 フェルナンドの強気な様子に落ち着きを取り戻すジャンルーカ。深呼吸をすると、大きく声を張り上げる。


「人間共、ここは私たちの村だ! 何の用で来たのか答えてもらおう!」


 ジャンルーカの言葉を聞き、クライヴもまた一歩前へ出ると声を張り上げる。


「俺の名は勇者クライヴ! 教会の名において、この村を滅ぼしに来た!」


「なっ……なぜ私達が滅ぼされなければならない!?」


 抗議の声を上げるジャンルーカ。しかし、クライヴは鼻で笑うと言葉を続ける。


「フンッ、貴様らはここが邪神の土地だと知らないのか? このような場所に村を作るなど、良からぬことを企てているに違いないだろう。そもそも貴様ら亜人は異教徒だ、粛清されて当然だと理解しろ」


「なっ……に……」


 クライヴの言葉に歯を食いしばるジャンルーカ。その後ろで関心無さ気に状況を観察するスピカ。


(うーん……あいつらの目的とかどうでも良いんだけどな……それにしても異教徒か……ある意味当たってるね)


《そう言われると確かに……って! のんきなこと言ってる場合じゃないわよ! あいつらこの村を滅ぼしに来たのよ! 私の村をよ! 許せないわ!!》


 怒りの声を上げるトレミィに、スピカが冷静な声で答える。


(うん、もちろん戦うけど……でも勝てなかったらゴメンね?)


《あら? 珍しいわね、スピカがそんなこと言うなんて》


(だってあいつら、私達とは比較にならないくらい強いよ。一目で分かるくらいに強い。何とか戦ってみるけど、勝てない可能性の方が高いかも)


《そんなっ……それじゃあどうするのよ……スピカだけでも逃げるとか……》


(うん、でもこの村はトレミィの村だもん。住人は皆トレミィの信者だもん。だから頑張って守るよ!)


《スピカ……うぅ……ありがとう……でも無理はしちゃだめよ》


 スピカの言葉に震える声で返すトレミィ。一方のジャンルーカはナイフを構えながら勇者達を睨みつける。


「ここは私達の村だ! 私達の手で守る! お前達の好きにはさせない!!」


「おぉ!!」と亜人達から一斉に声が上がる。対する勇者達も各々に武器を取り戦闘体制を取る。


 緊張感が支配する中、ジャンルーカとクライヴが声を上げる。


「行くぞ!!」


「かかれ!!」


 二人の声を合図に、亜人と人間の戦いが始まる。



★ ★ ★ ★ ★ ★



 ジャンルーカの放つ風魔法とリンジーの放つ火魔法が激突する。横では同じ様に風魔法を放つエルフの魔法使い。対するは同じく風魔法を操るジェロームである。


 次々とぶつかり合う魔法。しかし、リンジーとジェロームの放つ魔法は、エルフ達の魔法を圧倒的に凌駕していた。相殺しきれなかった魔法の余波で徐々に追い詰められていくエルフ達。必死に魔法を放つジャンルーカは、厳しい戦況に顔を歪ませていた。


 獣人達と戦っているのは接近戦を得意とするヴィンスとシェリーだ。数では勝る獣人達だが、こちらも時間が経つごとに獣人達が追い詰められていた。巨大な戦斧を軽々と振り回す戦士ヴィンスは、大柄な見た目からは想像もつかない俊敏な動きで、次々と獣人達を吹き飛ばしている。


 一方のシェリーは徒手空拳での大立ち回りを見せていた。武闘家であるシェリーは、特殊な技法により魔導力を身体に直接流し、身体能力を強化しているのである。強化された肉体は、獣人達のスピードを軽々と上回り、筋肉質な脚から繰り出される強烈な蹴りは、獣人達を次々と戦闘不能に追い込んでいた。


 そしてクライヴとセドリック。二人の勇者と相対するのはスピカとフェルナンド、そしてプルートである。


 プルートと一対一の戦いを繰り広げているのは、二本の剣を巧みに操る勇者セドリックだ。その鋭い斬撃は、プルートの強靭な毛をも切り裂いてしまう。しかし、本来であればプルートも三等級勇者に匹敵する強力な魔物である。素早い動きと圧倒的な膂力で、セドリックを相手に優勢な戦いを見せていた。


「ちっ、ガルムというのは思ったより厄介ですね!」


「ガルガルルウゥッ!!」


 激しい戦いを繰り広げるプルートとセドリック。一方のスピカとフェルナンド、そしてクライヴは一進一退の攻防を見せていた。


「くっ、流石は二等級か!」


「二人掛でもっ、隙が出来ないっ」


 交互に攻撃を仕掛けるスピカとフェルナンド。しかし、クライヴは無駄のない動きで全ての攻撃をいなしている。


「この程度か? 話に聞いていた女勇者も大したことは無いな!」


《なっ、何ですって! 私の勇者に向かって!!》


「挑発だ、乗るな!」


「うん、分かってる!」


《スピカ! あの三流勇者に本物がどういうものが思い知らせてやるのよ!!》


(挑発だってば……それに、今はまだ夜じゃないから無理だよ……)


《ぐぬぬうぅ……》


 トレミィが一人唸っている間にも激しく音を立て繰り広げられる剣戟。しかし、ここまでの戦いが様子見であるということを、お互いは気付いていた。


 必殺の一撃を食らわせるため、けん制を続ける両者。何度目かの打ち合いの直後、クライヴが一瞬セドリックの方へ視線を向ける。


 スピカとフェルナンドはその一瞬を見逃さなかった。同時に駆け出すと、トップスピードに乗ったスピカが剣を突き出す。クライヴの大剣に受け止められるが、その背後を取るようにフェルナンドが大きく跳躍する。


 上段に剣を構えると、切り札として溜めていた魔導力を剣に流し込み一息に振り下ろす。


 今の今まで見せなかった、魔導力を込めた一撃。シェリーの身体強化と同じ原理で放たれる攻撃に、初めて見るスピカも驚きの表情を浮かべている。


 スピカの攻撃を受け止めるために塞がったままの剣。その隙をつく様に放たれたフェルナンドの一撃に、勝負が決まるかと思われたその時、うっすらを笑みを浮かべたクライヴが口を開く。


「やはりその程度か……」


 直後、クライヴの剣から強烈な閃光と共に稲妻がほとばしった。間近にいたスピカは、その稲妻をもろに食らい吹き飛ばされる。そのまま振り向きながら、フェルナンドを迎え撃つべく剣を振り上げるクライヴ。


 そして、剣と剣がぶつかり合う。直後、強烈な稲光が周囲を眩く照らした。


 光が収まった時、そこに立っていたのは稲妻の纏った剣を構えるクライヴだった。その横で倒れ伏すフェルナンド。その剣は中ほどから溶ける様に切断されている。


「これが俺の魔法剣だ、少しは実力の差を思い知ったか?」


 そう言うと、ゆっくりと戦場を見回すクライブ。視線の先には風魔法で必死に仲間を守るジャンルーカの姿がある。


「あいつだったな、俺に生意気な口をきいてきたのは……」


 ジャンルーカに向かって剣を構えるクライヴ。


「なっ……よせっ……」


 苦し気に声を上げるフェルナンド。だが、クライヴはそれを無視したまま剣に魔法を籠める。


「魔法剣……」


 小さくつぶやくと、剣の先端に電撃が集中する。激しい稲光にジャンルーカも自身に向けられた攻撃に気付くが、躱す余裕はない。


「何だ!?」


「死ね!!」


ドンッ!!!!


 そして、轟音と共に剣の先端から雷が放たれた。

ここまで読んで下さりありがとうございました。次話もよろしくお願いします。


また、ブックマークやpt評価、感想も是非によろしくお願いします。


★ ★ ★ 以下、登場人物のまとめです ★ ★ ★


<勇者クライヴのパーティ>

・二等級勇者クライヴ(男)

 特徴:金髪ウェーヴ、長身、魔法剣使い

 ※スピカ&フェルナンドと戦っていた勇者です


・戦士ヴィンス(男)

 特徴:黒髪短髪、がっしり体形、戦斧使い

 ※獣人達と戦っていた人間です


・魔法使いリンジー(女)

 特徴:赤髪ロング、火魔法使い

 ※エルフ達と戦っていた人間です


・僧侶コリー(男)

 特徴:茶髪(後ろ結び)、回復魔法と強化魔法使い

 ※後衛なので待機していました


<勇者セドリックのパーティ>

・三等級勇者セドリック(男)

 特徴:黒髪短髪、切れ長の目、二刀流

 ※プルートと戦っていた勇者です


・武闘家シェリー(女)

 特徴:黒髪ロング、褐色肌、身体強化使い

 ※獣人達と戦っていた人間です


・スカウト(斥候)イアン(男)

 特徴:短い金髪、小柄、両手ナイフ

 ※逃げ出す亜人がいないか見張っていました


・魔法使いジェローム(男)

・特徴:灰髪、色白、細身で長身、風魔法使い

 ※エルフ達と戦っていた人間です


・五等級勇者アラン(男)

 特徴:茶髪、剣術&火魔法使い

 ※14話でボロボロに負けた奴です

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