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魔王の最強の罠vs召喚勇者

作者: 麦酒

訴えたら勝てる

「よくぞ魔王たる我が前まで来た勇者ひかりよ、いや光の勇者ひかりと呼んだ方がいいかな…………」


 まるで最高級なゲーミングチェアのような王座に座った魔王を前に、私はゆっくりと剣を構える



 異世界へ突然召喚された私は、魔王を倒せと強制されて旅に出された


 正直戦闘はチートのお陰で楽勝だったけど、この世界は女子高生の私には辛すぎる

何度心が挫けそうになったことか、何度いっそ殺してくれと願ったことか、何度私を見ないでと叫んだことか……


 羞恥に耐えられなくなった私は一人になった

逆ハーレムパーティーを解散して、誰ともつるむ事なく孤高を貫いて旅を続けた

そして辛く険しい幾多の困難を乗り越えて、ようやく魔王まで辿り着いたのだ


「ようやく会えたわね魔王!さっさと私に倒されなさい!私は貴方を倒して元の世界に帰るのよ!!」


 そうようやくだ……ようやく私は終われるのだ


「ふははははははははははっ、光の勇者でひかりとか笑わせるなっ!」


「ちょっ、それは関係ないでしょ!ブチ殺すわよ」


 人がシリアスな空気を出してるのに、何を言ってるのよこの魔王!


「光の勇者ひかり…ぷっ、に出来るかな」


「怒らせたいみたいね、いいわ……塵になって消えなさい」


 いいわ、そっちがその気なら強化魔法を重ねがけした最強スキルで消し飛ばしてやる!

聞くことすら(はばか)られる、私の必殺コンボをその身に刻んであげるわ


ぶつぶつぶつ

「…………」


「ぶわっはははははははへへっ!小声で『私の小さな希望の種よ、愛で芽吹きなさい』とか言うな!お前は思春期を拗らせた中学生かっ!」


 なっ、なんで小声で唱えた強化魔法の詠唱が聞こえてるのよ!


「良いことを教えてやる、我は地獄耳だ」


「殺すっ!あなただけは絶対に殺すっ!!」


 聞こえてる、て言うか聞いたな!……もういい、もう全力全開だ、どうせ聞こえてるのなら全力で唱えて跡形もなく消し去ってあげる!

食らいなさい私の最低最悪な最強スキルを!


「お願いキラキラ(きら)めく聖霊さん、ラブラブ(まばゆ)い勇気さ…」

「ぶはっ!うははははははははははっ!ラブラブ眩いって、ぶははははははははっ!言ってて恥ずかしくないのか!!うははははははははははははははははは!!」


 うるさいっ!恥ずかしいに決まってるでしょ!

でも高位の呪文やスキルはこんなのばっかりなのよ!

これを聞かれたくないから、こっちはソロやってんのよ!


「…ら、ラブラブ眩い勇気さん、私の聖剣ハツコイツンデレハートであいつをメロメロにしちゃって!」


「わははははははっ、痛い、攻撃食らってないけど痛い!言動が痛すぎる!わははははははははは………ハァハァ……あ、ああ、こ、来いよ…聖剣初恋ツンデ…ぷっ、わははははははははははははははっ!!」


 くっ!……笑いたければ笑うといいわ

こんなふざけた詠唱が必要なスキルだけど、威力だけは正にチートなのよ!

私の恥ずかしいセリフの記憶と共に消えて無くなれっ!



『届け!私の初恋ピュアハーーーートっ!!』


 金色のオーラに包まれた聖剣から、光の洪水が魔王へと突き進む!

ぴゅ、ぴゅあー!と大笑いしている魔王なんか消滅……



パチュン♪


 なんかバリアっぽいので防がれた

それもただ防いだだけじゃない、余波すらも消し去ってる


 余裕の笑みで魔王が私を見ている

傷付けるどころか、髪の毛すら乱れてない


「うそっ、山すら吹き飛ばす威力なのに……」


「笑わせて貰ったお礼に、三つの絶望を与えてやろう」


 最大火力の攻撃を簡単に防がれた

力無く地面に膝を着く……あぁ人が絶望した時に膝から崩れ落ちるって本当だったんだ……ここで私は死ぬんだ……

……私はもう帰れないんだ


「ははっ……好きにしなさい」


「まず一つ目、我も転移者だ、それも三百年前に来たな……だからお前の攻撃は効かない、年期が違うのだよ年期が」


 指を一本立てて胸を張る魔王

どうだ驚いただろう?という表情をしているが、正直どうでもいい


「やっぱり他にも転移者が居たんだ、この世界に居るって事は帰れるって話も嘘かな……もしかしてそれが二つ目?」


 もうどうでもいい、どうせ私の冒険はここまでなのだから

……あーあ、こんな事ならイケメン(はべ)らせて旅すれば良かった

詠唱が恥ずかしいとか気にせずに、あの人と一緒に居たかったなー


「いいや二つ目は、お前が使った魔法やスキルは詠唱なんか無くても出せるって事だ」


「…………え?」


───今なんて言った?聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど


「二百年くらい前だったかな、催眠系が得意な部下に魔法やスキルは詠唱が必要だと世界中の国に嘘をばら蒔けと指示したら、予想以上に上手く行ってな」


「ちょっと待て!」


 私は立ち上がって魔王に詰め寄る

くっ、バリアがあって先に進めない!


「ついでだから、将来来るかも知れない勇者のスキルは、とんでもなく恥ずかしいのにしろと言った記憶が」


「お前かー!お前が元凶だったのかー!」


 こいつ、こいつのせいでどれだけ恥ずかし真似をさせられたか!

街を救った時とか思わず小声で唱えるのを忘れて、庇った人達が背後で必死に笑うのを堪えてたりしたんだぞ!

子供達から無邪気な笑顔で「勇者様ー、キラキラ(まばゆ)いやってー」とせがまれたんだぞ!


「男の勇者にこれバラした時の顔を楽しみにしてたけど、いやー女の勇者でもこれはキツかったみたいだね」


「殺す、もう勇者とか魔王とか関係ない、何年掛かっても絶対殺す!」


 許せない、こいつだけは絶対に許さない!

どうせ帰れないんだ、この場をどうにか生きて脱出して山籠りでも何でもしてこいつをやってやる!!



 私が決意も新たに逃げる算段をしていると

魔王はさも愉快そうに、三本目の指を立てた


「でだ、三つ目の絶望だが、我は地球に帰れる魔法を開発している」


「殺……は?」


「そしてお前を今から強制的に送還する」


「待って、それの何処が絶望なの……」


 むしろ私がずっと待ち望んでた物じゃない!

この世界で私がどれだけ枕に顔を埋めながら足をバタバタさせ、元の世界へ帰りたいと願ったことか


「実はお前がここまで来る間の戦闘は全て録画している」


「え?」


「そして動画サイトに投稿している」


「何してんのーーー!!」


 待って、本気で待って!

それって、あの恥ずかしセリフのスキルや、あの恥ずかし振り付けが必要な呪文も全国ネットで晒されたの!?


「冗談で小遣い稼ぎでやったら、再生数がとんでもなくて止められなくなってな……正直すまんかった」


「謝って済む問題かー!」


 帰ったらすぐに動画サイトへ動画の削除を申請してやる!

不適切な動画で消してやる!


「アニメ化の話も来たから受けといたので、帰ったらインタビューよろ!」


「誰が受けるかーーー!ふざけるなーーーーーっ!!」


「因みに動画の総集編が映画化したから、有名人だぞいq(^-^q)」


「肖像権ーーーー!!」


 こいつ謝ってる振りして、まったく反省してない!

人の恥ずかし姿を撮って晒し上げるとか、こいつに人の心は無いの!!この鬼、悪魔、変態、下野!!


「スキルや魔法を大声で使ってるように編集するのに苦労したんだぞ(´・ω・`)」


「帰ったらソッコーで訴えてやる!」


 無いな、こいつ絶対に楽しみながらやっている!!

 


「(´・∀・`)ドンマイ」


「ドンマイじゃなーーーい!!」


 バリアを剣でガンガン叩く私に魔王が放った魔法が当たると、身体がフワッと浮き上がった


「ふざけるんじゃないわよ!せめて一発殴らせなさい!」


 私の絶叫も空しく、身体を包み込む魔方陣は私を彼方へと転送させた


───覚えていなさい、私は何が何でもここへ帰って来て、絶対に酷い目に会わせてやるんだから!?


───

──


 元の世界へ帰った私は、両親や友人との感動の再会……は無く、生暖かい眼差しを一身に浴びた再会をした


「ひ、ひかり……お帰り」


「う、うん……」


 両親から目線を反らされながらお帰りと言われた異世界帰還者って私ぐらいなんだろうな……

何とも言えない空気の中、お母さんがタブレットPCを私におずおずと渡して来た


 何これ?渡されたタブレットを見ると

げっ、私の勇者姿をデフォルメしたようなアニメ絵が載ってる

放映日が書いてあるけど、絶対に阻止してみせるからね!


 ……あれ、一番下に不穏なワードが書いてあるんだけど


「あのね……魔王様(プロデューサーさん)からの伝言なんだけど……アニメ化の販促でサイン会するから、そのつもりで準備しとくように…」

「誰がやるかー!絶対許さないからね、あの魔王ぉぉぉぉ!!」


(´・∀・`)ドンマイ

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― 新着の感想 ―
[一言] 麦酒様 お忙しい中、お返事を下さりありがとうございました❀.(*´▽`*)❀. 新作、楽しみにしていますね!
[良い点] 続きが読みたいです( 'ω')/ ハイ!
[一言] これがのちの魔王の嫁との初めての出会いの場面だった……りは、しないだろうなぁ……
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