白いから好きだと思う後ろ手に春を投げ込む三月の川
映すのね鏡みたいに人のこと月じゃないのに光りだす庭
透明になるよう穴を開けている 2階からピアノに雨が降る
階段はさっき作っておいたのだ学習机に満ちてゆく湖
花びらが排水溝を埋め立てて溢れださずに込みあげる水
もう何も心配しなくていいみたいあんまり綺麗な色した時計
歩いたら歩いただけで辿り着く廻ることだけ知っている針
もう何か何かになってもいいみたい散る花も順番を忘れて
誰よりも飾り気のない下敷きであの天井にまっしろな海
痛みならもう痛みだと知っている 手をのばしたらのばしただけで
同じ形の宇宙を見てると知ってから目を瞑ってもおんなじ光
昨日見た夢の続きを生きていて明日も知らない現実を視る
白いから好きだと思う後ろ手に春を投げ込む三月の川
「曇るのだ、眼鏡が」それでいつまでも春の在処を知らずに歩く
もうすでに致死量ですか? 桜降り積もるほど息潜めてく春
月に行くバスってこれかなポケットが軽く鳴るならそれを対価に
月に手を伸ばすってどうやるのかな届かないならただの合図だ
月に手をふたりで伸ばす間違ってやってくるかも地球のバス停
ただ時が流れていって春が来てあなたのことを好きだと思う
窓まるく昔々の月ならばぴったり嵌まるサイズだけれど
指先に朝、昼、晩と名をつけて夜になったら指輪を嵌める
幸せになっていくのだ(少しずつ)(ゆきがさくらにかわる温度で)
青信号よりも赤信号が好きちゃんと命令してくれるから
財布忘れたスーパーで白鳥座からあげの星(170円)
寂しさと生まれ忘れてきたみたい図書館に積もる埃まぶしい
酒はやらないたばこもやらない死ぬまでの時間がぜんぶ穏やかになる
みかんって私の知ってるみかんですよね あれってきれいにみえないですか
海草サラダにもやしを混ぜるお前にも違う生き方あったのですよ
ある日気付いたことなんですがうちの犬は生まれてこの方楽器にさわったことがないみたいなんです
時計 きみに任せたこれからは僕の代わりにしっかり生きろ
地球人だぼくは きみは? 知ってるか悪いことって楽しいんだぜ
夏が嫌いで嫌いで仕方ない 前世が鯨なら許してくれ
どこに行きたいのと聞けばでかすぎるイカに変わって羽ばたいていく
カニクリームソーダトレインどこ行くの春から夏のあざやかなゆめ
地の底に墜ちたら始められますね第三新東京市の建設
波打ち際で金魚はずっと黙ってた本当の気持ちなんて知らないよ
丸まったひかりが光る風邪の日に食べられなかったあなたのごはん
孤独だね孤独だねって笑い合う明日もこんな孤独がいいね
食べ終えたお皿みたいな恋人にやわらかな水あたためている
この星に秘密なんかは特にない光って少しあたたかいだけ
エイリアン食べて寝ている幸せを増幅したくて頭をなでる
禁断の果実むしゃむしゃ食べながら自分の足で楽園を出る
これがもし星を描いた漫画ならフキダシすらない僕らの台詞
35℃です平熱です褪せたわんちゃんいつもあたたかくって
わたししぬの 新事実ですこれからは一秒一秒たいせつにする
まったくもうまったくもうだよこんなのは今日も仲良くするにはするけど
まだ若いまだ若いんです本気ですだいたい雪は私に降ります
ナルシストだから海とか歩いてたふたりでひとりの気持ちになって
あした新宿で会おうよダメだって言うならわたしは国を滅ぼす
人生の上演前に励ましてくれた小道具係さん(たすけて)
無関係だ僕とお前はふたりでいても光ったりしないし、だけど、いいよな
かわいそう つらい? かなしい? だいじょうぶ? わたしこいぬじゃなくてごめんね
充電ができたりできなかったりだ何度も生き返ってかわいそ
税金のために貯金を切り崩す老いないという僅かな望み
寿命まで生きていられる気がしない織田信長もそうだったけど
階段を上って空は青いけど夏はここまで来てないみたい
青すぎるときの空ですわたくしはお世辞を言うな本音で話せ
永遠の歌を歌いに僕たちはアラサーだけどカラオケに行く
雪のふりしておいでです若様は春が来るまでしばし待たれい
逆光ですあなたの顔が見えません見せたくなくても、はい、移動して
こないだね、って「の」と「あ」が「な」になるように、ななな、なんなのそのハレンチさ
まだここに虹が咲いてたことはない愛してるって試しに言って
言葉に栞を挟まれている思い出の話はいつもあの夏日から
傘は全部捨てたし靴もさっき燃やしましたどこにもいけなくってたのしい
夏に差す傘はあかるい水玉の模様なんかを入れちゃったりして
またどすか うっかり京都の精神で上司に向かって直球文句
雨が降って傘びしょ濡れだもし君が嫌になったらいつでも言ってね
隅谷さんがピアノを弾いてこれからは最後の一度の気持ちで歌う
何回目だっけと思って手を握る来世は現世のリフレインがいい
譲れない夢とかはない髪に入れるメッシュの色もくじで決めてる
捨てられたレシートを見るこの人は僕よりお金のある人だろう
約束があるからへーき花束が花畑になる時間まぶしい
月きれーーーーーー!!!!!って叫びまくるよひとりでもたぶんあいつも私が好きだ
愛なんて電池切れですほら見てよ見たらコンビニ走って来てよ
気付かなかったから「気付かなかったね」と笑う「でもなんとかなってたよね」「うん」
幸せは運命に合う二歩手前カレー粉をぱきぱき折るところ
なりたいと思うからなる氷から水に変わっていくのやさしい
あの海の向こうに何もありませんきみは私とここで死ぬのだ
あまりにも昔に降った雪だから いいわけは今それで十分
この人と弱気で生きるそれぞれのポイントカードはそれぞれで持つ
僕たちは少し斜めにものを見て君のことすら綺麗に見える
広告に出てくるご飯の高いこと夏のひかりは無料でお得
ちゃんとしたことは言えない結婚の報告を聞くよかったねと言う
夏は暑い いいとこなんかひとつもない 人に合わせて「エモい」と言う
エンドロールが流れてもまだ座ってて名前ばっかり綺麗と笑う
生ごみは死んでいるから生ごみで傷がついてるだけじゃいけない
思い出はもう乾いてる彼岸花枯れて真夏のひかりまぶしい
いつか愛の言葉を柔らかく口に遥か林の奥深くして
さみしさの事情をひとつ口にしてあなたも同じものを唱えて
たいせつなことばを口にしますむしゃむしゃむしゃむしゃしゃ生活はどう?
生活は難しくってあなたとは暮らしていけるのあなたを探す
探しもの見つけたみたい雨が降る日曜日にはパンを買わない
図書館の返却ボックスあの奥の滅びた街の小さなパン屋
叶うことひとつひとつに名を付けて年を取るって願いごとかな
星の降る夜ならできるこれからとこれからのないふたりの話
青い空の青って変だ初めから科学を選べと言われたみたい
面影は所詮影だよ輝いて見えたあなたにもう一度はない
なくなったパズルのピースこのところ手と手を繋ぐ温度が増した
花びらは光のかわりではなくて両目でずっとずっと見ていた
花束は少し枯れてた汽車窓の向こうは記録過ぎればひかり
あとはただ生きていくだけそれだけでこんなにもこんなにもうれしい