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我が名はネイロ!

ふと目が覚めると、怪しげな洋館の床にうつ伏せになって寝そべっていた。もしかして電話で言っていた、夢の世界へなんとかっていうキャンペーンによって連れてこられたわけか?

それにしても招待されたのは良いが、このような体制にさせて放っておくのは扱いが悪いぞっ。


「おや、やっと目が覚めましたか。待ちくたびれましたよ。普通の方なら10分程度で起きるはずが、あなたといったら6時間も眠りこけていたのですよ。何度死んでいるのではないかと心配したことか。」


執事の様な格好をしたイケメンさんが愚痴を吐きながら、ティーカップの中身を飲みほす。その様な動作でさえ絵になるが、こちらを見下ろす姿は何とも偉そうだ。女ならきっとイラつくどころか惚れていただろう。この時、俺は男で良かったと思った。


「さて、まずは自己紹介からしましょう。我が名はネイロ!この世界に来た者の案内人であり、生活を送って頂くためのヒントを与えるナビゲーターでもあります。元大魔法使いなので困ったことがあれば何なりとお申し付け下さい。」


魔法使い…?これは設定なのだろうか。まさか本当に異世界に来ていて、本当に魔法が使える世界だなんてな…はは…。

さすがは俺。正に夢のような甚だしい妄想を褒めたい。


さて、ネイロさんのことはわかったがまだ俺は自己紹介をしていない。自己紹介してもらっておいて名乗らないのも失礼なので、立ち上がろうとするが…体が動かない。

まさかのこんなところで金縛り?!


「龍也様、今動こうとしましたね?私を襲おうなんて考え、私にはお見通しですよ…!それに魔法で押さえつけてあるので抵抗しても無駄ですよ!!」


また一つ、ネイロさんについてわかったことがある。彼はとんでもない勘違い野郎のようだ。容姿端麗であるがためモテるのだろう。だからといって男の俺が、この美少年を襲うだと?!あいにく俺にはそんな趣味はない!!

それにうつ伏せの状態で頭だけ上げる体制はきついんだ!


そうわーわー喚いていると、煩くて仕方なかったのか、拘束魔法を解いてくれた。


…ん?俺、さっき魔法をかけられてたんだよな…。魔法?!そんな非、現実的なもの、この世界に存在していたのか?!いや、そんなわけがあるはずがない。

恐る恐る聞いてみた。

「ここは本当に異世界なのか」と。


「何を言っているのですか?ここへ来られる前に電話でお伝えしましたよね?夢の“異世界”にご招待すると。設定でもなんでもありません。あなたは異世界転移をしたのです。」


けろりとした顔で爆弾発言をするネイロさん。あああ、とうとう頭がおかしくなったのか。それとも有り得ないけれど、本当の話なのか…。


頭を抱えながら自問自答ループを繰り返していると、


「まあ急に連れてこられて困惑するのもわかります。なのでゆっくり理解していけばいいんですよ。」


むむ…、そうだな。その内色々わかってくるだろう。そもそも俺が応募して当たったキャンペーンではないが、魔法が使える世界ってのも楽しそうだ。せっかくのチャンスだし、満喫しないわけにはいかないよな!こんな楽しそうな世界に巡り会わせてくれた神様と、持ち前である切り替えの早さに感謝をした。



「んじゃ、いくぜ。俺の名は…」

窘御(くるみ) 龍也(りゅうや)様ですよね。学校にはちゃんと通っていたものの家に帰ってからは引きこもり生活とほぼ同様のふしだらな生活を送る。ゲーム三昧していてもなかなかプレイ結果が報われない。あらゆるゲームを見事、初心者並みの腕前でプレイする、ある意味すごいゲーマーである。しかし一回だけランキング入りを果たし、それを唯一の誇りとして自信満々に過ごしていた…。」


それを全て聞き終える頃には、俺のプライドはズタボロになっていた。

よしよし、よく頑張ったな、俺。自分の紹介をいつしか他人が話し、内容はあまりにも残酷なもの。

これじゃあ自己紹介する意味ないじゃないか!どうして俺のことそんなに知ってんだよ!それに、考えておいたカッコイイ自己紹介プラン壊すんじゃねぇ!(泣)


「何故我々が龍也様のことを知っているのかご説明致しましょう。実はこのキャンペーン、国家レベルの計画でして、その計画に相応しい人物を厳選するために色々と調べさせてもらいましてね。」


そんな重要な計画に俺は選ばれたのか…!!


「というのは冗談でですね。」

「え?あ、は?!はぁ…。」

「戸惑い、驚き、呆れる。いやー、実に面白いですね。あなたのリアクションは。」

「な!…馬鹿にされた気がする…。」

「違いますよ。こんな見え見えの作り話を信じたあなたを馬鹿にしたのですよ。」


むきーっ!!とことんムカつく奴だぜ!とんだドSだなっ!


「冗談はこのぐらいにして、真実をお話しましょう。」


ネイロさんの顔つきが先程までとは一変し、重く、張り詰めた表情になった。

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