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チートゴースト  作者: 未知風
1章「始まりの町」
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7話「トイレの花〇さん」

そう、あれは宿屋で寝ている時だった。トイレに行こうと思い、私は寝ていた体を目を擦りながら起こす。


「トイレトイレっと」


私は部屋の畳の上を歩き、床に出る。


「ひえっ。つめてぇ」


近くの電気をつける。


「うぉ、まぶし」


足元や扉を照らしてくれる白っぽい光に目がくらむ。


「もしかして〇〇〇〇るの?〇かないでよ。ふふふふ」


どこからか声が聞こえる。目の前のトイレのほうからか?あまり聞き取れなかったけど疑問形のようだ。私はもう一度、今度は聞き取りやすくするためにトイレの扉に耳を近づける。


「ん?どうしたの?先ほどの言葉聞き取れなかったから扉に耳をくっつけてるからもう一度お願いします」


やたら水の音がする。トイレだからしょうがないか。


「殺す殺す殺す……」


何度もその言葉が扉越しから聞こえてくる。

そういえばここは何階だっけ?七階か。信じてないけど、何階かのトイレの花子さんっていう学校の怪談だってあるんだよな。そういえばさっきなんて言ったんだろう。

こうかな?


”もしかして殺してくれるの?いかないでよ。ふふふふ”


いや、待って。さっき殺すって言ってなかった?待ったら殺される。もしかしてこれが俗にいう花子さん?そういえば確か三回ノックして名前読んであげたら花子さんはどこか消えてくれるとか元いた世界の本で読んだ気がする。そうだ、三階だ。いや、それよりも今は七階だから七回なのか?

私は七回扉を叩いて扉に向けて言う。


「花子さん?」

「ひゃい」


おい、どこかいってくれるどころか返事してくれたぞ?

そして数分して鍵が開き、扉が私に向けて思いっきり押される。扉越しの声を聞くために頭を前に出していたため、私の頭が扉に強打された。


「あら、ごめん遊ばせ。聞かないでって言ったでしょ?」


扉越しでよく声が聞こえなかったが、そこにいたのは花咲さんだった。


「痛っ。さっきなんて言ったの?”もしかして殺してくれる?いかないでよ。ふふふふ”、かと言われててっきり花子さんかと思ったけど」

「へぇ、花子さんと思ってトイレに耳を当てるんだぁ、あなたは。”もしかして待っているの?聞かないでよ。ふふふふ”よ?」

「なるほど」

「じゃあ、さっさと中に入って花子さんに会いに行ったら?」


彼女は声を低くして私を無理矢理中に詰め込んだ。私はそこで用を足す。このトイレの空気がやたら重い。首を吊って死にたくなるほどに。私はそう考えるのが怖くなり、急いで外に出た。

そういえば彼女も一人の幽霊だったことを思い出して私は上下の布団に包まれて眠りに就くのだった。


私は目を覚ました。壁にかかった時計を見てみる。どうやら、午前八時のようだ。

どうやら、みんな寝ているようだ。


「ん?なんだ、あれ」


花咲さんの布団の中に大きい塊が二つある。枕は布団の上に入っている。テンマは伏せて寝ているようだ。ちなみに天使である有川さんは右手を左手で握りしめて目を閉じて立っている。何かに祈っているかのようだ。

ひとまず最初に起こすとするなら彼女か。


「有川さん」

「ふっふっふっ。我が名を呼ぶにふさわしい男か……はっ、何でもないです。忘れてくださいー!!」


左手で左目を隠し、右手で親指を立てたまま横にして人差し指をこちらに向けてその言葉をいう彼女は私を見ると赤面してその場で座り込み、枕を頭に隠している。


「まぁ、聞かなかったことにしてあげよう」


そう伝えても彼女はそのままの格好でいる。


「おーい、テンマー」


私はテンマの近くで彼を呼ぶ。しかし彼は起きることなく、「おばさん、プリンおいしいか?よしゃ、喜ぶ顔がサイコーだぜ。ハニー」と寝言を言っている。録音でもしてやりたいが。


そうだ、昨日のカメラ。


カメラを私は彼に合わせる。何やら、カメラ越しに黒と白いでかい何かが見える。


「ういっす、兄貴」


前からその声が聞こえる。


「テンマ。おばさん、どうなった?」

「はっ?おばさんなんて知るかよ。壁にいたおばはんなんか知るかよ」

「夢の中で好きだったんだろ?」

「はぁ?追いかけられてきたからプリンをあげて消えたなんてねーからな?」


やたら恥ずかしそうに照れてる彼はそう呟く。

さて、残りは彼女か。


「花咲さん、起きてくれません?」

「彼女は今、眠ってます」

「その声はユキさん?」

「はい、ユキです。最低男さん」

「いや、なんだその名。俺が何をした?」

「そうですね。彼女をトイレで泣かしましたよね?」


すると先ほど起こした二人の視線が後ろからくる。


「え?何をしたの?」と有川さん。

「兄貴。俺はもっと兄貴は兄貴だと思ってましたよ。まさかそこまで卑劣ゲスだったとは」

「テンマ、お前にだけは言われたくない」

「うるせぇよ、ザコ」

「そうか。テンマ、これを見せてもいいのか?」


私はカメラを見せる。テンマは力強く首を振っている。


「ユキさん、細かくちゃんと言わないとダメですよ」

「そうですね。耳を当てて彼女のことをよく聞いてました」


(おいーーー!!それ、もっとややこしくなるだろうが!!)


「んんー!!昨日は大変な目にあったわ。おはようございます、あれ?どうし……ぺっ」


花咲さんはそう呟いて唾を吐いた。そういえば昨日のことで私は彼女のことを怒らせたままだった。


「ごめんなさい。私が悪かったです。なのでお二人ともちゃんと話して下さい」


彼女たちはちゃんと話した。トイレの扉越しで私と花咲さんがトイレの花子さんと勘違いしつつ会話していたことを。

それを聞いた有川さんは安堵したかのようにため息をついている。テンマは「さすが兄貴は兄貴だ」と呟いている。褒めてるのか、貶されてるのか分からない。


「じゃあ、飯を食ってからこの町で堪能しよう。ここ、いつまで平気か?」と私はユキさんに聞く。

「あなたたちは本日の午前十一時となっております」

「ふむ。飯食べたら最低でもリミット約二時間か」

「よし、さっさと食べに行きましょ」と有川さん。


こうして昨日の夕飯を食べたあの食堂に向かうのだった。

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