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チートゴースト  作者: 未知風
1章「始まりの町」
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6話「宿屋あるある」

いつの間にか部屋に布団がひかれていた。

私たちはしばらく部屋でくつろぐと夏川さんが「温泉行こう」と言い出した。温泉はどうやら三階にあるらしい。温泉に必要なタオルや浴衣などを持って私たちは部屋の外に出た。

一階のロビーに鍵を渡して温泉に向かう。

そして赤色の「女」と青色の「男」のそれぞれ白字で書かれた布が私たちを待ち構えていた。


「んじゃあ、温泉から先に出た方が取りに行くで」

「了解、行こっ。楓」と私の質問に夏川さんは答える。

「んじゃ、俺もこっちで」とテンマは彼女先が閉めた扉の方へ入ろうとする。


私は「お前もこっちだ」と言いながら、彼の両腕を後ろから掴んで引きずりながら青い洞窟へと彼を引き込む。いや、ただの男湯に入るだけではあるが。


「さっかくいいもの拝めたのに。お前も見たいだろ。男ならロマンや」

「よかったな、変態テンマ」

「おぉ、なんだ、そのカッコイイ語呂合わせわ!!」

「ごめん、お前がそこまでアホだとは思わなかった。まぁ、ドンマイ」

「ありがとうございます、兄貴。なんか燃えてきたっす」


これから温まるのになんで燃えるんだよ。どこまでアホなんだ、こいつは。

そう思いながら風呂に入る。


「そんでさー、彼のこと〇〇なの?」


有川さんの声が聞こえる。どうやら女湯と男湯の境にある壁の上だけは空いているようだ。しかしちゃんと聞き取れない感じだ。


「しっー。……そんなことよりもその翼、背中から生えてるのね」

「え?そうなの?」

「うん。おっぱいのちょうど反対側。あっ、手鏡あるから見る?」

「ありがと。ホントだ。こうなってんだ」


くっ、なんか見てみたい。くっ、性別の境目さえなければいいのに。むしろこいつが天使……悪魔ならよかったのに。

そう思って横の横のテンマを見てみたらちょうど顔に彼の使用しているシャワーの水がかかる。


「ぶはっ……おい!!」

「すまん。そっちにホース向いてたの忘れてた」


ったく、と思いながら私は頭を洗う。


「ねぇ、その翼洗ってあげようか?」

「えっ?自分でも洗えるよ」

「いいからいいから」

「ちょっ……ぷふふ……かえへ……」


有川さんの笑い声が壁越しから聞こえる。他のお客さんたちもいるんだから静かにしやがれって言い聞かせたはずなのに。そう思いながらシャワーのボタンを押す。


(あれ?出ない。あっ、これ桶皿に水を入れる方か。こっちか)


横についているダイヤルを下に回す。


(ん?どこだ?)


手で上の方を探す。もちろん、私に向けて私にあった。しかし量が少なく細い線を描いた滝のようにしか出なかった。


(出せよ、もっと)


私は頭をシャワーの水が落ちる真下に差し出す。するとシャワーが私の頭をめがけて勢いよく注ぎ込まれる。


「いてーよ」

「兄貴、大丈夫っすか?」


こいつがアホでよかった。普通なら少しでも笑うはずなのに真顔で私のことを心配する。


「あぁ」


私は体を洗う。そして例のシャワーを付ける。今度はちゃんと勢いよく噴射してきた。股間をめがけて。


「このシャワー、悪質だろ。俺がお前に何をした?もしかしてお前、俺が嫌いか?」

「好きです」と壁越しから聞き覚えのある二人の声がする。


そしてなんか照れたような叫び声がその二人からした。


「たくっ。うるせぇな。まともに湯で寝れんわ」


いや、寝るなよ。おっさん、と小さな声で言いながらおじさんが出ていくのを見守った。


「いやぁ、いい湯だな、テンマ。ん?テンマ?」


湯の中に入った私はテンマを見る。しかし彼は湯に入ってなかった。彼はいつの間にか持ってきた棒を取り出し、その上にカメラをそこに設置している。いわゆる自撮り棒のようなあれだ。


「なにしてんだよ。恥ずかしい」と私は言う。

「これで見えるだろ?ふへへ……そろそろいいかな……どれどれ。兄貴も見ますよね」


こちらにそのカメラを見せてくる。丸っこいカメラはこちらの世界で流行ってるものなのだろうか。こいつが撮ってた映像を私にも見せてくる。


「どれどれ……これで兄貴も同罪だからな。……はぁ?なんだよ、これ。ばばあの顔がたくさん映ってんじゃねぇか」

「うん、ドンマイ」


魂が抜ける感じのテンマに私はそう言ってあげた。それにしてもあそこの空いた場所にはプラスティック製のポスターのおばさんが詰まっていたとは。誰に得があるんだ。いや、そもそものぞき見防止にそんなことはどうでもいいか。

その後、私たちはお風呂を出てロビーに行く。彼女たちはまだ先に出ていないようだった。

部屋でしばらく彼と二人きりでテレビを見て待っている。

インターンホンが鳴る。私は窓を開けた。彼女たちの胸が私の目から見えてしまいそうだった。どうやらどちらもブラは身に付けているらしい。


(ん?なんかおかしい)


「ちょっと花咲さん、逆じゃない?自分から見て手前を右前にして上に左を重ねないとダメじゃない?」

「えぇ、私のは左前ですね。どうせ、私は死んでるのですから。どちらでもいいのですよ。死んでるのだから」

「分かったから。花咲さん、そこのトイレで直していいから」


そう言って彼女をトイレに促す。中に入って数分後に着替え直して戻ってきた。


「ねぇ、明日はちゃんと行くわよね」

「あぁ」

「……ふふ」


私は有川さんの方を見る。彼女は聞いてくる割にはもうすでに四つの布団のうち一つを選んで寝ていたのだった。ちなみに先程見たが、羽は自在に仕舞えるらしい。

女は窓側、男は玄関という感じでそれぞれやや離れて

敷布団が引かれている。


「俺らも寝よう」と私が言う。

「酒飲みてー」とテンマは嘆く。

「お前、飲んだことを理由として彼女たちのことを襲うつもりだろ?むしろ今から寝るのを襲う気だろう」

「は?兄貴でもそんな戯言、許さねぇぞ?」

「ほう?いいのかな?これを見せて彼女たちに説明しても?」


私は先程彼に見せてもらったカメラを手にしていた。先程彼に「トイレに行くから」と預かっててほしいと言われた物である。


「くっ、やりますなぁ」

「ねぇ、それなぁにぃ?」と花咲さんが聞いてくる。


彼女が起きていたのを忘れていた。


「うーん、見たら花咲さんが成仏しちゃう奴かな」

「ふーん。つまり……きもっ」


花咲さん、そう言って布団の中に籠らないでくれ。俺じゃないぞ、テンマだぞ、と心の中で訴えながら部屋の電気を消す。


「ばばあ……ばばあ……ばばあ……顔グチャ……」


どんだけトラウマになってんだよ、テンマ。そう思いながら私も眠りにつくのだった。

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