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第1章 最初の事件 4

 翌日、リアム達は事件現場である 「宿場リーセリア」の、ブレイグが宿泊していた部屋に向かった。部屋の中にはベッドとクローゼット、それから壁掛けのテレビがあるくらいで、話の通り凶器になりそうな物は無かった。


 「ブレイグはそこに仰向けで倒れていた。部屋の中を調べたが、ブレイグの荷物以外は今のこの部屋と同じ状態だったし、ブレイグの荷物にも凶器のような物は見当たらなかった。」


 キールは、人型に貼られた床の白いテープの前にしゃがみ込んだ。


 「魔法の痕跡は無かったらしいが、消した、あるいは移した可能性は無いのか?」


 「ああ、部屋中くまなく捜索したが、どこにもない。今、この周辺で不審な痕跡がないか調べさせているところだ。」


 警察の捜査は行き詰まっていた。犯行の方法、犯人の動機など、わかっていないことばかりだった。


 「そうそう、報告を受けたときに気になることがあってな。ブレイグが流した血に、水が混ざっていたそうだ。」


 「水が?」


 「メイドのタビが、遺体を発見した際に持っていたグラスを落として、水をこぼしたそうだ。グラスは割れなかったらしいが、何かおかしいと思わないか?グラスが割れなかったのはまぁ分かるとしても、発見時にこぼしたならドア付近のはずだ。部屋の真ん中で死んでいたブレイグの血と混ざったりしないだろう?それにドアの辺りは乾いていたらしく、証言とも食い違う。…だが、それだけなんだ。」


 キールは悔しそうだった。証言の食い違いなどから、メイドのタビが怪しいのは明らかだったが、凶器などの証拠が無いため、逮捕に至らない状態だった。


 「もうあまり長く拘留出来ない。早く証拠を見つけないと。」


 キールは焦っていた。するとカイルが何か閃いた顔で話し始めた。


 「親父、受付の女性以外の容疑者3人の情報を調べてくれないか、過去の経歴まですべてだ。それから、「宿場リーセリア」とブレイグの関係も調べてくれ。オレは地下にいく。恐らくそこに痕跡があるはずだ。」


 キールは驚いていた。


 「地下?ここの地下は確か貯蔵庫だろう?そんなところに痕跡があるのか?それに、ブレイグは休暇で故郷に向かう途中に寄っただけだったんじゃないのか?」


 「とにかく調べれば全貌が見えて来るはずだ。仮説が正しければね。リアム、エミリー、一緒に来てくれ。じゃあ親父、後で部屋で話そう。」


 そう言ってカイルは地下に通じる階段へ向かった。リアムとエミリーも後を追った。


 「ねぇカイル、何かわかったの?私たちにも教えてほしいんだけど…。」


 リアムとエミリーは言われるがままついて来たが、カイルの考えは全く分かっていなかった。


 「事件現場の状況から考えて、凶器は確かにあったが、誰かが持ち去ったか、あるいはひとりでに消えてしまったということになる。そして犯人は恐らくあの4人の中の誰かで間違いないだろう。だが所持品や周辺の捜索では凶器は見つかっていない。となると後者の、ひとりでに消えてしまったという可能性が高くなる。それを確かめるために、地下に降りるんだ。」


 「でもひとりでに消える凶器なんてあり得ないでしょ?普通の凶器がまだ見つかっていないだけじゃないの?」


 エミリーはカイルの突拍子も無い意見にあきれ気味に言った。


 「だが可能性ゼロではないだろう?ダメなら仮説が間違っていたってことさ。」


 「貯蔵庫のどこを探すんだい?」


 3人が階段を降りきった時、リアムが聞いた。

 カイルは大きな銀の扉の前に立って答えた。


 「この中だ。少し寒くなると思うから、何か羽織った方がいいぞ。」


 それは冷凍室の扉だった。

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