第1章 最初の事件 2
リアムが宿に戻ると、宿の前に人だかりが出来ていた。中には警察の姿があり、カイルとエミリーも外で話していた。
「リアム!遅かったじゃない。」
エミリーはリアムに駆け寄った。
「ごめん。この騒ぎは?何があったの?」
「宿の一室で殺人があったらしい。詳しくはわからないが、どうやらオレ達が市場にいっている間に遺体が発見されたようだ。」
そのせいで二人はへやに入るのを止められていた。そばには市場で買った食材が置いてあった。そこに警察が一人近付いてきた。
「君達はここの宿泊客だね?すまないが、現場保存のためにこの宿には暫く入れない。だから他の宿を探してくれ。部屋の荷物は確認が済んだら届けさせるよ。」
そう言うと、他の宿泊客のところへ行ってしまった。
「あの様子だと、どうやらオレ達は容疑者から外れたらしい。恐らく、オレ達が市場にいた時間帯が死亡推定時刻なんだろう。」
そう言いながら、カイルは辺りを見回している。
「何か探してるの?」
と、エミリーが聞いた。
「実はルラフの警察に知り合いがいてね、その人を探しているんだが…。」
その時、一人の男性がカイルに話しかけてきた。
「おお、カイル。もうルラフまで来ていたのか。私も今、現場に来たところでね。そちらの二人が旅を共にしてくれている子達か?」
その男性は背が高く、黒いスーツに茶色のロングコートを着て、グレーのハンチング帽をかぶっていた。顎には少し髭を蓄えていた。
「ああ、ちょうど探してたんだ。リアム、エミリー、この人はキール・センベルド警部、オレの親父だ。」
「話は聞いているよ。息子が世話になっているね。」
キールは帽子を取り、軽く会釈した。
「はじめまして、エミリー・エアドレンです。」
「はっ、はじめまして、リアム・ベイラルフです。よろしくお願いします。」
エミリーとリアムは、それぞれ挨拶をした。
「ところでカイル、アリスについて何かわかったか?」
「いや、まだ何も掴めていない。そっちも進展は無いみたいだな。」
キールは肩を落として答えた。
「ああ、国中の仲間に当たらせているが、まだダメだ。」
カイルはアリス捜索の進捗状況を話し終え、自分達が今泊まっている宿で事件が起きたことを伝えた。
「なら私の部屋へ来るといい。後で荷物を持って戻るよ。二部屋空いているから自由に使ってくれ。」
そう言うとキールは、カイルに部屋の鍵を渡して宿の中へ入っていった。