赤い液体
「...い、おい!」
「......ん? あ、ああ何だ?」
「おいおい、そんなボーッとして大丈夫か?」
「ああ、大丈夫」
「そうか、...この日露戦争に勝てば日本に帰れるんだ、それまでは気をしっかりもてよ」
「そうだな、確か終わったらお前は蝦夷地でゆっくりするんだったな」
「おう、お前はどうすんだ?」
「俺か、俺は...」
話をしていると、向こうから少尉が歩いてきた。
「おいお前ら、駄弁ってないでさっさと出発だ!」
「はい! わかりました!」
少尉から叱られ、俺は走って元の隊の列に並び直す。
「なぁ、最後に1ついいか?」
「ん? 何だよ」
「必ず勝とうぜ、そして生きて帰ろう」
「ああ、元より負けるつもりはないさ」
「ははは! よし、出発だ!」
俺は、なにやら血なまぐさい匂いを感じて目が覚めた。
「くっせぇ...何なんだ?」
俺は持ち物から懐中電灯を取り出し、辺りを照らす。
「うっわ...何だよこれ」
床を照らすと、地面にはおびただしいほどの赤い液体が撒き散らされていた。
「うえぇ、身体中に赤いの付いちゃってるよ」
不快に思い、洞窟の外で身体を洗える水場がないか探しに行くことにした。
「あれ? 俺こんな奥まで昨日入ったっけ?」
いつまで歩いても出口に着かない。
方向を間違えたかと思い、引き返そうとすると、
「うわ!?」
振り返った瞬間、上から重たい何かが降ってきた。
「シュゴォォォ、シュゴォォォ!」
「クソッ、離れろ...よ!」
しがみついてきた何かをひっぺがして壁に叩きつける。
ドゴォォォォォォン!!
「あぁ?」
凄まじい轟音が鳴り響く。
「やべぇ、崩れるかも」
俺は、襲ってきた何かと洞窟の崩壊から逃れるべく、出口を探しに走り出した。
「おっ、光だ!」
俺は外へと駆け出した。
後ろで轟音が鳴り響く。
「間一髪ってとこか、あぶねぇあぶねぇ」
ホッとしつつも、水場を求めて歩き出した。
歩いていると、森を抜けて視界が開けた。
「あっ、街だ!」
森を抜けると、草原に出て、その向こうに街が見えた。
「街を見つけたのはいいんだが、この見た目で入れてくれるかなぁ?」
多分入れてくれないだろう。
そう思ったが、
「いや、何とかなるだろう」
お腹が減っていたので、細かいことは考えず進むことにした。
上手く草原にいるモンスターを避けつつ、街に着いた。
街の門に近づくと、
「お、おい! 凄い怪我じゃないか!」
「へ? 俺ですか?」
「君以外いないだろう! ささ、早く回復院へいくんだ」
「いや、これは別に俺の血では...」
言い終わる前に、門番に回復院とやらに引っ張って連れてかれた。
「...返り血ですね」
白い白衣みたいなものを着ている人に、そう告げられた。
診断が終わり、外へ出る。
「返り血だったのかぁ」
「だから言おうと思ったんですが...」
「す、すまない。 大怪我してるものだとばかり...」
普通に門番の人はいい人だった。
「見張りをしなくて大丈夫ですか?」
「ああ! 忘れてた! 先輩に怒られるよ! じゃあね」
そう言うと、走って門のところへと戻っていった。
「さて、街に着いたはいいけど...どうしようかな」
服を買おうと思ったが、お金を持っていない。
腹が減っているが、飯を買うお金もない。
世の中は金が全てなのである。
「取り敢えずお金を手に入れないとな」
通りがかりの男性に、お金を稼ぐ所はないかと聞いた。
「え? そうだなぁ、冒険者ならすぐに稼げると思うよ」
「そうですか、それになれる場所はどこですか?」
俺は、男性から『冒険者ギルド』という名の場所を教えてもらった。
「冒険者かぁ...俺、レベル1だけど大丈夫かなぁ」
不安に思いながらも、冒険者ギルドへと向かった。
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