真っ白!!
俺とメフィストが異空間から出ると、エルが出迎えた。
「おかえり! えー戦いやったわ」
「いやいや、一方的な戦いのどこが良いんだよ!?」
俺は出て早々、エルにツッコミを入れる。
「新屋君、残念ながら負けてしまいましたね」
「そうやな、このペンダントはあげられへんわ」
「そうか...じゃあ違うダンジョンに行こうかな」
俺はそう言い、他のダンジョンに向かおうとすると、
「おや? もう行かれるのですか? 外は夜ですから、泊まっていってはいかがでしょう」
「せやせや、泊まっていきーな」
うーん、確かにレストリアの夜は危ないし...断る理由もないな...。
そう思い、お言葉に甘えて泊まらせてもらうことにした。
今思うと、なんで敵地に泊まろうなんて考えたのか。
俺が泊まらなければ、あんな気色悪いヤツを見ないで済んだのに...。
しかし、そんなことは知るよしも無かった。
俺とメフィストは、さっきまでいた大部屋を後にして、俺が泊まる予定の部屋に向かった。
「こちらが、あなたの部屋です」
「うわー、広い!...っていう程広くはないけど、良い部屋だね」
部屋の中は、白を基調としていて...いや、壁も床も家具もみんな白だわこれ!
真っ白!!
「真っ白!!」
「そうですね」
軽くあしらわれた。
「そんなことより、少しお話があるのですが、よろしいですか?」
メフィストが俺の部屋に入り、真面目な顔をしてそう言った。
「お話? 何だ?」
「実はですね、エルをあなたの冒険に連れてって欲しいんですよ」
「えー...」
嫌そうな顔をすると、
「もちろん、ただでとは言いません。 あなたにスキルをお渡ししましょう」
「え? どういうこと?」
「そのままの意味ですよ、スキルをあげるんです」
そんなことが出来るのか...今貰っておけば後々の冒険が楽になるかもな...。
「ちなみに、どんなスキルだ?」
「『光と闇の魔導剣士』とか、何個かあげますよ」
「おお!」
なんか格好いいな!
「でも、何でエルを連れていって欲しいんだ?」
「エルには人生経験が足りないからですよ」
え? あいつは年齢だけを見るとババアだよね?
「でもあいつババアじゃん」
つい声に出てしまう。
「...八裂きにされたいんですか」
「ごめんなさい」
般若のような形相になって怒られた。
「お前が外へ連れてってあげたらいいんじゃないか?」
率直に疑問をぶつける。
「新屋君、私はここから出たくないのです」
「え?」
出られない用事でもあるのだろうか?
きっと大変な用事でもあるのだろう。
「何でだ?」
「私は...ずっと部屋でゴロゴロしていたい本を読んでいたい動きたくない働きたくないのです!!!」
メフィストは欲望を早口で捲し立てる。
前言撤回だ!
こいつはただのニートだったよ!
「お願いします! お願いしますよ! 新屋君!」
「お、おい引っ付くなよ! 離れろ!」
「スキルあげますから! 何卒何卒~!」
「ええい鬱陶しい! 分かったよ分かった! 連れてく連れてく!」
「本当ですか! ありがとうございます!」
メフィストは感極まった顔をしている。
「ではスキルを差し上げましょう!」
メフィストが俺に手のひらを向ける。
すると、俺の体が一瞬光った。
「はい、終わりました。 確認してみてください」
そう言われ、メニューを開く。
ステータス
称号
「少な! メニューが、ステータスと称号しかないぞ!?」
「安心してください。 持ち物っていう名前は、なんかダサかったので、スキル『アイテムボックス』に変換しておきましたよ」
そうか、なら良かった。
確かに持ち物って名前はダサいな。
安心して、次にステータスを見る。
新しいスキルを入手しました!
『光と闇の魔導剣士』
『上書き』
『データドレイン』
『アイテムボックス』
『光と闇の魔導剣士』
・・・光と闇の魔法が全て使えるようになる。
剣に魔法を掛けられるようになる。
『上書き』
・・・自分や回りの物事を書き換える事ができる。
一日5回まで。
『データドレイン』
・・・相手のステータスを吸収し、その戦闘中は、吸収した分自分のステータスが上昇する。
一日10回まで。
『アイテムボックス』
・・・虚空からアイテムを取り出したり、仕舞ったり出来る。
「なかなかのチートスキルだな」
「これくらいはお安いご用ですから」
メフィストは話を続ける。
「そう言えば、あなた、呪われてましたよ、ヒッヒッヒ」
「えぇ!? マジか」
呪い。 明らかにヤバイ響きだ。
俺を脅しに来やがったのか!?
「これですよ」
呪い『輪廻転生』
・・・前世の記憶を無意識下で引き継ぐ。
たまに前世の事を夢で見る。
呪い『3年の転生』
・・・3年後、強制的に神の待つ部屋に送られる。
基本的にはワープでとぶ。
見ると、あまり恐い系では無かった。
「まぁ無害ですね」
「ならヒッヒッヒとか言うんじゃねぇよ!」
ビビって損した。
そして、話が終わってメフィストが部屋から出ていこうとする。
「では、ごゆっくりなさってください」
「うん、ありが...」
ありがとう、そう言おうとした途端、何かが爆発するような音がした。
「え!? な、何だ!? メフィスト...って居ないし!」
いつの間にか、どこかへ行ってしまっていた。
何が起きたんだろうか?
そう思って、俺は大部屋へと向かう。
読んで頂き、ありがとうございました。
2017年、7月8日土曜日、文章を一部変更、追加しました。