ソイツ
「・・・・・・おい、・・きろ、・・・・・・おい!」
「んん? ふわぁ~あ...」
俺は誰かに起こされる。
「やっと目を覚ましたな、数学2の授業は終わったぞ」
「んー、そうか」
確かに教室の中は騒がしい。 ...休み時間か。
「お前寝過ぎなんだよ、開始5分で机に突っ伏したろ」
「あはは、昨日は遅くまでゲームしてたからな」
「お前ってやつは...ほら、さっき配られたプリント写させてやるよ」
「マジか! 持つべきものは友だな!」
「大袈裟だなぁ」
キーンコーンカーンコーン
「おっとチャイムが鳴ったな。 プリント、後で返せよ」
「了解!」
「...寝るなよ」
「・・・」
「...おい」
「席につけよ~お前ら」
英語科目の先生が教室に入る。
「では、前の続きからだ。 教科書開いて準備しろ~」
「......グゥ」
俺は眠りにつく。
・・・・・・これが、この他愛ない会話が、この世界での最後の会話となった......。
『異世界』、その単語を聞くと何を想像するだろう。
チートスキルで無双プレイ? はたまたハーレムか?
そもそも『異世界』なんてあるのか?
出来ればあってほしい、異世界モノが好きな人はそう思うだろう。
でも現実的に考えるとそんなものはない、ただの内なる欲望を満たすため妄想でしかない。
俺もそう思っていた。
さっきまでは。
・・・何時間か経ち(経った気がする)俺は目を覚ました。
「んんー、...あれ?」
目を覚ますと、別になにも変わらない教室の中にいた...が、
「誰もいないな...移動教室か?」
回りを見渡すが、誰もいない。
「って事は! 好きな女子の机の中漁り放題ってか!」
俺は勢いよく立ち上がる。 ...が、
「いや、バレたら最後、俺の社会的立場が...」
すぐさま俺はモラルを取り戻して、教室の皆を探しに行くことにした。
俺は廊下を歩いていると妙な事に気づいた。
「ん?他の教室も誰もいないな?」
今日は集会でもやるのかなぁ?...と、思いながら歩いていると、
「おっ、誰かいるな。おーい、今日はなんか集会で...も...?」
自然と問い掛けるの止めた。
何故なら、前にいる何者かは制服を着ていなかった。
更に刃渡りがかなりあるナイフ...否、刀と呼ぶに相応しいものを持っていた。
俺はすぐに隠れようとする...が、
「・・・」
ソイツ...、目と口だけを出した帽子(確か目出し帽って名前だったような)をしていて顔が分からないが、恐らく体格的に男であろう者がこちらを向いていた。
「何なんだよ...あんた誰だ!」
「・・・」
答えない、しかし、ソイツはこちらへ走ってきた。
「うおわぁ! こ、こっち来んなよ!!」
俺は逃げようとするが、かなりのスピードで走ってくるので追い付かれた。
ソイツは刀を振り上げる。
咄嗟に頭を抱えてしゃがみこむ...が、無慈悲にも俺は首を切り落とされる。
俺の首が転がり、ソイツのほうを向く。
...ソイツは、笑っていたような、そんな気がする......。
読んで頂き、ありがとうございます。
2017年、7月8日土曜日、文章を一部変更しました。