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神様、ちょっと待ってください

……………………


 ──神様、ちょっと待ってください



 イブリスのための神殿建設開始──。


 総工費は東京新国立競技場クラス。敷地は東京ビッグサイトの3倍。


「うむ。まあ、及第点というところです」


 1年の建設期間で完成した自分の神殿を眺めてイブリスはそう評した。


 アーカムの中心であるアルハザード・パークは全て潰され、今では神殿と言うより要塞のような厳つく、威圧感のある巨大建造物が鎮座している。


 神殿の前にはこれまた巨大な──自由の女神並みのイブリス像が聳え立っており、神殿を訪問したものは、この巨大イブリス像を見上げることとなる。


 ちなみに、イブリスは自分の身体的特徴に無頓着なのか、特に胸のサイズを大きくしろというような要求もなく、巨大イブリス像も胸は大平原だった。


「なんか、建っちゃいましたね、神殿」


 もう事の成り行きについていけない広瀬はただただ神殿を見上げるだけ。


「さあ、イブリス様の信仰はこれから始まるのですよ、守護者君。神の座に向かうのです」

「はいはい、イブリス様」


 こうして、イブリスは堂々と神の座に返り咲いたのだった。


「おら! 供物は最低でも金貨20枚だぞ!」

「金がない奴は借りてでも払いな!」


 建設された神殿では相変わらずマルグリットの部下たちが、揃いの黒服赤ネクタイで前の職業と同じ事をし、やってくる信仰者たちから金を取り立てている。


「信仰とは暴力! 救いとは暴力! 気に入らない奴を拳で叩きのめせば救われる! 分かったか!」

「オオッ!」


 司祭であるマルグリットはあの扇情的な祭服で信仰者たちに説教をする。


 とは言っても、イブリス信仰の経典などが残っているわけではないので、大部分はマルグリットのオリジナルであり、彼女がイブリスと広瀬から感じたことをそのまま伝えている。


 ……まあ、それはもう酷い内容だが。


 そして、最後になるが神殿には当然神であるイブリスとその信仰の守護者である広瀬が暮らしている。


 激動の時代を乗り越えた──と言うより叩き潰したイブリスと広瀬は今は穏やかに過ごしていた。


「何か日本にいたときより楽な生活だなあ」


 衣食住は最高レベルで保障され、仕事はマルグリットたちに任せて何もせずともよく、アーカム政府が認めているので将来に関して何も心配しなくていい。


「守護者君、守護者君」

「何ですか、イブリス様」


 そんな生活を送っていた広瀬にイブリスがトトトとやってきて何事かを持ちかけてきた。


「今度はアーカムの外に信仰を広めるのです。ヨハネという邪神を崇拝している魔王を倒して、魔族たちにもイブリス様を崇めさせるのです。全世界でイブリス様を信仰させるのです」

「相変わらずの無茶振り!?」


 で、平穏な生活は1週間と経たずして終了した。


「さあ、出発するのです、守護者君」

「はあ。了解しました、イブリス様。でも、ちゃんと準備はしましょうね?」


 そして、また広瀬はイブリスの我が侭に振り回される生活へと戻った。




 戦争と武力を司る我が侭神であるイブリスと、世界最強の苦労人である広瀬は腕力・暴力・破壊力を振るって、今日も信仰を得るために働き続けるのであった。




……………………




一先ず完結です。お付き合いいただきありがとうございました。

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