はじまりは、ひとつの動画
始まりは、X(旧Twitter)のおすすめで流れてきたひとつの動画。
『男性ベリーダンサー初めて見た。』
そんな短いポストに引用されていたショート動画。
引用ポストは英語ではないアルファベットで書かれていて、私にはどこの国の人かも分からなかった。
黒い異国情緒溢れる衣装に山羊のような仮面を被った男性が、その筋肉質な身体から想像もできない滑らかな動きで舞っていた。
「……えっ、なにこれすごい」
ポストを開いてみたが、どうも画面録画した動画をアップしたもののようで、どこにもリンクがない。
ダンサーの名前も国籍も分からない。
元ポストのタイムラインに他の映像がないか辿って辿って、辿っているうちにうっかりホームに戻ってしまった。
時間が経っていたのでおすすめからも流されている。
見失った。
なんてことだ。
どこ行った、あのポスト。
暫くおすすめを遡って、そこから見つけることは諦めた。
しかし脳裏に焼きついたあの姿が忘れられない。
翌日私は、諦めることを諦めて、インターネットの大海へ乗り出すことに決めた。
『ベリーダンス 男性』
もしかして男性のベリーダンサーはめっちゃ少ないのでは。すぐ見つかるのでは。
そんな期待で検索結果をスクロールしていく。
違う。
違うなぁ……。
まぁ、あの人じゃなくても、他のダンサーでもいいか。
そう思っていくつか動画を開いたが、「とても上手いのであろうことは分かる」という、ファンの方に聞かれれば怒られそうな感想が湧く。
普段私はベリーダンスどころか、ダンス全般に馴染みがない。
だからあれが伝統的なベリーダンスなのかも分からない。――そんな私を一目で虜にしたのだから、あんなに印象的なんだから、きっと有名な人なのに。
せめて、……せめて国籍が分かれば……!
検索結果を表示する画面に、色とりどりの衣装の、たくさんのダンサーが現れては消える。
違う、違う、違う………
………
「――いた!!」
Xで見たものとは違う衣装。
山羊のお面もない。
だけど一目で分かった。彼だ。
Instagramのリンク。
ありがとうGoogle!!
Instagram。通称インスタ。
元々アプリは入れていたのでリンクを踏む。
アカウント名は『wubeile9/舞贝勒』。フォロワー数 1 7 万人。
ほらな! 大人気!!
謎の優越感に浸りながらスクロールする。
ショート動画がいっぱいだ!
やったね!
私はその日一日、ニコニコと彼のタイムラインを遡っていったのだった。
下部に私がTwitterで見かけた動画と同じ動画のYouTubeリンクを貼っておきます!




