プロローグ・1
今までの推理系の単発アイデアを上手に一つにした作者にとっての自慢の一作です。最後まで見て頂けると幸いです。
綺麗に整備された狭い一室。その部屋は騒々しい雰囲気に包まれている。
使われていない浴室。客船クルーが手洗い場の隅々を捜索するが何も見つかっていない。縦にも横にも長めに作られた机の下を覗いて見ても何もない。机の引き出しの中も何も無かった。その奥にも何も無い。ツインベッドを乱雑に取り扱い、布団の中やベッド下を探すも何もない。
その場に居合わせたのは五人。
まず一人の客船クルーがこんな情報を入手した。『不審者が不審物を持ち込んだ。その不審物はこの豪華客船を丸ごと吹き飛ばす程の威力ある爆弾が入っているとの情報。』嘘か誠かは分からないが、誠の可能性が捨てられないため手を打たなければならない。
もう一人の客船クルーも捜索に加わった。さらに、ボランティアで一人の男性乗客者が助けに来た。その後、探偵のルインと女性乗客者も助けに来た。
こうして五人で見つけ出そうとしているが一向に見つからない。五人入ればこの部屋は相当手狭だ。だのに見つからないとなれば、誤情報だったのかも知れない。
何も見つからないスイートルーム内側ツインの一室。「きっと不審物を持って部屋を出たんだ」と客船クルーの一人が推測した。
部屋には三人がまだ探している。それだけでも充分だろう。不審物が部屋の外にある可能性だってあるのだ。その可能性にも手を打たなければならない、と考えたのだ。ルインは他の場所を探しに進もうとした。
その時だった。
扉が外側へと大きく吹き飛んでいく。思わず彼は身構えるが扉は頭上を通り過ぎた。瞬く間に煙が覆い、その船に居合わせた人々の命を容易く消し去った。
船は瞬間的に木っ端微塵となり、周りの建物を巻き込んで多くの人々を巻き込んでいく。
月夜に映える儚い人々の命。
黒煙と月明かりが波打つ海に映っていた。