表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/22

第17話 白きマットを血に染めて

 勝負は1勝1敗のイーブン。泣いても笑っても次で勝敗が決まる。中庭に設けられた特設ステージ周囲に集まった生徒達を異様な雰囲気が包む。それもそのはず、初戦はビッグバスト美女対ド貧乳美少女、次戦はブルマとふんどし姿の変態マッスル(決着は美少女のパンツ)とそこらのスポーツ大会より圧倒的に楽しませてくれるからであった。そしていよいよ最終戦、どんな選手が出てどんな熱き戦いが繰り広げられるのか、否が応にも盛り上がっていた(ジークベルト王子もめっちゃ楽しんでます)。


「キョウコ、頼んだぞ」

「うん。任せて」


 カール君の言葉を受けて京子がリング前に進み出る。京子の頭の中にHALが語りかけて来た。


『キョウコ、聞こえる?』

「ん? 聞こえるよ。何かあった?」

『腕輪を見て。緑のLEDが点滅してるでしょ。押してみて』


 腕輪を見ると、確かに緑に点滅している部分がある。言われた通り押そうとしたが、何か嫌な予感がして直前で止めた。


『どうしたの? 早く押して』

「なんか、嫌な予感がするんだけど…」

『大丈夫だよ。戦いに赴くキョウコへの僕からのプレゼントだから』

「…別にいらない」

『そう言わないで。絶対に満足するよ』

「ほんとかなぁ…」


 とりあえず、HALの言葉を信じる事にして点滅している部分を押した。その瞬間、京子の身体が眩しく輝き、着用していた運動着が木っ端微塵こになって弾け飛んだ! 周囲のギャラリーが何事かとどよめくが、光が晴れた時、そのどよめきは男子生徒達の大きな歓声に代わった!


「うわぁ! なにコレ!?」


 京子は思わず「まいっちんぐ」のポーズを取った。それほどまでに今の姿は恥ずかしい。何せHALのプレゼントは、所謂「極小エロランジェリータイプビキニアーマー」だったからだ。紅く輝くメタルアーマーのブラもパンツも小さくて、乳首や股の割れ目をギリギリのサイズで隠している。HAL曰く、異世界の女戦士はこうでなくてはイカンとのこと。


「意味わからんわ! 恥ずかしいよ、これ!!」

『ブラとパンツは希少なタンタルやハフニウム等のレアメタルの化合物で造られた超高耐久耐熱合金「TH32」製で、この世界の武器や魔法じゃ傷ひとつ付けられないよ』

「防御してる面積が小さすぎて、逆に不安になるわよ!」

『確かにそうだね。まだまだ改良の余地ありか…』

「あんたね…」


『それよりもほら、早く行った行った』

「うう…。これじゃただの痴女だよ。女子生徒の視線は痛いし、男子生徒の視線は獣のようで怖いし、ジークベルト様までおっぱいガン見しているし…」


 羞恥心で悶え死にそうになり、逃げだしたくなった京子だったが、勝負は果たさなければならない。自分を信じて送り出してくれたカール君やリーシャのためにも必ず勝つと気合を入れた。


(超絶恥ずかしい…。いくらサイボーグボディったって、女の子の裸体を晒していい訳ないよ~。HALの馬鹿!)


「キョウコって、いいケツしてるな」(カール)

「おっぱい、グ~~ッド!」(ブルース)

「貧乳だったら最高なんだけどな~。ボクの射程外だよ」(ナルシス)

「えっちです♡」(エレン)


 一方、マリアンナは京子の身体を見てぷんすかと怒りを露わにする。なぜなら、彼女もまた、ド貧乳系お嬢様であり、特製パット2枚重ねで胸があるように見せているからであった。本人はこのことを秘密にしていたが、園芸部の子女たちにはバレバレである。


「あなた、なんちゅうカッコしてるんですの。バカにしてるのかしら。これ見よがしに胸を見せつけて…。妬ましいったら、ありゃしませんことよ!」

「いや…、なんというか、不可抗力っていうか、罠に嵌められたっていうか…。わたしだって、超絶に恥ずかしいんです!」

「おまけになんなんです? 頭の上に青い小鳥を乗せて。幸運の願掛けですか、全く…」

「えっ!? い、いつの間に…」


 今までどこに隠れていたのか、超高性能鳥型盗撮装置「ピーピング・トム」がどこからともなく現れて、京子の頭の上に乗っかって来たのだった。しかも、追い払ってもすぐにやってきて頭の上に止まる。頭に鳥を乗せたハレンチ姿の美少女に、集まった生徒達からくすくすと笑い声も聞こえて来た。見ると、クラスのみんなもジークベルト王子も笑っていて、アデリナなんかは指を差して大笑いしている。屈辱で真っ赤になった京子は、後でアデリナをフルパワーでぶん殴ろうと心に固く誓った。


「さあ、おふざけもここまで。さあ、最後の戦士、おいでませ!」

「うぬうぅ!」


 マリアンナが京子の対戦相手を呼んだ。大きな唸り声と共に集まった生徒を割って現れたのは…。


「せ、世紀末覇王!?」


 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 キョウコの前に姿を現したのは、身長約2.2m。角刈りで四角い顔、太い眉毛に眼光鋭い眼。真一文字に結ばれた口…。さらに、鍛え上げられた首はリーシャの胴体ほどもあり、裸の上半身も迫力満点で、胸板は厚く、腹の腹筋割れも凄まじい。体、腕、足とも全身是筋肉の塊といった様相である。さらに、腕の太さだけで京子の胴体ほどもありそうだ。そして何よりその姿は、京子が知っているあの世紀末アニメのアイツにクリソツだった。しかも、京子との身長差は60cmもあり、手のひらの大きさは3倍以上だ。


「ちょっと、これ反則でしょ!?」


 京子は抗議するが、マリアンナはどこ吹く風。上から目線で説明を始めた。


「ふふん。勝負の世界に反則もへったくれもないのですわ。ハレンチな色ボケ女に教えて差し上げましょう。この男の名は「モルス」。ドロイゼン帝国地下闘技場で100戦100勝98KOと無双無敗を誇った元チャンピオンで、「恐怖の破壊者」と呼ばれた男です。そのあまりの強さに地下闘技場を出禁になり、流れ流れてこの国に来たところで、我が侯爵家が仕事人として雇ったのです」


「勝つためにはなりふり構わないその姿。尊敬はするけど、わたし達との勝負にこんなの連れて来るなんて卑怯じゃないの!」

「ピピピッ(そーだそーだ。このド貧乳!)」(トム)

「うるさいのですわ! 私達貴族は平民なんかに負けたら一生の恥。絶対に負けられないのです。勝利こそ全てなのですわ!」


「さあ、勝負です。鳥頭のハレンチ女! モルス、秒で片付けてしまいなさい!!」

「承知!」


「絶対に負けないから!」

「ピーピピ、ピピピッ!」


 京子はフンスッと気合を入れ、トムが頭の上で羽ばたいた。どうやら応援をしているらしいが鬱陶しい事この上ない。モルスはゆったりとリング(机)に近づき、マットに右腕を置いた。屈んだモルスの姿は巌のような迫力があり、見守るクラスメイトや(暇な)生徒達はごくりと唾を飲んだ。


 対戦相手たる京子も前屈みになってマットに腕を置く。突き出されたお尻と下を向いた胸の谷間が色っぽく、女体に興味津々の思春期男子達を喜ばせた。


「我が相手がお前のような小娘とはな…。甘く見られたものだ。だが、どんな相手でも我は全力を尽くす。悪いがお前の勝は限りなくゼロだ。そして、勝って貴様のブラとパンツを剥ぎ取る!」

「なんで!?」  


 モルスの宣言に思春期男子達は大歓声を上げた。リーシャやエレンの声援は男子達の狂騒に飲み込まれて京子には届かない。だが、京子は背中で必死に声を上げるリーシャを感じており、絶対に勝たなければと心に誓う(ブルマをずり下げてパンツを晒したお詫びもある)。


「では両者、一旦力を抜いて。レディー…」


 審判役の女子生徒が握り合った2人の拳に手を添えた。


「くくっ、なんて細い腕だ。スタートと同時にへし折ってやる」

「そう簡単に行くかしらね。わたしを甘く見ない方がいいわよ」

「ピピッ!(珍棒までへし折れ!)」


「ゴーッ!」

「ふんヌーッ!」


 開始と同時にモルスは右腕に力を入れた。瞬時に勝負は決まる。マリアンナを始め、園芸部の誰もがそう思った。しかし、モルスの腕は開始時から1ミリも動いていない。京子の細腕ががっちりとモルスのパワーを受け止めていたのだ。


「な、なにィ! 馬鹿な!!」

「この程度なの」

「なんだと、小娘ぇ! フンヌゥウウウッ!!」 


 モルスは憤怒に顔を歪ませると、右腕に持てるパワーを注ぎ込んだ。過去の戦いでここまで必死になったことは無い。しかし、腕はじりっ、じりっと押し倒されて行く。そう、京子もまた試合開始と同時にコンデンサーの電力を全開放していたのだ。サイボーグのフルパワーは人間を遥かに凌駕する。いかにモルスが人間離れした力を持っていても、京子のパワーには足元にも及ばない。


「グヌゥウウウーーッ! わ、我の力はこんなものでは…ないッ!」

「うぬぅ…。お前と俺とでは致命的な違いがある。それは、欲望…執念だ。お前の体を全裸にするという欲望を前にして俺は無敵!」

「喰らえ我が秘奥義! 局部身体強化魔法ビッグ・バァアアン!!」


「1人で騒いで煩いわよ。てか、どこがビッグ・バンなの。腕のパワー変わんないみたいだけど」

「フッ…。オマエの裸体でオレのビッグな股間が…バン!…さ♡」

「死ね!」


 人間相手に絶対に使っちゃいけないフルパワー。しかし、京子は目の前の見た目拳王、実体はただのドスケベだった相手に、その全てを叩きつけた!


 バッゴォオオーーン!!

 ズドォドオオーーン!!


 とてもアームリスリングとは思えないような破壊音と衝撃でリングの机が真っ二つに裂け、モルスの巨大な体は右手の甲ごと激しく地面に叩きつけられ、爆発音とともに土煙が舞い上がった。京子の凄まじいパワーに周囲が「シン…」と静まり返る。暫くして土煙が風に飛ばされると、地面にクレーターが穿たれ、その底に白目をむいて気絶しているモルスの姿があった。


 なお、京子はモルスを押し込んでいるため、クレーターに上半身を突っ込み、臀部丸出しエロアーマーのカワイイお尻をグイと周囲の生徒達に突き出して、所謂エッチなバックスタイルとなっていた。さらに、起き上がる際に男を誘うように左右にふりふり動かしたため、尻側にいた男子生徒…主にカールやブルース等E組の男子達は、激しくリビドーを刺激されて股間をはち切れんばかりにいきり勃たせてしまい、ガチガチのイチモツを手で押さえながら前屈みになるのであった。そんな男子を軽蔑の眼差しで見つめるリーシャやミント等の真面目な女子生徒達。一方、アンナは不気味な笑いを浮かべながら暗黒大将軍アイギス像の股間に針を突き刺し、超腐女子のエレンは何かを想像して頬を赤らめながらクスクス笑っている。


 周囲がどう思っているか全く知らず、クレーターから身を起こして、スックと立ち上がった京子。右手人差し指を高々と掲げ、勝利のポーズを取る。指先にトムが止まってバサバサと羽ばたき、高い声で鳴いた。

 なお、ポーズを取った際、形の良いバストがグッと強調されて色っぽく、リビドーをMAXにした男子たちの屈む角度がさらに深くなり、リーシャ達の男子を見る視線が一層厳しくなる。


 そんな周囲の状況をさて置き、審判女子は京子に向かって勝者宣言をした。


「勝者、キョウコ・クリハラ! 結果、2対1で園芸同好会の勝利ーッ!」


 瞬間、前屈みになりながらカールが歓喜に打ち震え、大声で吼えた。


「ウォオオオオーーッ! やったぜ、キョウコ! 俺たちの勝利だーッ! うっ、いてて…。竿が、竿が暴れやがる…」


 京子は勝利のポーズのまま、優越の表情でマリアンナを見下ろす。当の彼女は敗北に打ちひしがれ、がっくりと膝をついて項垂れていた。京子は一緒に戦ったリーシャやガンテツ君を始め、応援してくれたクラスメイト達が待つ場所に歩き出そうとした。

 京子が笑顔で皆に向かって手を振ると、ピーピング・トムが離れてサッと背中に回り、ビキニアーマーブラの接続部分にあるピンホールボタンをくちばしで押した。その瞬間、アーマーブラがばさりと地面に落ち、京子のカワイイおっぱいが丸出しになった!


「えっ!?」


 一瞬京子の時間が止まる。次いで、彼女の正面にいたカールやブルース、何故かジークベルトらが拳を振り上げて「ナイス、おっぱい!」と大歓声を上げた。


「うわぁ! きゃあああっ!!」


 慌てて腕で胸を隠すものの時すでに遅し、京子の84センチCカップの美乳と桜色の乳首は漢どもの目にしっかりと焼き付けられていたのだった。


「なんてことするのよー! このバカ鳥!! もう、恥ずかしぃよぉ~」


 ラストにえっちなハプニングはあったものの、園芸同好会の存続をかけた死合いは激しい戦いの末に幕を閉じた。園芸同好会は園芸部を退け、花壇を守ったと共に、今後の活動も続けることができたのだった。しかし、その裏でHALがこっそりほくそ笑んでいたのを京子は知らない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ