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#4.双子VS日野じぃのようです。

────……。


「はっ!寝てた!?いつから……!?」


「おはようカラスくん♡、ちょうど良かったわ〜、今から弟者達(陽と陰)と煌太さんが戦うらしいの、様子を見に行ってくれるかしら〜。」


「えっ、あ、はい!」


ボクはカラス・クラネル。ちょっと人より虫さんが好きで、皆からは観察眼がすごい、と褒められるだけの普通の子供だ。

目覚めて突然だけれど、陽さんと陰さん、そして日野さんが戦うらしい。

僕は急いで甲板に向かった。


「……始まって、……ないね。」


「おーカラス、起きた?だいじょぶ?試合開始のゴングを頼もうと思うんだが、できそう?」


「船長がすればいいんじゃ……、まぁ、うん、できるよ。まかせて!」


「行くぞジジィコラ」

「精神攻撃は良くないな」


「ジジィ……。」


「効いてる効いてる。」

「可哀想に。」


「はいはい、まだ始まってないからな。んじゃカラスくんよろしく。」


「えっ、あっ、はい。……それじゃあ、位置について、よーい……、始め!」


「ポータルテイク>ツイン・ポータル」

「ミラージュテイク」


まず仕掛けたのは陽さん達だった。陽さんは入口のポータルを2つ自分のすぐ側に作りだし、そこに拳を勢いよく入れる。出口のポータルは日野さんの頭の右側と、左脇腹の近くに生成され、そこから拳が飛び出してくる。日野さんはどうやったのか、それに反応し、前方にステップを踏んで回避する。


「それ、敵になると本当に厄介ですね……。」


なんて言いながら、次は陰さんが作ったミラージュテイクの分身体、全部で8体の攻撃を難なく捌いていく。左足を軸に、右足だけを動かし身体の軸をずらして攻撃をかわし、手に蒼炎を纏いながら一体ずつ確実に分身体を倒していく。


「やっぱ強えなぁじいさんよぉ!」

「奇襲も、数でのゴリ押しも通じないか。」


陽さんと陰さんが少し笑いながらそう口に出す。

日野さんは、じぃさんと言われてまゆがしょんぼりしているのが見えた。


「蒼炎脚……!」


日野さんのスキル、蒼炎脚。蒼炎を足にまとい高速で移動する技。僕が瞬きした時には、もうその場にはいなかった。


「あ?」

「っ、うしr」


「遅いですよ」


一瞬のうちに背後に回った日野さんは、その蒼炎を纏ったままの足で、陰さんを狙う。


「ぬがっ!」


「弟者さぁん!?」


「よそ見は禁物ですよ」


陰さんの背中にもろに蹴りが入り、陰さんが吹き飛ばされる。それを見て驚いていた陽さんが、今度は自分の番だと気づき攻撃に備えガードを構える。

が、蒼炎を纏った蹴りはガードを貫通して炎ダメージを与える。


「あっぢ!」


「(じぃさんと呼んだ恨み……)まだまだ!」


日野さんがさらに仕掛ける、渾身の右ストレートを陽さんの顔面に向け。

その瞬間、陽さんがポータルを発動、顔面に飛んでくる日野さんの拳の前に入口を、日野さんの鳩尾の前に出口のポータルを作り、カウンターを狙った。


「読めてますよ、なのでこれはフェイントです」


ポータルを潜りかけた右ストレートは、自身のみぞおちに届く前にひっこめられ、代わりに陽さんのボディに重いフックが入る。


これは綺麗に決まった、そう思ったのも束の間、ボディを入れられたのは、いつ発動したのか、先程蹴りで吹き飛ばされた陰さんの作った分身体だった。

寸前のところで、陰さんのスキル、『スイッチテイク』が発動したのだろう。

スイッチテイクは任意の物体と物体の居場所を瞬時に入れ替えるスキル。


僕は見ていた。みんなが褒めてくれるこの観察眼で。

最初に陰さんが発動した『ミラージュテイク』の分身体が、一体だけ物陰に隠れていたのを。そして、陽さんが攻撃されそうになった瞬間、スイッチテイクを発動し、ギリギリのところで分身体と入れ替え回避が成功したのだ。


「……厄介ですね、やはり。模擬戦の最中ですが、あなた達が味方でよかった、と。つくづく思いますね。」


「そりゃどうも、こっちゃ模擬戦とは言えあんたを敵に回したかねーよ。」

「船長のマナ酔い克服とはいえ、強いな。」


……そうか、これは船長が3人分のスキルを管理しているんだ、マナ酔い対策のために。今の船長は……、


「ぅぉえー!!!吐きそう!!!」


……辛そうだ、止めるべきかな……。


「船長さん!一旦休憩にしたらどうかな……!適度にやればいいと思うし……。」


「ほんとそれな、よし、きゅうk」


その時だった。


「喧嘩はアカンでー!!!」


「あ!?」


────なんだ、喧嘩?これは模擬戦……、否、マナ酔い克服のための訓練だ。というかこの声と訛りは……。


「はあああ!!」


「おんどれええええ!」


「ちょ!そこ!止まれ!」


やばい、日野じぃと陽が白熱してる。そこに飛び込む、黒い虎と鶏の刺繍の入った革ジャンを羽織る男、クロスカウンターが決まりそうな日野じぃと陽の拳の間に、その頭が割り込む。


「ぷぎゃ!!」


「えっ」


「あ?」

「……黒虎、殿?」


「シュルも居るんだなこれが。」


「シュルたん!」

「2人とも、遠征から戻ってこれたのか。」


「うおおおお!!シュルたんだー!んじゃあいつ黒虎か!!」


SR、シュル・レアリスム、通称シュルと、

SSR、黒虎、黒い虎と書いてこっこ、と読むあの男。


そうか、冷静に考えれば、遠征任務に行って連絡が取れないとはいえ、戻ってくることは出来るのだ。なるほど。それにしても


「シュルたんかぁいいねええええええ」


「おい誰だこいつ、」


「船長だよ。」

「兄者が召喚したんだ。」


「黒虎さん!黒虎さん!」


「……いだい……。喧嘩は……あかん……。」


「これ喧嘩じゃないです!訓練のようなものです!主に船長の!」


「!?、船長!?船長来たんか!?どこや!」

「あそこでシュルさんをローアングルから眺めてます。陽さんと一緒に。」


シュル、この子は150cm代の身長でありながら到底1〇歳、中学生とは思えないシロモノをその胸に宿し、たゆんたゆんと揺らしながら、さらにはへそ出しルックというロリ巨乳きゃらである。

そしてここで補足だ、この俺、財前ガクトは、生粋のロリコンである!


俺もな!


という顔で陽もローアングルからシュルを眺めていた。そう、陽というキャラもまた、生粋のロリコンである。故に俺は陽というキャラクターにとてつもないシンパシーを感じている。多分お互いに。


「なんでお前が召喚されてんだ、米食え。」

「食べたいなぁ!」

「……ほらよ。」


ちなみにこのシュルというキャラはバッファー、つまり味方の強化を得意とするキャラである。そして異質なのが、重度のお米依存症ということ。お米信者と言ってもいい。ゲーム内設定では、シュルを怒らせたら、とりあえずお米を要求すれば同じ信者と認め大抵の事は許してくれるというエピソードがある。


そんなこんなで差し出されたおにぎり。美味い。なんだか実家を思い出す。


マナ酔いにも効果があるのか、さっきまで頭がクラクラしていたものも、自然と安定してきた。


「しかし、これは、やはり……、きついな……。」

「喧嘩じゃないなら何してたん?」

「あぁ、黒虎(こっこ)ちゃん、マナ酔い克服のための模擬戦だよ。双子と日野じぃの戦闘に、俺がコマンドで指示を出す。それだけ。めっちゃ気分悪いけど。マナ酔いで。」

「ほーん、……。……あぁ、だから遠征先で急にスキル使えんくなったんか!」

「なるほどなこのクソ整備士がよォ。」


「痛い。もっと踏んで。」

「……兄者……。」


兄のあられも無い姿と態度に言葉を失う陰。


「黒虎さん!シュルさん!おかえりなさい!それより船長、早く心結さんのところに行った方が……」


カラスの言う通りだ。早くこの最悪な二日酔いみたいな感覚を打ち消してもらわねば。


────『ファボテイク』


ピンク色のオーラが俺の頭を覆い尽くす。

現在心結のスキルのひとつ、『ファボテイク』で頭の治療をしてもらっている。……悪口では無い。そんな自虐精神俺には無い。


「……ん、だいぶよくなった。」

「良かったわ〜♡訓練はどうだったかしら?」

「正直動きが早すぎてコマンドが追いつかなかったね。」

「慣れるしかないですね、そればかりは。どうぞ、ミルクティーです。」

「ありがと日野じぃ。シュルたんと黒虎ちゃんは?」

「自室でお休みになられていますよ。遠征帰りだったので。」

「そっか。仲間もだいぶ帰ってきたし、マナ酔いもだいぶ慣れてきたと信じたいし、そろそろ他のみんなも帰ってこないかな。」

「まぁ、黒虎さんたちのお陰で気づけましたが、当然自力で帰る方法もありますからね。」

「ね、ていうか日野じぃも休みなよ。……ん?俺ここに来て気絶意外で睡眠とってなくない?」

「あら、そう言われてみればそうね〜♡どうする?今夜はここでお姉さんと一緒に寝ちゃったり♡」

「多分理性が飛ぶのでやめておきます。後あなたに手出すとあとが怖いんで。」

「んも〜、慎重なのね♡」


「……、ああ、そう考えるとどっと疲れてきた。寝よ。日野じぃ、部屋まで案内してくれる?」

「かしこまりました、それでは心結さん、また。」

「もう行っちゃうのね〜、おやすみなさい♡」


そうして、なんだか一気に登場人物が増えた今回の模擬戦は、まぁ、ひとまず成功に終わったと言えるだろう。瞼が重い。いいや、今日はこのまま寝てしまおう。


日野じぃに案内されたのは豪華な装飾がされた船長室。寝具も立派なものである。ふかふかのベッドで眠るのは、この世界では初の体験かもしれない。


……心結の膝枕で寝るのも、悪くなかったな。

けど心結にはあの人(・・・)が居るからな……。

殺されたくは……、ない……。



おやすみ世界……。



────「……ん?」

「どしたァ、翡翠(ひすい)の姉御。」

「……、いや、なにもありんせんぇ。……さて、スキルが使えないのはまぁ良しとして、連絡も付かず、往復用の小型飛行船までもどこかの坊が壊してくれやんした。どうしたもんでうなぁ。」

「だから悪かったって!敵が船狙うなんて思わねえだろォ!?俺も姉御も範囲攻撃しか持ってねぇんだ、大破刺せられるよマシだろうよ!」

「ビート坊、偉くなりやんしたなぁ、わちきに口答えでありんすか……」

「本当に申し訳ございませんでしたァ」



────さて、この2人はみんなと合流できるのか、乞うご期待。

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