第三話 「運命守護者との出会い」
運命を操作することの責任と恐怖に直面したロイドは、それでもなお、自分の力を試すことをやめることができなかった。彼は運命を操作することで、何か大きな変化を起こせるかもしれないと感じ始めていた。
王都の片隅にある貧困街。そこに住む人々は、日々の生活に苦しみ、何の希望もない運命を辿っていた。ロイドは、この街の運命を少しでも変えることができれば、自分の力が本当に意味のあるものだと証明できると思った。
「ここで試してみるか……」
ロイドは、運命の糸を感じ取りながら、貧困街でひとりの少年に目を留めた。彼は今にも盗みを働こうとしている、まだ若い少年だった。その運命の糸は、彼が盗みを成功させた後、捕らえられ、二度と日の目を見ないという未来へと繋がっていた。
「この運命を……変えられるか?」
ロイドはその少年の運命を操作し、盗みを働く前に、彼がある決断をするように仕向けた。それは、盗みではなく、別の方法で生計を立てるための選択肢を彼の前に示すというものだった。ロイドは、自分が少年の運命を変えたことで、彼が幸せな未来を手にすることを期待していた。
しかし、その夜、ロイドの前に突然現れたのは、黒いフードをかぶった謎の人物だった。
「お前……運命を操作しているな?」
低く響く声が、ロイドの心臓を締め付けた。振り向くと、そこには不気味なほど静かな佇まいの男が立っていた。彼の存在感は圧倒的で、ロイドは言葉を失った。
「……お前は?」
「我は、運命守護者。運命を守るために存在している」
ロイドは驚愕した。運命守護者? そんな存在がこの世界にいるのか? 男の鋭い眼差しは、まるでロイドの心の中を見透かすかのように彼を見つめていた。
「運命は、操作されるべきではない。お前が行っていることは、この世界のバランスを崩している。放っておけば、世界全体が破綻するだろう」
「な……なんだって?」
男の言葉は信じられないものだった。ロイドはただ、少年の運命を少しだけ変えただけだ。どうしてそれが、世界にそんな影響を与えるというのか?
「お前の力は、予想以上に危険だ。運命というのは、一度操作されると、その結果がどこまで広がるか予測できない。お前は、その重みを理解していない」
運命守護者の冷たい声が響く。ロイドはその言葉に反論しようとしたが、何も言えなかった。確かに、彼は自分の力をまだ完全に理解していなかったのだ。
「……俺は、ただ……誰かを助けたかったんだ」
ロイドの言葉は虚しく空を舞った。運命守護者は一瞬の静寂を挟んだ後、ロイドに鋭い警告を与えた。
「これ以上、運命を操作することは許さない。お前がその力を放棄しなければ、我々はお前を排除する」
そう言い放つと、運命守護者はその場から姿を消した。ロイドはその場に立ち尽くし、冷たい夜風に打たれながら、自分が手にした力の本当の意味を改めて考え始めた。
「……運命を操作することが、こんなに危険なことだったなんて……」
しかし、ロイドはまだ知らなかった。彼の運命操作は、すでに世界に大きな影響を及ぼし始めていたのだ。