蠱毒
これはフィクションです。
他の社会実験などとは無関係なことを了承した上でご覧ください。
現代にてとある社会実験が行われようとしていた。
全国各地から一定条件に当てはまる人間を一月50万円で100人集められた。
条件は四つ……。
一つ、アニメや漫画、ゲームが好きなこと。
二つ、上記の趣味を1日4時間以上毎日費やしてること。
三つ、上記趣味で匿名性のSNS等のコミュニティに参加し毎日何かしら発言していること。
四つ、過去5年以内、友好関係を継続させてる人数が5人以下であること。
以上である。
娯楽に溢れた現代において交流がインターネットに置き換わる中、上記を満たす者は探せばすぐに見つかった。
果たして集められた人達は郊外にある建物内の大広間に集められる。
この場で1ヶ月生活をすることを条件に……。
無論、最低限のプライバシーは保全される。
とは言ってもそれは着替え時や身体を綺麗にする時だけ対角に用意されたプライバシールームで済ませるだけの最低限の保証であった。
それ以外の時間、食べる時も寝る時も基本的に同じ空間で過ごしてもらう。
犯罪が起きないようにプライバシールーム以外の場所には監視カメラが仕掛けられておりプライバシールームの出入り口に同性の警備員が配置されており定期的にプライバシールームの巡回もしてもらう。
そして公共スペースで行われるのは趣味についての語り合いである。
参加者は孤独を避けるために仲間を探した。
漫画やアニメはジャンルでそれぞれグループができゲームはゲームでそれぞれグループができた。
ここまでは当初想定された動きでもある。
初日、2日目と特に変わった様子はなく集団生活が行われた。
しかし3日目、事件が起きた。
なんてことはない女性同士の暴力沙汰であった。
だがそれしきのことで多額のお金が投入されている社会実験は止められない。
なんとか落ち着きを見せるもののグループはより細かく分かれ20ものグループが出来上がっていた。
5日目、一部グループ同士の合併が見られた。
正確にいうと一度解散されたグループのメンバーが別のグループを作りそこに集まりだしたのだ。
流石に4日間、似たようなグループで似たような内容を話し続けるのも無理があったようだ。
大半のグループはそのままだったが合併を経て20あったグループは14へ減る結果となった。
7日目、さらなるグループの合併が進んでいた。
話す内容が似通って飽きた人から抜けていくグループが散見し始め、大きい集団に惹かれるように集まりだした。
大きい集団が3つ、小さい集団が7つ計10のグループが出来上がった。
10日目、またしても事件が起きる。
またまた暴力沙汰であった。
しかも今回は男女複数人による乱闘騒ぎとなっていた。
理性を保ったグループメンバーがなんとか割って入り騒動は鎮火された。
15日目、細かなグループの分解と合併が繰り返されここ3日ほど毎日、複数のグループで暴力沙汰がみられるようになった。
まるで1人が侵した狂気が伝染したかのようで興味深い結果である。
20日目、ついに孤立者が散見し始めた。
今の今まで会話は少なくともなんだかんだでグループに混ざろうとする人は居たが孤立を選ぶ者は現れなかった。
だが日々止まぬ暴力沙汰に嫌気がさしたのだろう。
孤立を選ぶ者が現れだしたのだ。現在15名が孤立を選びどのグループからも遠ざかろうという反応もみられた。
それは食事や就寝が特に顕著で、食べる速度、寝る際に他人と空ける感覚が目に見えて違ったのだ。
とても面白い結果である。
25日目、孤立者が爆増していた。
22日目を境に孤立者が急増しそれと同時に暴力沙汰が減っていった。
孤立を選んだ者は53名、過半数を超えたのだ。
孤立者同士での会話も見られるがグループではなくその場限りの一対一、数分喋ったら解散する程度の関係性である。
30日目、前日時点で孤立者のみになっていた。
個別での会話はチラホラ見受けられるが各々が距離を取り、警戒し合い、監視し合う、そんな関係性が見てとれる。
明日の朝を迎えるとこの社会実験は解消となる。
それに相応しい最終日と言えるだろう。
31日目、全員にアンケート提出を済ませ、一部の人には弁護士を通じて慰謝料込みの示談を行い実験は終了となった。
一部のオタクが持っていた攻撃性は限られた空間内では伝染するかのような光景が見られて非常に有意義な知見が得られそうでワクワクしている。
これから数日間は監視カメラの録画との睨めっことアンケート内容を元にした研究が続くだろう。
社会的孤独が顕著な日本において行われた今回の実験、グループの変遷を経て孤独を選ぶ人間が増える結果になったのは偶然ではないのだろう。
社会実験・現代版蠱毒より
思いつき100%で書きました。
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