帰りのバス停で
香は竹原家で胃袋がパンクするほどの焼肉をご馳走になった。竹原家の人たちといろいろ話ができ、楽しかった。
今日はすっかり帰るのが遅くなってしまった。
香は満腹になったお腹を抱え「じゃあ、今日はすっかりお世話になりました。もう遅いので帰ります」と言った。また肥ったかな?と思った。
「気を付けてね。隆、バス停までおくってやんなさい」
「わかった」
香と隆は並んで歩き、バス停のベンチに座った。
「いやあ、今日は本当に楽しかったなぁ~、お前がいてくれたお陰でみんな喜んでいたよ」
「あたしも楽しかったわ、すっかりご馳走になっちゃった」
香は大きく深呼吸した。
「竹原君、わたし一つ嘘をついてた事があるの。私のお父さん、会社員だって言ってたでしょ、本当はうち障害年金で暮らしているの」
隆は頷いた。
「うん、なんとかくわかっていたよ」
「うちも竹原君ちと同じで両親も兄も障害者なの、この事は他の人にには内緒にしててね!」
隆はベンチに反り返り、足を組んだ。
「兄ちゃんは働いているのか?」
「兄は物流会社に勤めているの」
「そうなのか、うちの姉ちゃんはA型作業所に行ってるんだ」
A型作業所とは一般企業と作業所の中間のようなところである。
「おれも将来的にはどうなるかわらないけど、せめて就職はしたいな~」
そう言ったところでバスが来た。
「じゃあね、竹原君」
「じゃあな、また明日作業所で会おう」
お互い手を振りながら別れた。