表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
障害者一家  作者: 船五郎
1/10

香の就職

 「おい、香、そんなお菓子ばっか食ってるんじゃないぞ」

 「うるさいな~‼なによ、パパだってズボンのチャックが開いて、だらしない」

 親子の日常会話だった。原田一家は精神科デイケアでいつもこういった一悶着をおこすのだ。

 原田一家は全員が精神障碍者だ。父の隆一と母の彩子は同じ精神科の入院患者だった。入院中に知り合って結婚し、お互いの障害年金と生活保護で暮らしていた。やがて長男の久志と長女の香が生まれ、この二人の子供にも病気が遺伝する形となった。

 久志は高校時代に統合失調症を発症し、高校を中退して精神科に入院してしまった。6年間入院していたが、退院後は福祉作業所に通い、その後就職して、現在は物流会社で働いている。

 香りも中学生の頃に発症し、中学卒業後は作業所を転々とし、現在は両親と同じデイケアに通っている。

 この家族は、久志以外はダラダラと生活し、まるまるとよく太っていた。今日も香は病院の売店でスナック菓子を買ってきてボリボリと食べていた。デイケアの利用者たちはまたあの親子が何か言いあっている、と呟いた。

 「パパ、最近タバコの量が多いんじゃないの?いい加減やめたら!ママも何か言ってやってよ」

 「お前こそもうちょっと痩せろよ、そんなんじゃ誰も嫁に貰ってくれないぞ!」

 デイケアのスタッフはまあまあ、と言って「お二人とも仲の良い親子ですね、きっと仲がいいからそんなことも言い合えるんでしょうね。お母さんもそう思うでしょ?」

 彩子は苦笑した。

 その日の原田一家の夕食は今日もホットモットで買った弁当だった。

 食事が終わると隆一はタバコをふかせて言った。

 「香、お前もいい加減働いたらどうだ?いつまでもくっちゃねくっちゃねの生活じゃみっともないぞ。」

 香りはブーっとおならをしてから答えた。「そのうち働くわよ」と言った。

 「なんだその言いぐさは」

 そうすると久志が仕事から帰って来た。

 「久志も弁当食べるかい?」彩子が言った。

 「飯?もう食ってきた」

 「おい久志、お前いくら稼いでいるんだ?」

 久志はコーラを飲みながら言った。

 「パート従業員だからせいぜい10万前後だよ」

 「聞いたか香、お前もそれくらい稼いでみろ」

 「わたしお兄ちゃんみたいに働けないよ⁉せいぜい作業所には行ってもいいかな?」

 「じゃあ早速明日中川さんに話してみろ」

 中川さんとはデイケアの女性ソーシャルワーカーだ。

 「デイケアもなんか退屈だし、作業所にいってみようかなぁ~」

 香りは大きな欠伸をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ