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新兵器

 翌日、ジョシュアとセシルが並んでアデルの部屋の前に立ち、ドアを軽くノックする。


「アデル。俺だ。ジョシュアだ」


「ああ、開いてるから入ってくれ」


 中からアデルの声が聞こえ、中に入っていく。


 中に入ると部屋の散らかり方に二人は唖然とした。

 床には何やら難しい数式がかかれた紙が足の踏み場も無いほど散乱し、手前にあるテーブルには飲んだ後の空き缶が所狭しと並んでいる。


 その部屋の奥で背を向け、前傾姿勢でうずくまっている男こそがアデルである。


「ちょっとアデル。あんたが連れて来いって言うからジョシュア連れて来たんだから顔ぐらいこっち向けなさいよ」


「ああ、セシルも来てたのか。今ちょっと手が離せないんだ、そこら辺適当に座ってくれ」


 セシルが背を向けたままのアデルに文句を言うがアデルは微動だにせず、背を向けたままセシルと会話を進める。


「来ちゃ悪いかしら!? だいたい何処に座れっての!? ソファや椅子にはあんたが脱ぎ散らかした服や荷物で溢れてるんですけど!!」


「いやまぁ落ち着けって。アデルも忙しそうだから仕方ないだろ。ほらそこのソファの所、服寄せたら座れそうじゃないか」


 アデルの適当な態度や言動にイライラをつのらせるセシルをジョシュアが間に入りなんとかなだめていた。


 暫くジョシュアとセシルが座って大人しく待っていると、作業を終えたアデルがようやく身体を二人に向けた。


「いやぁわざわざ来てもらって悪いな。今微調整してたんだけど、早速この『改造バトルスーツ』を試してみたいからちょっと場所を変えよう」


 そう言って三人はアデルの部屋を後にし、屋外にある演習場へとやって来た。


「ちょっとアデル。許可取ってるの? 勝手な事したら怒られるわよ」


「ああ、勿論取ってある。端の方なら使っていいそうだ。さぁジョシュア。早速このバトルスーツを着てみてくれ」


 そう言ってアデルから渡されたバトルスーツは普通の物にリュックの様な物を背負った形になっていた。


「背中のリュックみたいな物はなんだ? それに少し重くないか?」


 アデルから渡されたバトルスーツを装着し、少し困惑の表情を見せながらジョシュアは笑っていた。


「まぁ試作品だから形は勘弁してくれ。簡単に説明すると、そのリュックみたいな所に魔力を込めるようにした。簡易的だがソルジャーでも魔法が使えるようにしたんだ」


 ジョシュアとセシルが顔を見合わせ、二人揃って目を見開き驚きの表情を見せていた。


「……え、何言ってるんだ!? 魔法を使える!?……俺が!?」


 いまだアデルの言ってる事が信じられないジョシュアが身振り手振りを加えた大きな反応で聞き返す。


「そう、お前が魔法を使えるようにしてみたんだ。そんな上級魔法とかは無理だけど、まぁ試した方が早いだろ。……セシル手伝ってくれないか」


 そう言ってアデルがジョシュアの後で手招きするのでセシルがトコトコと歩み寄る。


「ここをこうすると開くから、この部分に魔力を込めてほしいんだ」


 アデルがスーツのリュックの様な部分を開くと中から水晶の様な物が姿を現した。


「何これ? クリスタルみたいじゃん。これに魔力込めるの?」


「そう。元来クリスタルには魔力を宿したりする物もある。そういった特殊なクリスタルの力を応用させてもらってるのさ」


 アデルが得意気に二人に解説を始めた。


「凄い技術じゃん。アデルが開発したの?」


「いや、元々はラフィン共和国から流れて来た技術だよ。先の戦争でラフィンは既に実用化してたんだ」


「ああ、なんか戦争末期にラフィン側にやたらとウィザードがいたのってその技術のおかげ?」


 セシルがアデルと会話を進めながらもバトルスーツに魔力を込めていた。

 やがて魔力も込め終わり、準備は整う。


「さぁ準備は出来た。ジョシュア、セシルは風系の魔法が得意だから今お前が使えるのも風系になってくるはずだ。早速何か風系の魔法を……」

「いやいや、ちょっと待ってくれ。魔法ってどうやって使うんだ?いきなりやれって言われてもどうしたらいいのかわからないんだが……」


 アデルが目を輝かせながらジョシュアに促すが、ジョシュアはむしろ戸惑いを隠せないでいた。


 確かに無理もなかった。

 元から魔法が使えた訳でもないジョシュアからしてみれば、何の説明も無いままに、『さぁ魔法を』と言われても何処にどう力を込めれば魔法が使えるのかさっぱりわかる筈がなかったのだ。

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