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初陣②

 シエラを放っておく訳にもいかなくなったジョシュアはひとまずシエラを連れて移動する事にする。


「発信機が厄介だな。何処に隠れてもバレちまう。奴ら人狩り(マンハント)でもして楽しんでるつもりか」


 そう言ってジョシュアは不快感を露わにし、岩陰から身を乗り出そうとした時、風を切る音が迫ってきた。


「ロ、ロケット弾か!?」


 そう言ってジョシュアは即座に身をひるがえしシエラを抱きかかえる。


 次の瞬間、ジョシュア達が隠れていた岩陰にロケット弾が着弾し轟音が響きわたる。

 高温の爆風と共に岩は破片となり飛び散り、辺りを砂埃が覆う。


「はっはー。どうだ? やったか?」


 男達の下卑た笑いが辺りに響いていた。


「……いや、発信機の反応が凄い速さで遠ざかって行くぞ。逃げ切ってやがる!」

「はっはっは。マジかよ!?」


 男達はすぐに車を発進させ、新たな玩具を与えられた子供のようにテンションを上げ、ジョシュア達の後を追った。


「クソ! おい! ピソラ、ゴルドラ、オルソン。お前ら何やってる!? 四輪の方は任せたはずだろ?」


 ジョシュアが通信機で部下達に向かって呼びかける。


「……こちらオルソン。必死に追ってはいますが俺達みたいな普通のソルジャータイプは隊長みたいに爆走してる車両に簡単に追いついたり出来ないですよ。寧ろそのまま真っ直ぐ走って来てください。隊長の後を追っている車両を狙撃しますから」


「おい! 俺を囮に使う気か!? こっちは人一人抱えて走ってるんだぞ!!」


 元来真面目な性格のせいか、ジョシュアは文句を言いながらも部下の指示通り、相手車両を引き付けつつシエラを抱えたまま真っ直ぐ走り続けた。


「……あの人、人抱えてるって誰抱えてるんだ?」

「さぁ捕虜か? それとも何処かでナンパでもしてきたんじゃないか?」


 部下達は身を隠しながらスコープを覗き、くだらないジョークを交わしていた。


「さぁ、そろそろ来たぞ。これでミスったら流石に怒られるな」


 そう言ってオルソンがスコープ越しに運転手の頭に狙いを付ける。


「撃て!」


 合図と共にオルソンが冷静に引き金を引くと、次の瞬間、運転していた男の頭から血飛沫が飛び、今まで自分が握っていたハンドルに力無く前傾に倒れかかった。


 更にピソラとゴルドラが車両のタイヤを撃ち抜き、運転手と駆動輪を失った車両はバランスも失い激しく横転した。


「く……一体何が起こった?」


 横転した車両から男が這い出て周りに目をやる。


 この時既に、オルソン、ピソラ、ゴルドラの三名は十分に狙撃出来る距離まで詰め、ジョシュアの指示を待っていた。


「よお、ハンター気分で追い回してたんだろうが残念だったな。お前らは誰だ? 目的は何だ? いや、まずはこの子のネックレスを解除してもらうか」


 ジョシュアは男に銃口を向けるとシエラのネックレスを解除するように冷静に詰め寄った。


「……ははは、残念ながらそのネックレスの解除方法は知らねぇんだ。他を当たってくれよ」


 男は舌を出し、ジョシュアを挑発するように嘲笑を浮かべる。


「……そうか、仕方ない」


 そう言うとジョシュアは車内で僅かに息のある男に向かって発砲した。


「他を当たろうとしたがもう何も聞けそうもない。さぁ解除しろ」


 再び男に銃口を向け強い口調で命令する。


「ほ、本当に知らねぇんだよ。元々解除する気もないんだからしょうがねぇだろ」


「ああ、そうかい。じゃあな」


 そう言うとジョシュアは男を殴りつけた。

 ジョシュアの拳を顔面にまともに受けた男は苦悶の表情を浮かべ地面でのたうち回っていた。


「隊長。それ以上は流石に捕虜条約に抵触してしまいます」

「ああ、わかってるよ」


 オルソンが駆け寄り声を掛けたがジョシュアも片手で頭を掻きながらもう一方の手を上げ応じる。


「え? これって0になったら解除されるんじゃないんですか?」


 一連のやり取りを見ていたシエラが少し身を震わせながらジョシュアに問いかける。

 その少し怯えた表情から、自分が騙されていた事を薄々気付いているようだった。


「いいかい? 冷静に聞いてくれ。その数字が0になったら解除されるんじゃなくて恐らく爆発する。だが俺が今から解除を試みる。君は信じて大人しく座っていてくれないか」


 そう言ってジョシュアはシエラの頭を撫でる様に触るとシエラは静かに頷いた。


 ネックレスの数字は既に残り九十秒となっていた。


 目の前にいる褐色の肌をした華奢な女性は恐らく自分と同年代であろう。

 自分を信じ恐怖心を押し殺して強ばった笑顔を浮かべる目の前の女性を死なせる訳にはいかなかった。


『クソ。そうは言ってもどうすればいい? 何処かに解除できるボタンとか無いのか?』


「隊長、ちょっとどいてください」


 ジョシュアがネックレスを触りながら困惑しているとピソラが割って入ってきた。


「……なるほど……このタイプなら恐らく」


 ピソラが少し観察した後、慣れた手つきでネックレスをいじるとカバーが外れ、ハーネスに繋がれたいくつものコードが姿を現した。


「赤、白、青、黄、緑、黒……時間がない。隊長! 何色だと思いますか!?」


 ピソラがコードを手に取りジョシュアに尋ねた。


「え、じゃあ白だ」


 突然の問いかけに驚いたジョシュアだったが咄嗟に白を選択した。


「白ですね……残念!! これは赤、黒、黄の順番に切るんです」


 そう言ってピソラが赤、黒、黄の順番にコードを切るとネックレスのカウントダウンが止まりそのまま数字の表記は消えた。


「さぁお嬢さん良かったですね。無事解除出来ましたよ」


 そう言ってピソラは満面の笑みをシエラに向ける。


「あ、ありがとうございます」

「おいちょっと待て! お前何で最後俺に聞いた?」


 シエラが破顔し、礼を伝えようとすると、ジョシュアが憮然とした表情でピソラに詰め寄る。


「いやぁ俺達を置いて、一人こんな可愛い子抱きしめたり、カッコつけたりしてたから、ちょっと懲らしめてみようかと……」


 そう言ってピソラは振り向き口角を上げた。

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