襲撃④
基地内に残っていた幾つかの部隊に緊急出撃の命が下る。
勿論、ジョシュア達カストロ中隊にも出撃命令が下っていた。
「いいか。政治家達のパーティー会場が襲撃された。犯行グループは既に会場を後にしたとの情報もあるが、俺達はひとまずパーティー会場へ行き、敵の痕跡を探る」
現場に向う車両の中でカストロが隊員達に現状を説明していた。
すると更に緊急の連絡が入る。
「会場より東に二キロの地点で、女性の悲鳴がしたとの通報、及び不審人物の目撃情報アリ。付近の部隊は至急向かわれたし」
「自分に行かせて下さい」
カストロが声を掛けるより先に、ジョシュアが名乗りを上げる。
「……よし、わかった。だが一人では行かせられない。バスケスとエイトリッチの三人一組で動け」
「了解!!」
カストロの命令に三人揃って声を上げる。
結局ジョシュア、バスケス、エイトリッチの三名は通報のあった地点へ。残りのカストロ中隊の面々はパーティー会場へと向かう事となった。
バトルスーツを装備し、街中を高速で駆け抜けて行くジョシュアとバスケス。そしてそれを追うようにエイトリッチが続いていた。
通報があった地点に近付くと遠方を高速で移動する二つの影をバスケスが発見する。
「少尉。あの人影、一般人の動きとは思えないが……」
「確かに。距離を詰めたいが……エイトリッチ伍長ついて来れるか?」
改造された新型バトルスーツを着込んだ二人と援護に特化したバトルスーツのエイトリッチとでは、やはり脚力にも差が生じてしまう。隊列を乱してしまえば三人一組の意味も失ってしまう為ジョシュアは少し悩んだ。
「とりあえず今は敵の脚を止めましょう。どうぞお先に。すぐに追いついて援護しますから」
そう言ってエイトリッチはにこやかに返答し、ジョシュア達は力強く頷き、前方を行く人影との距離を詰めて行く。
距離を詰め、前方の人影を自分達の射程距離に入れた瞬間、人影は反転しジョシュアに向けて石の様な物を投げつけてきた。
咄嗟に身を翻し間一髪躱したジョシュアは相手を目にし、僅かに戸惑った。
遠目で見れば人影に見えていたが、近付くとそれは人ではないのがわかったからだ。
二足歩行ではあるが身体は濃い体毛で覆われ、その体躯は明らかに人よりも一回りも二回りも大きく、純粋な身長だけなら三メートルはあるだろうか。
そして何より、顔は狼のそれである。
「……狼男?……人狼ってやつか」
ジョシュアが戸惑いながら呟く。
「はっはっは。上手く避けたな兵隊。このガルフ様の攻撃を避けるとはやるじゃねぇか」
「何が攻撃だ。ただ単に石を投げただけだろうが」
「はっはっは、その単に投げただけの石でも、お前らが当たれば痛いじゃすまないぜ」
「ああ……まぁ当たれば、だけどな」
お互い鋭い視線で、笑みを浮かべながら対峙するジョシュアとガルフ。
その横ではバスケスともう一人の人狼も対峙していた。
「ガルフさん、どうしますか? こいつら」
「あまり他では暴れるな、とアナベルから言われてるんだが仕方ない。だいたいお前が『女二人ぐらい拐って行きましょう』とか言うからこんな奴らに追いつかれたんじゃねえか」
ガルフともう一人がニタニタと卑下た笑いを浮かべながら会話をする。
二人の会話から察するに、この二人の関係性はガルフの方が上である事は容易に伺い知る事が出来た。
しかしジョシュアが気になったのはそんな事よりも、ある男の名前が出た事だった。
アナベル。忘れもしない。ジョシュアから仲間を奪い、屈辱を与えた男。
「おい。今、アナベルって言ったな」
「ん? なんだアナベルの旦那有名人だな」
ジョシュアの顔つきが一瞬にして変わり、鋭い視線でガルフに問い掛けるがガルフは変わらずニヤついていた。
「お前に聞きたい事が増えたな」
「俺は男となんか話す気は無いんだがな」
二人の間に張り詰めた空気がたちこめる。




