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ミシズ探偵譚  作者: ミナセ ヒカリ
File:2 【Light starry sky《星空》】
13/41

Page:12 【《事件再び》】

 ーー放課後。


「というわけだ、進藤」


進藤「なるほど。情報提供に感謝する、少年」


 放課後の図書室。最早当たり前のように集まる俺達"探偵団"は、なぜか今は新しく来た神崎先生についてを調べている。とは言っても、ほとんど興味本意でしかないが。


日比谷「あんた、ずっと寝てたねー、国語の時間」


神代「いやー、なんか、妙に安心できるっつうか、実家のような安心感というか」


「永眠したかと思った」


神代「それは言い過ぎだろ」


 神代はそうやって言うが、俺は本当に永眠したんじゃないかと一瞬思っていた。あまりにも気持ち良さそうに寝てたからな。そう思われても無理はないだろう。


 ......


影山「やっほー、探偵団のみなさーん!良いニュースと良いニュースがありまーす」


 少しだけの静寂が訪れたタイミングで、またいつものやかましい奴が入ってきた。


影山「聞きたいですか?聞きたいですか!?」


「どっちでもいい。早くしろ」


 なぜかは知らんが、こいつはやたらと俺に関わろうとしてくる。何でなんだろうな。


影山「まず、良いニュースの方なんですけどー」


神代「どっちも良いニュースじゃなかったっけ?」


影山「まあ、そこは置いといて、良いニュースの話なんですけど、少しだけ進展しましたよ」


日比谷「何が?」


影山「神崎先生の事ですよー。授業中、あ、国語ですよ。いきなり私を当てて問題を出してくるもんだから、ちょっと驚いちゃいましたー。まあ、即答してやったんですけどー」


 そのシチュエーション、気のせいではなく俺もやったぞ。何だこの偶然。偶然なのか?いや、全クラスで同じことをしただけだろう。


影山「先生が何でも好きな質問に1つだけ答えてあげるって言うもんですから、聞きたいことはいっぱいありましたけど聞いちゃいましたよ。大事なこと」


日比谷「大事なこと?」


影山「ええ、大事なことです。これで新聞作りが捗りますよ~」


「新聞はどうでもいい。勿体ぶらず話せ」


影山「はいはい、話しますよー。えー、私と同じように質問した人達全員に取材してきたんですけどー、まず私が聞いたことですね。先生、どうやら子持ちらしいですよ!」


神代「お、おう......」

日比谷「あ、あぁ......」

「......」

進藤「......」


 聞屋で、しかも昨日、進藤の話を聞いていたはずなのに、聞きたかったことはそれか。呆れる。


影山「あれ?なんか反応が悪いですねー。まあいいか。で、次にB組の子の話を聞いたんですけど、先生過去にモデルやってたらしいですよ。と言っても、あの体型だとほぼグラドルっぽいですけどね」


 一体どんな質問をしたらそんな答えを得られたんだろうな、B組の奴は。


影山「で、D組なんですけど、先生のスリーサイズ聞き出せたっぽいです」


日比谷「それ聞いたのマジで誰よ......」


影山「女子でしたよ」


日比谷「あぁ......」


 なんか、頭が痛くなる話だな。


「もういい。他の良いニュースに話題を変えよう」


影山「えー、このスリーサイズ、私的には大ニュースだと思うんですけどー」


神代「間違っても新聞に載せんなよ?」


日比谷「そうそう、子持ちとは思えないほどの若い先生なんだから、特集組むとしてもプライバシーは守ってあげなよ」


 2人とも、特集が組まれる前提で話をしてるな。影山のことだから、止めても意味ないし、俺としても止めはしないが。


影山「えー、じゃあ、もう1つの良いニュースですけどー、最近、この近辺で高校生による恐喝事件が起こってるらしいですよー」


神代「それ、良いニュースなのか?」


影山「良いニュースでしょー。探偵団としての仕事が舞い込んできたじゃないですかー」


日比谷「それ、勝手に首突っ込んでるだけなんじゃ......」


影山「まあまあ、この近辺なんですから、実質舞い込んできたも同然ですよー。で、今回の被害者なんですけどー、私の弟なんですよー」


「「「「 ...... 」」」」


 それ、お前が困ってるだけだろ......


 影山の顔からは、いつものテンション高めな表情が消え失せ、どことなく暗くなっている。良いニュースなんて言ったが、それは建前で、本音としてはその弟を助けたいのだろう。


影山「まあ、弟は被害者の一部なんですけど、本当にその高校生ヤンキーに困ってるんですよねー。で、もう、私からのお願いになるんですけど、どうか私達探偵団でその事件を解決しませんか!」


 影山は懇願するように机に頭を打ち付けてお願いをしてくる。


 どうしようかと4人で顔を見合せたが、俺には断る理由がない。というか、ここで断ってしまえば恩知らずで冷酷な奴になってしまう。前回の事件は、こいつのお陰で解決できたようなものだ。ここは1つ、こいつの口車に乗ってみるのも悪くはないかもしれない。


「話だけは聞いてやろう。無い知恵合わせるかどうかはその後だ」


影山「あ、ありがとうございます!」


 ......普通に感謝の言葉も言える奴なんだな。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 高校生ヤンキーによる恐喝事件。こんな時代になってもそんなことをする奴がいるんだな、とタイトルだけを見れば鼻で笑いたくなるようなイメージを持つ。だが、影山の話を聞いた限りでは、どうにも穏やかに済みそうではないというのが分かる。


神代「ただ金取るだけの野蛮な奴らかと思ってたが、奴ら人殺し寸前まですんのかよ......ヤベェな」


「今のところ死人は出ていないと言うが、本当にそうなのかも怪しいな。進藤」


進藤「分かった。調べておく」


 影山の情報収集能力は凄いものだ。俺達のARCWDに送られてきた被害者の情報の数々。どんな被害に遭い、どんな特徴の生徒が狙われているのかがよくまとめられている。しかも、これでまだ被害者の情報は一部だというのだから、高校生ヤンキーがどれだけの悪なのかもよく分かる。いや、悪かどうかよりも、これだけの被害者を生み出して、よく捕まっていないものだ。そう考えると、奴らはただの恐喝犯ではなさそうだな。


「高校生を装った大人か、もしくは道を踏み外しまくった高校生か......」


影山「すっごい怪しい奴らですよね......お陰で、私の情報網を駆使しても犯人のはの字も見つかりませんよ......」


 伊吹の時と違って、今回はまず犯人探しからか......骨の折れそうな事件だ。


日比谷「これだけ被害者が出てるんだったらーー」


影山「警察にはもう届け出てますよ。しかも、私の弟だけじゃなく他の被害者の子ほとんどが」


「何人くらいの規模で被害者がいるんだ?」


影山「ざっと数えた感じ、ゆうに3桁は普通に行ってそうです」


 それだけ恐喝してれば、さぞ財布の中身が潤うだろうな。いや、狙ってるのは中学生くらいって話だから、いくら数を重ねても大した額にはならないか。


影山「しかも、奴ら良いカモだと思った子に対しては何回も呼び出して金を毟り取ってるらしいんですよ。最低ですね。で、そうやって何回も毟り取られる子は、親に相談することが出来ず、親の目を盗んで金を盗っては奴らに渡しに行ってたっぽいです。途中でその様子を親が発見できてなかったら、今頃大変なことになってたでしょうね。今も十分大変ですけど」


神代「なんか、そんな話聞いてると、まだ矢島達の方がマシに見えてくるな」


日比谷「見えるだけでしょ。奴らも矢島達も同じくらい最低な奴らよ」


「そうだな。やってる事は違えど、他人を苦しめていることに変わりはない。この事件、俺達で解決しよう」


神代「だな!矢島の野郎共倒した俺らに敵無しだぜ!」


 俺のこの判断を聞いて、影山はほっとしたように息を吐く。俺がこの事件を引き受けた理由は、影山のためでもあるが、1番は俺の近辺で起きている不安要素を全て払拭しておきたいからだ。


 早速、俺はARCWDのメールアプリを開き、1つのグループを作る。そして、神代達の方へとそれを提示する。


「今後、何かあったらこれで連絡を取り合おう」


神代「おう、確かにその方がいつでも連絡できていいな」


 神代はなんの迷いもなしにグループへ加入した。進藤も、何も言わずに指を動かして加入してくれた。


日比谷「......これさ、グループ名付いてないけど、なんか決めといた方がいいんじゃないの?」


「どうでもいい。連絡が取れれば十分だ」


日比谷「あんた、本当無駄なところは削いでいくタイプよね......」


 グループ名なんてわざわざ決めなくとも、本当にただ連絡を取り合うだけのものなんだから何も支障はないだろう。そんな事に頭を使うだけ無駄だ。


 と俺は思ったのだが、進藤を除いた他面子はそう思ってないようで、名前を何にするかで勝手に盛り上がっている。


神代「やっぱ、『探偵団』の文字は入れるべきだろ」


日比谷「じゃあさ、私達の名前のどこかの文字を入れて名前を決めるのはどう?」


影山「それだと、5文字分入ることになりますよ?長くないですか?」


神代「うーん......神山清藤谷(かみやませいどうや)とかは?」


「「「「 却下 」」」」


神代「そんな口揃えて言う!?」


 しまった。どうでもいいとか思ってたのに、つい口から出てしまった。


影山「やっぱ5文字は無理がありますよー。もうちょっと短くしてまとめないと」


日比谷「えー、それだと思いつかなくなーい?」


「お前ら、時間をつぶーー」


進藤「2文字が1番語呂が良くなる。海静(かいせい)探偵団。これが一番いい」


「「「 おぉ 」」」


 なんという事だ。黙って読書に戻っていた進藤でさえ若干乗り気になっている。お前だけは俺と同じタイプだと思っていたのに......


神代「で、海静ってどんな意味?」


進藤「知らない。適当に考えた」


神代「適当なのかよ......」


 適当にしてはちゃっかりと俺の名前を入れてるな。まあ、どうでもいいと放棄していた俺に拒否権など無いが。


進藤「リーダーは、少年、あなただ」


「......」


進藤「安心しろ。リーダーと言っても名ばかりだ。何かあれば、いつでも私の知恵を借りに来い」


「......分かった。俺達は"海静探偵団"だ。今日から本格的に活動を開始する」


神代「もっとやる気出して言えよ......」


影山「そうですよ!清宮君!リーダーですよ!?リーダー。もっと、やる気出して行きましょーよー!」


 はぁ。俺は平凡な学生生活を送れたらそれでいいんだ。そう望んでいたはずなのに、何でこうなってしまうのか。


 まあ、どうせ実家の方でグズっていても、どうせどっかその辺で野垂れ死ぬだけの人生に花を与えられたと思えば、それもそれで悪くはないか。


「俺がリーダーをやるからには、本気で事件を解決することを目標にする。俺達はお遊びでやっているわけじゃない。そうだな、本気で人助けをすることを俺達の存在意義にする。文句は言わせないし、今更抜け出すこともさせない。それでいいな」


神代「鬼教官かよ......まあ、俺は文句ねぇぜ。どうせ部活も勉強も大して頑張れねぇんだし、これくらい本気でやってみるわ」


日比谷「それ、結局本気出せない奴が言うセリフ......。まあ、私はそれでいいよ。てか、元々伊吹をどうにかしたいと思ってあんた達に協力したわけだし、その目標が人助けに変わるなら、見栄えがいいかなーって」


進藤「はいはーい。私は事件のこと新聞にまとめられたらそれでいいんで何でも大丈夫でーす」


進藤「私も構わないぞ、少年」


「......分かった。じゃあ、今日から活動開始だ」


「「「「 おー! 」」」」

 光先生......気になりますねぇ。

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