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2-1

 天文十六年秋、尾張の織田信秀は南東の三河岡崎城を攻めた。岡崎城主、松平広忠は降伏し、息子竹千代を人質として信秀の元に送った。

 背後を固めた信秀は二万五千の大軍で北の美濃に攻め込んだ。しかし稲葉山城下の戦いで大敗。織田軍は回復不可能な打撃を受けた。

 織田軍大敗から六日後、広忠は信秀を裏切って周辺の織田方の城を攻撃した。更に駿河の今川義元に保護を求めた。この突然の裏切りで松平家は広忠派と信秀派に分裂してしまった。

 広忠の裏切りには美濃の斎藤利政の暗躍があったとされる。この時期、尾張国内でも利政の工作で反信秀派の勢力が反乱を起こしていた。


 追い詰められた信秀は外交方針を百八十度転換して、利政との和睦交渉に踏み切った。交渉は織田家重臣の平手政秀と斎藤家重臣の明智光安の間で取りまとめられた。両者の話し合いの結果、利政の娘と信秀の息子、信長を結婚させる条件で和睦が成立した。

 広忠は利政にハシゴを外される形になった。


 天文十七年三月、背後を固めた信秀は岡崎城攻略作戦を開始した。広忠は義元に救援を要請した。義元は岡崎城に援軍を送り込んだ。


 三河には二つの重要拠点があった。東の岡崎城と西の安祥城である。どちらも松平家の支配下にあったが、信秀は数年前に安祥城を奪って織田家の三河支配の拠点としていた。


 信秀率いる織田軍八千は安祥城から出撃した。部隊は岡崎城の南の小豆坂まで進出した。ここで信秀派の松平勢千も加わった。

 信秀は息子の織田信広に兵五千を預けて先発させた。本隊四千は坂の麓に残った。

 信広率いる先鋒隊は坂を上り始めた。

 今川軍は密かに坂の頂上に陣を敷いて信広隊を待ち構えていた。

 数は一万。副将に筆頭家老の朝比奈泰能。侍大将に今川最強の岡部元信。総大将は「黒衣宰相」、太原雪斎である。

 信広隊は敵に気付かずに坂を上っていく。信広隊が坂の途中まで来た所で、頂上から突然今川の大軍が駆け下りてきた。

 今川軍は逆落としを仕掛けて信広隊を蹴散らした。信広隊は麓の信秀本隊まで敗走した。今川軍は逃げる信広隊を追撃した。

 信秀本隊は坂から逃げてきた信広隊を収容し、今川軍を待ち構えた。今川軍は駆け下りてきた勢いで信秀本隊に突撃した。

 両軍は正面から激突した。雪斎は伏兵の岡部元信隊を繰り出して信秀本隊の側面を突いた。織田軍は総崩れとなって敗走した。今川軍は追撃した。

 信秀は弟で織田家最強の織田信光をしんがりに立てて逃走した。信光隊はその場に留まって今川軍を撃退し続けた。信秀本隊の安全を確認すると、信光隊もようやく撤退を開始した。

 織田軍は安祥城まで退却した。信秀は信広に城を任せると、全軍を引き連れて尾張まで戻った。


 三河の形勢は今川、松平連合に傾いた。広忠は勢いに乗って周辺の抵抗勢力を次々攻略した。滅びかけた松平家は広忠の手によって蘇ろうとしていた。

 しかし天文十八年三月、広忠は急死してしまう。死因ははっきりしない。病死とも、信秀派の家臣に暗殺されたとも、狩りの最中に信秀に金で雇われた農民に殺害されたともいう。


 義元の動きは早かった。

 暗殺から数日後、雪斎は一万の軍で岡崎城に入り、主を失った松平家を吸収した。そして広忠の仇討と称して安祥城攻略作戦を開始した。連合軍は城の東西南北を瞬く間に包囲して孤立させた。

 連合軍は怒涛の勢いで三の丸、二の丸を落として本丸に迫った。しかしここで突出しすぎた松平軍の総大将、本多忠高が戦死してしまう。

 松平軍は二週間足らずの間に主君と総大将を失い、激しく動揺した。雪斎はこれ以上の城攻めは無理と判断して撤退した。安城城はぎりぎりの所で落城を免れた。


 天文十八年九月、義元は雪斎に第二次安祥城攻略作戦を準備させた。

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