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9-11

 十一月一日、柴田勝家と信勝の母、土田御前は末森城本丸館に参上した。

 信勝は正面奥の城主席に、津々木は右側奥の上席に座った。

 勝家と土田御前は信勝の対面に座った。

 勝家は信長の病状を説明した。


「上総介様は危篤です。もはや一人で起き上がる事も出来ません。数日後にはお亡くなりになるでしょう」


 信勝と津々木は見つめ合った。津々木は頷いた。二人は内心嬉しく仕方がなかった。

 信勝は舞い上がる気持ちを抑えて、真面目な顔でお悔やみを述べた。


「兄上とは色々あった。それでこういう別れ方は寂しいな」


 勝家は提案した。


「上総介様を見舞ってはいかがでしょうか。

 もし何かあれば、家を継ぐのは弟の武蔵守様か、義兄の下野守様。見舞い目的で早めに清州城に入っておけば、下野守様に先んじて行動を起こせるでしょう」


 津々木は大声を出した。


「そんな恐ろしい事をよくも言えたな!上総介様が死ぬ前提で動けと!」


「普段の怜悧な津々木殿ならそう動く。勉強させてもらっただけだ」


「偉大な武士の不幸を知って心が揺れ動いている。そういう意味では今は普段通りではない」


 土田御前は信勝に頼んだ。


「お前があの子を嫌っているのは知っています。しかし母の顔を立てて清州城に行ってはくれませんか?あの子も一人であの世に旅立つのは心細いはずです。傍らで旅立ちを見守って欲しい。母も後から清州城に参ります」


「兄は兄です。どんなに嫌っても血の繋がりは断ち切れません。明日、城に向かいましょう」


 信勝と津々木は退室した。

 土田御前の目に涙が浮かんだ。行けばどうなるか、常識人の土田御前はよく分かっていた。しかしここで行かせないと織田家は滅んでしまう。

 勝家は御前に頭を下げて退室した。

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