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信長隊は南東に向かって縦一直線の陣形で動いていた。柴田隊は西に向かって横一直線の陣形だった。
信長隊の先鋒隊百は佐々孫介が率いていた。
孫介隊の弓鉄砲足軽は「突スナ」で角田隊の右側面を攻撃した。角田隊は次々倒れた。
角田は部隊に指示を出した。彼は椎実形兜の黒い鎧を着ていた。
「盾を並べろ!弓鉄砲足軽は袋を取って攻撃用意!ここは踏み止まれ!」
部隊は盾を並べて袋を取った。騎馬武者は降りて馬を逃がした。その間も孫介隊の射撃で兵士は何人も打ち倒された。
山内隊は逃げ出す者、勝手に飛び出す者で混乱した。
山内は大声で指示を出した。彼は黒い鎧、御幣後立具足を着ていた。
「うろたるな!こちらは二倍だ!受け止めて跳ね返すぞ!」
先鋒の勝家隊は落ち着いていた。
勝家は冷静に命じた。
「槍隊、鞘を払え。敵に突っ込むぞ。弓鉄砲隊は準備が出来次第上がってこい」
槍隊は八メートルの超長槍の鞘を払った。弓鉄砲隊は袋から武器を出して準備を始めた。
完全武装の超長槍隊百人は一列五十人で二列横隊を作った。勝家は前列中央に立った。
勝家は超長槍隊を率いて孫介隊に向かった。
孫介隊は角田隊に射撃を叩き込んだ。角田隊は猛攻で崩れそうになった。
勝家隊百人が孫介隊に向かってきた。
孫介は部隊に命じた。
「見ろ!城主引換券が歩いてやってきたぞ!お前達、打ち殺して手柄にしろ!」
孫介隊は勝家隊を弓鉄砲で攻撃した。
勝家隊は盾を持っていなかった。矢は鎧に当たると跳ね返ったが、玉は鎧を貫通した。
勝家隊は何人も被弾した。勝家本人も左肩を打たれた。勝家の左隣の兵士は胸を打ち抜かれて倒れた。
勝家隊は陣形を維持したまま前進した。誰も列を崩さなかった。
孫介は部隊に命じた。
「長槍隊前へ!俺に続け!権六を蹴散らすぞ!」
孫介は槍を持って最前線から飛び出した。五メートルの長槍隊五十人が後を追った。
孫介を頂角に、綺麗な二等辺三角形が形成された。
敵味方の槍隊が正面から激突した。
超長槍隊は一斉に槍を振り上げて、相手の三メートル先から一気に振り下ろした。空から槍の穂先が滝のように降ってきて、孫介を叩き潰した。
槍隊の後続がやってきた。超長槍隊は再び槍を振り上げ、振り下ろした。槍隊は叩き潰された。
超長槍隊はシーソーのように何度も上げ下げして槍隊を完全破壊した。
中央の角田隊、先鋒の勝家隊は弓鉄砲で反撃を開始した。
孫介隊は支えきれずに敗走した。両隊は突スナで追撃した。
超長槍隊はその場に留まった。武器が重たいので追撃には不向きだった。
勝家は左肩から血を流していた。側近が「下がって治療を受けましょう」と進言した。
孫介は金色の栄螺形兜を被っていた。その兜はフリスビーのように潰れて勝家の前に転がっていた。
勝家は兜を掴むと、残った力で信長隊に放り投げた。
信長隊は裏崩れを起こした。角田隊、柴田隊は逃げ出す信長隊を押し込んだ。
勝家は側近に言った。
「引くぞ」
後衛の山内隊もようやく落ち着きを取り戻した。山内隊も両隊を追って信長隊に突っ込んだ。
逆に勝家と超長槍隊は最後尾に下がった。
三隊は猛攻を仕掛けた。
信長隊は長方形の陣形を縦四つに並べていた。三隊は空手で瓦を割るように陣形を割って進んだ。
三隊は最後尾の信長本陣に迫った。
信長の本陣は四十人の親衛隊が守っていた。数は少ないが、森可成を筆頭に精鋭が揃っていた。
信長は川尻秀隆を呼んだ。
「佐久間大学に伝令。全軍でこっちに来い。押し返すぞ」
川尻は馬に乗って後方に下がった。
柴田隊五十人が本陣に雪崩れ込んできた。
敵の一番槍が叫んだ。
「我が名は土田の大原……」
可成は喉仏を狙って十文字槍で鋭く突き込んだ。一番槍は首を切断された。
可成は槍を頭上でヘリコプターのように振り回した後、敵五十人に向かって構えた。柴田隊は可成一人に怯えた。
信長は大声で怒鳴った。
「お前達!どの面下げて俺に会いに来た!」
柴田隊はたじろいだ。顔を伏せる兵士もいた。
「全員相手してやる!俺と戦え!」
戦場が静まり返った。
後ろから大勢の足音が聞こえた。
名塚砦から盛重隊三百がやってきた。
盛重隊は突スナで柴田隊を本陣から追い払った。柴田隊は後退した。
盛重と川尻が本陣にやってきた。盛重は白い派手な鎧、銀箔置白糸威具足を着ていた。
盛重は叫んだ。
「殿!佐久間大学、ただ今参りました!」
可成は信長に申し出た。
「殿!一番槍の誉れは是非私に下さい!」
「任せる。行くぞ、全軍突撃だ!」




