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7-8

 織田軍本隊は撤退を開始した。

 森可成隊と佐久間信盛隊は時間を稼ぐために前に出た。

 信長派は赤や金の派手な鎧を、信勝派は黒の地味な鎧を着ていた。佐久間信盛は白い派手な鎧、銀溜白糸威具足を着ていた。


 信盛は「退き佐久間」というあだ名を持っていた。撤退戦が上手い事から付いたとも、無理な仕事や勝てない敵はすぐに見切って逃げてしまう事から付いたともいう。

 逃げる事を恥としない、日本では珍しいタイプの武将だった。勝てる相手とだけ戦うので勝率は抜群だし、出来る仕事しかしないので常に成績優秀だった。

 信長は仕事が出来る部下はどこまでも出世させた。出来なくとも頑張っている部下は根気強く使った。敗は許し、再チャレンジの手助けもした。一方で仕事をさぼる部下、やれるのにやらない部下には容赦しなかった。

 そういう性格の上司と、無理なく合理的に仕事する部下では、肌が合わなかったに違いない。

 信盛自身は使いやすい部下ばかり使う上司だった。部下からの評判は良くなかった。


 森隊は右、信盛隊は左に展開した。長方形の陣形二個が横に並んで河原を塞いだ。

 稲葉隊は縦一直線の陣形で突撃してきた。両隊は突進を受け止めた。

 両隊は中央から折れ曲がってⅤ字になった。稲葉隊の先鋒は左右から包囲される形になった。

 先鋒が崩壊すれば連動して全体が崩壊する。これを裏崩れという。

 斎藤利三は精鋭部隊を左右のⅤ字の先鋒に向かわせた。裏崩れを仕掛けてきた敵に逆に裏崩れを仕掛けた。


 森隊の先鋒は可成が率いていた。美濃出身の可成はまだ大型馬に乗っていた。親衛隊も騎馬隊だった。

 敵の精鋭騎馬隊がやってきた。

 敵味方の騎馬隊は刀を抜き、または弓や槍を構えた。

 両隊は正面から激突した。可成は馬上槍を振るって敵を蹴散らした。


 佐久間隊の先鋒は信長の親衛鉄砲隊、佐々孫介、佐々成政兄弟が率いていた。

 佐々成政は鉄砲上手の武将である。赤と金の鎧、金小札仁王胴具足を着ていた。

 兄の孫介は戦上手の武将である。金のサザエの兜が印象的な鎧、金魚鱗小札二枚胴具足を着ていた。

 敵の精鋭騎馬隊がやってきた。

 佐々兄弟隊は前面に鉄砲隊を展開した。

 鉄砲隊は猛射撃を開始した。騎馬隊は馬を打ち倒されて落馬した。


 両先鋒の戦いは織田軍の有利に進んだ。このままだと包囲をかけられる可能性が出てきた。

 稲葉隊は撤退を開始した。部隊は突っ込んできた時と同じ速さで数キロ北へ逃げていった。


 可成は唖然として敵を見送った。右膝を切られて血が流れていたが、彼は興奮して全く気付いていなかった。

 佐久間隊は直ちに撤退を開始した。

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