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7-7

 織田軍は大良寺の本堂に司令部を置いていた。

 昼前、偵察騎兵が本堂に飛び込んできた。


「斎藤范可の軍勢五千がこちらに向かっております!指揮官は稲葉良通!」


 首脳陣はざわついた。

 信長はシルクハット型の兜、白糸威笠子形兜を被り、怪盗のようなドミノマスクを付けて、黒いビロードマントを羽織っていた。

 信長は指示した。


「寺の改修はまだ済んでいない。打って出て戦うぞ」


 織田軍は寺を出て河原を北上した。陣形は一個三百人の長方形陣形を縦五段に連ねた長蛇の陣形だった。

 東には長良川が流れていた。西は土手だった。


 北から稲葉隊五千が長蛇陣形でやってきた。同じ陣形だが長さは三倍以上違った。

 織田軍は急いで迎撃準備を整えようとした。


 稲葉良通は高政軍では最高の武将である。その先鋒は斎藤利三が務めていた。

 利三は稲葉隊のエースである。ウサギの耳の兜がキモ可愛い黒羅紗亀甲縫三枚胴具足を着ていた。


 利三は父親が名門の美濃守護代斎藤家(道三は斎藤家を勝手に名乗った)の一族、母親は幕府の政所代(行政や訴訟を扱う部署のナンバー2)蜷川家の娘という由緒正しい家の出身である。自称〇〇の子孫が多い成り上がりの斎藤家では貴重な人材だった。

 利三の兄は将軍の側近として仕えた。妹は土佐の長曾我部元親の妻となった。


 稲葉隊は素早い動きで織田軍の手前まで迫った。信長は射撃戦を諦めて、槍足軽を前面に繰り出した。

 両軍は河原で激突した。

 稲葉隊は怒涛の勢いで攻め立てた。織田軍は押し込まれた。

 稲葉隊には豊富な予備選力があった。出し方も上手かった。

 利三は味方の前線に疲れが見えれば、すぐに下げて新手を繰り出した。敵の前線が疲れれば、すかさず新手を投入して一気に押し込んだ。

 士気も高かった。

 兵士は手足を刺されて血が吹き出しても、ゾンビのように襲いかかってきた。同僚に羽交い絞めにされてようやく後方送りにされる兵士もいた。


 織田軍の縦に長い陣形はさけるチーズのように割れていった。前線の武将、兵士はたて続けに戦死した。


 敵の新手五十が西の土手に現れた。新手から伝令騎兵が一騎飛び出した。

 騎兵は河原の方に降りてきた。織田軍は弓を構えた。

 伝令は片手を振って叫んだ。


「攻撃しないでください!私は斎藤山城家臣、林駿河の軍勢です!

 織田上総介様にお会いしたい!」


 信長は織田軍の中央にいた。

 先ほどの伝令が家臣に連れられてやってきた。

 伝令は信長に告げた。


「斎藤山城の軍勢三千と斎藤范可の軍勢二万が長良川で激突!山城勢は壊滅しました!山城は切り死に!」


 周囲の兵士は動揺した。信長は素早く命じた。


「一度寺まで戻る。森隊、佐久間隊はしんがりを務めろ。兵が足りないなら俺の旗本から貸す。駿河守には寺で合流しようと伝えてくれ」

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