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7-3

 竹腰隊百人は本丸館を出発した。部隊は急いで稲葉山を駆け下りた。

 麓の城下町から火の手が上がった。

 火元は街の東西南北だった。火は端から中央に向かって延焼した。

 街は激しく炎上した。


 道三は混乱に紛れて城下町を脱出した。

 稲葉山の北西三キロに鷺山城という城があった。二つの城の間には長良川が流れていた。

 道三は川を渡って鷺山城に逃げ込んだ。


 道三は国内の全勢力に「鷺山城に集まれ。稲葉山城を攻め落として高政の首を取るぞ」と命じた。しかし諸侯はほとんど集まらなかった。


 道三の放火で城下町は壊滅した。

 翌朝、高政は本丸館の広間に家臣を集めて演説した。


「父、斎藤道三、並びに弟孫四郎、喜平次は私を殺そうとした。だから私は昨日、弟二人を殺した。父は二人を見捨て、街を焼いて鷺山城に逃げた。

 私は今日から斎藤范可はんかと改名する。

 明日、父と戦う。味方する者は頭を剃って長良川に集まれ!」


 范可は親孝行のために父親を殺した中国の人物だという。范可に関して書かれた書物は現在失われており、具体的にどういった人物なのかは分からない。


 翌朝、美濃国内に粉雪が降った。

 長良川の南岸に高政軍三千が集まった。全員頭をツルツルに剃り上げていた。高政は頭から血が滲むほどスキンヘッドにしていた。

 ただ一人、道化六郎左衛門という怪力の武士だけは右半分がツルツルで、左半分がフサフサだった。高政が「何だそれは」と尋ねると、道化は「どっちに付くか決められません!」と逆切れした。

 このエピソードから「道化者」という言葉が生まれた。


 鷺山城から道三の重臣、林通政の部隊二百が出てきた。両軍は川を挟んで睨み合った。

 午前十時、合戦が始まった。

 高政軍は林隊を一撃で粉砕した。林隊は鷺山城に撤退した。

 道三は一人で稲葉山城の北十キロにある北野城に逃げていった。


 冬が来た。積雪で大規模な軍事行動が取れなくなった。

 冬の間、両陣営は多数派工作を展開した。しかし道三に味方する勢力はいなかった。

 道三は稲葉山城から近い城に移ったり、遠い城に移ったりして、高政の出方を探った。高政は挑発には応じなかった。


 道三は国外の信長に助けを求めた。信長は道三支持を表明した。

 高政は優秀かつ誠実な同盟者だった。道三よりも組む価値のある相手だったが、兄弟殺し、親殺しの罪はさすがに許す訳には行かなかった。

 信長は目の前の利益より、対外的な誠実さを取った。彼の外交方針は一貫していた。

 高政は上守護代家の織田信安に接近した。

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