表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/152

5-9

 二十五日、信長は砦建設に関わった村の幹部の処刑を信元に命じると、緒川城を出て西に向かった。


 まず吉川城に火を放って落とした。

 次に藪城を攻撃した。城内で裏切りが起きて城主は殺された。


 夕方六時、織田軍は寺本城の城下に到着した。冬の六時はもう真っ暗だった。

 信長は城攻めを断念して城下町に火を放った。街を焼く炎が小山の山頂に築かれた城の姿を照らし出した。

 織田軍は北上して木田城に入り、そこで一泊した。


 二十六日、織田軍は陸路で那古屋城に帰った。

 信長は休む間もなく志賀村に向かった。


 村の中心部に寺があった。信長と安藤は本堂で面会した。

 安藤は驚いた。


「五日で三つの城を落とすなんて聞いた事がない。もう上総介様を大うつけと呼ぶ人間はいないでしょう」


「もう少し手際よくやれば兵も死なずに済んだし、寺本城も落とせたはずです」


「兵が先走ったのは士気が高いからです。織田家の未来を信じているのですよ」


「勝利祝いと思って、親父殿に一つお願いを聞いてもらいたい。

 織田家はこれからますます大きくなります。人手が足りなくなるでしょう。

 土岐家の家臣を吸収したと聞きました。あの猜疑心の塊のような親父殿の事です。敵の家臣は死ぬまで飼い殺しにするはずだ」


 安藤は笑いを堪えた。信長は微笑んだ。


「腐らせるなら俺にください」


「話は伝えておきます。土岐家には土岐五本槍という豪傑が五人います。特に森可成は美濃国内では知られた勇士です。一緒にいて気持ちのいい男ですよ」


「明智光秀という男はどうですか?」


「何を考えているか分からない男です。しかし優秀ですよ。鉄砲を持たせたら天下一です。内政も交渉も完璧にこなします」


 翌二十七日、安藤隊は稲葉山城に帰還した。

 稲葉山の西の麓に利政の武家屋敷があった。

 侵入者対策で塀は高かった。威圧感があって入りづらかった。

 屋敷には立派な日本庭園が整備されていた。池のほとりには茶室も建っていた。

 安藤はこの茶室で利政と面会した。

 利政は尋ねた。


「ご苦労だった。婿殿はどうだった?」


 安藤は戦いの詳細を報告した。

 利政は険しい顔で話を聞いた。終わると大きなため息を付いた。


「婿殿は凄まじいな。隣にいて欲しくない人間だ。

 もういい。下がってくれ」


 安藤は頭を下げて退室した。

 利政は斎藤家の将来を考えた。


 利口者の信長と愚か者の長男高政では勝ち目がない。斎藤家存続のためには高政を追放して、利口者の次男孫四郎を跡取りにするべきではないか……


 麓には高政の武家屋敷もあった。

 塀は低かった。フレンドリーで入りやすかった。

 広間の左右に武将が何十人も座っていた。高政は一番奥の当主席にいた。

 安藤は高政の対面に座り、深々と頭を下げた。

 高政派の利政追放計画は既に完成していた。後は実施の機会を待つだけだった。


 一月二十六日、義元と雪斎率いる今川軍二万が駿河を出発した。軍勢は二月一日には三河の岡崎城に入った。

 二月二日、空になった駿河に北条軍三万が侵攻した。

 信長と示し合わせた上での軍事行動だった。信長はこれをずっと待っていた。

 今川軍は直ちに駿河に撤退した。


 水野信元は窮地を脱した。彼は周辺諸勢力を攻略して知多支配を盤石にした。

 寺本城は逆に孤立する形になった。信元は降伏の使者を送った。しかし城主の花井は降伏を拒否して信元と何年も戦い続けた。

 花井は独立城主の誇りを守り抜いた。逆に今回の戦いで水野家は織田家に組み込まれる事になった。


 義元は武田家に救援を要請した。これに応えて武田家は一万五千の援軍を出した。

 北条家と今川、武田連合軍は駿河東部で何度も争った。


 太原雪斎は北条家との和睦を考えた。東と和睦すれば、今川の全軍を尾張にぶつける事が出来る。

 信長は戦国最強軍師を本気にさせた。


(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ