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5-8

 信長隊は堀の南端にかい盾、竹束を並べた。鉄砲隊四百人+弓隊三百人はここから猛射撃を加えた。

 矢は木の板に刺さった。銃弾はめり込んだ。玉は当たり所がいいと貫通して城壁の後ろの敵兵を射殺した。

 城壁には狭間と呼ばれる穴が開いていた。ここから身を隠して攻撃出来た。

 守備兵はこの狭間から弓鉄砲で反撃した。たまに信長隊の矢玉が狭間から飛び込んできて兵を殺傷した。

 城壁の端に井楼櫓が二つ建っていた。ここから地上に向かって打ち下ろす事が出来た。

 守備兵はこの井楼櫓からも攻撃した。敵の玉は信長隊の盾を飛び越えて鉄砲足軽に当たった。

 両軍の出す発射煙で辺りは濛々となった。


 信長本人も最前線で鉄砲を打った。玉込め役の足軽数人が補助に付いた。

 信長は鉄砲を打っては補助に渡した。補助は火薬と玉をセットして信長に渡した。

 信長は三丁の銃を使い回して連射した。

 信長は三十メートル先の小さな狭間に何度も玉を打ち込んだ。井楼櫓の守備兵の頭を連続で打ち抜いた。

 敵は怖がって井楼櫓に上がらなくなった。狭間からの攻撃も止まった。


 槍足軽は信長の姿を見て奮い立った。彼らは雄たけびを上げて堀底に飛び降りた。

 敵は弓鉄砲で反撃した。

 槍足軽は勇敢に堀底を進み、土塁に取り付いて登ろうとした。

 敵は狭間から槍を突き出して反撃した。

 槍足軽は我先に土塁を登り、突き落とされてはまた登った。

 死傷者が増大した。空堀は死体で埋まった。

 各隊の指揮官は槍隊を南端まで下がらせた。


 水野隊は東の入江に上陸した。部隊は正門の前に盾を並べて敵と打ち合った。


 信光隊は細い道を通って西の裏門に接近した。

 裏門にも空堀が掘られていて、片側一車線の木橋が架かっていた。戦の時は橋を落とすものだが、味方の奇襲でそんな時間はなかった。

 木の板の城壁には雨風を凌ぐための藁が被せてあった。これもそのままだった。

 信光隊は橋の手前に盾を並べて敵と打ち合った。

 火矢を浴びせると藁は燃え上がった。守備兵は水をかけて必死に消した。


 織田軍は三方面から激しい射撃を加えた。敵は次々倒された。

 特に南の損耗が激しかった。砦の主将松平長勝は本丸館の予備隊を送り込んだ。それも足りなくなると東西の守備隊を引き抜いて南に送った。


 西門の敵の攻撃が弱まった。

 信光は焙烙火矢(陶器製の手りゅう弾)隊を繰り出した。

 焙烙火矢隊は紐を付けた焙烙火矢をハンマー投げのように放り投げた。焙烙火矢は門を飛び越えて城内に落下した。爆発で周辺の敵は吹き飛んだ。

 攻撃が止まった。

 信光は破城槌(大きな丸太。城門にぶつけて壊す)を装備した決死隊を繰り出した。

 決死隊は城門に突撃した。部隊は破城槌を何度も打ち込んで門を破壊した。

 信光隊は壊れた門から砦に突入した。

 敵はかい盾、竹束でバリケードを作って応戦した。信光隊は南の信長隊から槍足軽の増援を回してもらった。

 信光隊は敵を倒して本丸館に接近した。


 織田軍は三方から攻め続けた。合計五百丁の鉄砲と五百張りの弓が一日中砦に打ち込まれた。

 本丸館の治療所に負傷兵がひっきりなしに搬送された。

 特に南からの攻めが強烈だった。松平長勝は南に兵を回した。


 南では激戦が続いていた。

 城壁の表は矢玉でぼろぼろだった。裏面は守備兵の返り血で真っ赤だった。

 焙烙火矢にはロケット弾タイプもあった。

 信長隊は南の城壁に焙烙火矢を打ち込んだ。城壁は敵と一緒に吹き飛んだ。

 信長隊は井楼櫓にも打ち込んだ。井楼櫓は真ん中から折れて城内に落下した。

 敵は死体を積み重ねて新しい城壁を作った。

 信長隊は死体の壁に弓鉄砲を打ち込んだ。

 矢は死体に刺さった。銃弾は死体を貫いて壁の後ろの敵を射殺した。

 敵の増援がやってきた。信長隊は新手とまた射撃戦を繰り広げた。


 人は石垣、人は城というが、固い城でも守る兵がいなければ簡単に落ちる。城の攻め方に方には弱点を攻める以外にも、城兵を効率よく削るという方法もある。

 信長は南を激しく攻めた。松平長勝は南に兵を送り続けた。

 南の敵兵は無限にリポップするモンスターだった。射撃を浴びせると簡単に蒸発した。南は信長隊の効率のいい狩場になった。

 南に兵を回すほど東と西が緩くなった。

 東の信元隊は正門の敵に苦戦した。西の信光隊は着実に本丸館に接近した。

 松平長勝は南を捨てて城内に新しい防衛ラインを構築すべきだったが、信長隊に経験値を提供し続けた。


 敵の死者は三百人を越えた。負傷者は死者の二倍出る。死傷者は九百人。無傷の人間は百人もいない状態だった。

 一方、味方の死者も百人に達しようとしていた。


 夕方四時、信元隊は遂に正門を突破して城内に突入した。

 信長隊はまだ堀を挟んで敵と打ち合っていた。

 五時、信光隊は本丸館まで三十メートルの距離に接近した。

 本丸館は負傷兵でいっぱいだった。廊下や庭にも寝かされていた。予備兵は一人もいなかった。

 信光隊は本丸館に銃撃を浴びせた。

 松平長勝は館の中から呼びかけた。


「待て!待て!降参だ!降参したい!今から出ていくから打たないでくれ!」


 攻撃が止んだ。

 立派な鎧を着た武将が陣笠を振って出てきた。


 信長は降伏を受け入れた。


 戦闘は終わった。村木砦の敵兵は船で対岸の重原城に撤退した。船が足りないというので信元は水野家の船を貸してやった。

 織田軍は砦の西にある飯食場という広場に移動した。


 夜、織田軍は飯食場で酒宴を開いた。

 信長は自ら諸将にお酌して回った。また足軽の手を握り、涙を流しながら労をねぎらった。


「お前も、お前も!本当に皆よくやってくれた!」


 酒宴は夜遅くまで続いた。

 その日は緒川城に泊まってぐっすり眠った。

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