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4-2

 簗田は那古屋城を訪れた。


 信長は首脳陣を本丸館広間に集めた。

 信長は奥にある一段高い当主席に座った。部屋の右側に信長派の家臣が、左側に信勝派と信光の家臣が座った。

 信長の対面に簗田が座った。

 簗田は状況を説明した。


「坂井一味は今川と組んで戦の準備を進めております。今川も連動して事を起こす構えです。

 近い内に行動に出る事は確実です。ご用心ください」


 信長は簗田に尋ねた。


「具体的にどれほどの数が集まっている?武将は誰と誰が怖い?」


「千五百百です。

 武将では大膳の弟、坂井甚介。この者が一味の先鋒を務めます。そして那古野弥五郎。まだ十五の少年ですが後々恐ろしい武将となるでしょう」


「うちで出せるのは七百だ。叔父上の所は?」


 信光の重臣、赤瀬清六は説明した。

 尾張最強の信光隊の先鋒を務める豪傑である。体はブランドン・カリーのようにムキムキだった。


「五百です」


 続いて信勝の重臣、柴田勝家が説明した。


「兵三百。末森城は鳴海城からの攻撃に備えなければいけません」


 家臣団はざわついた。

 信長派の家臣は「出し惜しみするな」と野次を飛ばした。信勝派は無言で相手にしなかった。

 信長は片手で制した。野次は止んだ。


「鳴海に対する備えも重大な任務だ。今回は千五百で坂井を討つ。

 敵はどう出てくるかな……」


 信長は平手政秀を見つめた。平手は口を半開きにして、ぼんやりと床を見ていた。

 平手は信長派の外交と財務を担当する筆頭重臣だった。

 織田家の四重臣の内、一人は加納口の戦いで死に、一人は赤塚の戦いで引退した。四重臣筆頭の林通勝は信勝派だった。信長が頼りに出来るのは平手だけだった。


 会議後、信長は大叔父の秀敏を私室に呼んだ。

 アルハンブラ宮殿のような部屋だった。スペインから取り寄せたムーア様式家具が並んでいた。

 信長は南蛮人が着る真っ赤なプールポワンとカルサンを着ていた。

 信長は悩みを相談した。


「政秀が心配です。悩みがあるようだ」


「お前だよ……

 平手の息子と騒動を起こしたと聞く」


「五郎右衛門の元に末森の使僧が通っているという未確認情報はありますが、それで俺があいつをどうしたという事はまだありませんよ」


 秀敏は驚いた。


「俺が聞いたのは、お前が五郎右衛門に馬を貸せと言ったのに断られたから、あいつを恨んでいるって話だ」


「俺がそんな幼稚な男だと思いますか?」


「見解が分かれる所だろう。

 どんな小さな事でも今の平手には刺さるんだよ。ともかく平手はしばらく休ませろ。こういう事はな、生きているとたまにあるんだ。

 強い言葉はかけるなよ。否定はするな。急かすな。『頑張れ』は絶対駄目だ。何もせずに見守れ。

 五郎右衛門の事は聞かなかった事にしておく」


「大叔父上はそれでもいいが、俺は当主としてこの情報を見過ごしてはおけません」


「平手は親子二代で忠義の男。信秀殿なら平手を信じて聞かなかった事にするぞ」


「父は甘い男でした。だからあんな最後を遂げるのです。

 もしも本当なら五郎右衛門は追放します。それ以外はおとがめなしです。数年して反省の態度が見えたなら家に戻しましょう」


 十分甘かった。


 平手は一旦休職して、春日井の農村で療養する事になった。

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