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1-2

 織田軍は川を越えた所で斎藤軍の国境部隊と接触した。部隊は収穫後の田畑で対峙した。


 斎藤軍は千。国境の城に籠っていたが出撃してきた。

 織田軍は三千の兵を前面に展開した。


 足軽部隊が突破口を開いた後、主力の侍部隊が飛び込んで勝負を決める、というのが基本的な流れである。

 部隊の前衛には足軽隊が立った。


 最前線には「かい盾」と呼ばれる木盾を横一列にずらりと並べた。会議室のテーブルぐらい重たいので移動には専用の雑兵が必要だった。

 かい盾の後ろに弓足軽が待機した。

 射手は五人+五人で「小連こづらなり」と呼ばれる小部隊を形成した。A組五人が打っている間にB組五人が矢をつがえる。B組が打っている間はA組が準備する、という感じで切れ目なく射撃出来た。

 射手には矢持ちの雑兵が付いた。


 余談だが、この小連は戦国後期に弓五+弓五から弓五+鉄砲五にアップデートされる。これが三段打ち伝説の元になった。


 弓足軽の後ろに槍足軽が待機した。

 槍には個人戦用の軽い二メートルの持ち槍と、集団戦用の重たい五メートルの長槍がある。長槍ばかり揃えている部隊は弱小で、長短取り揃えた部隊は強力とされる。織田軍は大体長かった。乱戦を戦う勇気とスキルが欠けていた。


 ここまでが足軽部隊である。各隊の指揮官は足軽大将が務める。新参の身分の低い武士が就任した。

 この後に侍部隊が続く。こちらの指揮官は侍大将。古参のランクの高い武士が就任した。

 侍も弓隊、槍隊を持っていた。彼らは足軽よりも立派な鎧を装備していた。

 スピード勝負になるので、草摺(鎧のスカート部分)、脛当ては外して軽量化する武士が多かった。

 馬に乗った武士もいた。軍馬は百五十センチの海外馬と百二十センチの在来馬が混じっていた。


 侍部隊の後ろに信秀の本陣が控えていた。

 本陣は長柄隊が守備していた。これは長槍を持って鎧をフルセット着込んだ武士の親衛隊である。彼らは戦には加わらない。逃亡監視の無言の脅しとして後ろから睨みを利かせていた。


 戦に入ると信秀は小型馬に乗馬を変えた。彼は采配を振るって攻撃を指示した。



 味方部隊は前進を開始した。敵は弓を構えてその場で待ち構えた。

 敵味方は距離二百メートルまで接近した。

 敵の弓攻撃が始まった。矢は三百メートルまで届いた。足軽部隊の頭上を飛び越して後ろの侍部隊まで飛んできた。

 しかし届いても威力や命中率はほとんどなかった。矢はふんわり飛んできて武士の前の地面に刺さった。

 誰かが倒したか分かるように、矢には持ち主の印が刻まれていた。これが「矢印」の語源となった。

 味方部隊も矢で反撃しながら前進した。敵味方の矢が戦場を飛び交った。

 勇気ある部隊は前に前にと進んだ。臆病な部隊は怖がってゆっくり進んだ。横一列だった陣形がノコギリの歯状にギザギザに変化した。


 新参の滝川一益足軽隊が最も勇敢に前進した。足軽大将は寄せ集めのアマチュア町人を完璧に統制していた。部隊は瓜の花の家紋の旗を背中に挿していた。


 敵味方は距離百メートルまで接近した。互いの顔が見えるようになった。

 この距離から本格的に矢が当たり始める。

 かい盾部隊はその場に盾を置いて防御壁を形成した。盾に敵の矢が何本も刺さった。

 敵味方は間断なく矢を打ち込んだ。

 大部分はかい盾に止められた。しかし何割かは直進してかい盾の間を通り抜けた。また何割かは山なりに飛んでかい盾の上を通り越した。

 陣笠+腹当で矢はある程度防げた。

 通り抜けてきた矢は腹当に刺さったが、人体までは届かなかった。

 山なりの矢が陣笠に当たったが、へこんだだけで突き通せなかった。

 しかし頭と胴体以外は防御力ゼロだった。運悪く顔や首、手足に当たると簡単に打ち抜かれた。


 味方は数の力で押し込んだ。敵の射手は次々倒された。飛んでくる矢が減った。

 敵の勢いを削った後、味方はまたノコギリ陣形で前進を再開した。


 敵味方は距離五十メートルまで接近した。両者はここで激しい射撃戦を展開した。

 この距離では威力も命中率も上昇した。矢はかい盾にめり込んだ。弓の名手は相手の手足を狙って打ち抜いた。

 滝川隊は鉄砲足軽を少数配備していた。大将の一益自らが鉄砲隊を率いて射撃戦に参加した。

 鉄砲隊は前面の敵部隊に銃弾を浴びせた。

 銃弾はかい盾を貫通した。足軽の腹当も楽々貫いた。

 一益は足軽大将の顔面に狙いを定めた。ここからだと野球ボールぐらいの大きさに見えた。

 一益は足軽大将を狙撃した。足軽大将は顔面を一発で打ち抜かれた。


 味方はここでも数の力で押し切った。敵の死傷者が増大した。損害の大きい足軽部隊は後退して後方の侍部隊と入れ替わった。


 滝川隊は前面の敵部隊の射手をあらかた壊滅させた。

 一益は槍隊に突入を命じた。敵も槍隊を投入して対抗した。

 かい盾の後ろから両軍の槍隊が飛び出した。弓、鉄砲が入り乱れる中、両軍の槍隊は大声を上げて突撃した。勇気ある者は進み、臆病者は退いた。

 両軍の槍隊は正面から激突した。

 持ち槍足軽は槍を前に突いた。長槍足軽は槍を下に叩き落した。

 槍先が一度相手の顔や手足に刺さると、柄に全身の力を込めて相手を押し倒した。向こうが倒れた所でようやく槍先を抜いた。

 死んだと思って喜んで首を取りに行くと、まだ生きていた相手が血まみれで逆襲してくる時がある。ベテランは二、三度刺してからようやく相手に近付いた。


 各部隊も槍隊を投入した。

 各前線で槍隊が激突した。味方は数の力で敵を叩き伏せた。

 劣勢になった敵は逃げ始めた。

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