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13-9

 夜、松平隊は岡崎城の北にある大樹寺に到着した。

 山門の前に住職と僧侶数名が立っていた。

 元康は住職に頭を下げた。


「ご協力いただき、感謝の言葉もありません。このご恩に報いることが出来るよう、今後尽力いたします」


 住職は苦労をねぎらった。


「今日はごゆっくりお休みください。僧兵百、門徒兵四百が皆様をお守りします。今後の事は明日お話しましょう。

 今は苦しい時期ですが、殿様の元に一致団結すれば必ず乗り越えられます」


 一行は境内に入った。住職は門を閉じてしっかりかんぬきを指した。


 大樹寺は松平家の菩提寺である。初代住職はいつか松平家が天下を統一して征夷大将軍となる事を願い、将軍の中国風の呼び名の「大樹」を寺に付けた。

 現住職は「松平旦那(寺で一番大きな檀家)が滅びる時は大樹寺が滅びる時」と近隣の檀家に激を飛ばした。これに応じて門徒兵四百人が集まった。

 大樹寺は大きな寺だった。広い境内に塔や小寺院が百以上建っていた。

 戦闘準備を整えた部隊が境内に配置されていた。髪のある門徒兵だけでなく、坊主頭の僧兵もいた。


 松平隊は境内の小寺院に分泊した。鎧を脱いで布団に横になると、物の五分で熟睡してしまった。


 酒井忠次は部隊を離れて岡崎城下を訪れた。

 城下町は入口の門を閉ざしていた。門前には警備兵が立っていた。

 忠次は警備兵を刺激しないようにゆっくりと近付いた。

 警備兵は忠次に槍を向けた。忠次は穏やかに答えた。


「松平蔵人佐の家来、酒井左衛門尉と申します。桶狭間から参りました。鳥居伊賀守をこちらに呼んでください。伊賀にはこれを渡してください。左衛門尉と分かるはずです」


 忠次は警備兵に立派な槍を渡した。警備兵は槍を手に街に入った。


 しばらくして、鳥居忠吉老人と家臣数人が提灯を持ってやってきた。忠吉は警備兵に言った。


「この者の身分は私が保証する。入れてやってくれ」


 一行は城下町に入った。


 一行は通りを歩いて忠吉の屋敷に向かった。

 忠吉は忠次をいたわった。


「大変だったな。まさかなあ……」


「内心では皆喜んでいますよ。

 殿は今、大樹寺におられます。城内の様子はどうですか?」


「皆逃げたがっている。しかし駿府は城を守って死ね、ただし援軍は出さないと命令している。

 落とし所としては、松平勢に城を守らせる事になりそうだ。信頼されてるな。殿なら小勢でも織田、水野と渡り合えると駿府は判断している」


「信頼よりも兵と弾薬が欲しいですよ。

 我が軍の兵は実数十八人です。これで援軍も寄こさず、自力で水野、織田と戦えと言うなら、今川から離反して織田と組む事も考えないといけない」


「頭数は自分で調達するしかないだろうな。織田だろうが今川だろうが、周りの弱そうな城は全部攻めて食っちまえばいい」


 水野信元隊二千は船で知立城に入った。

 夜、首脳部は城の本丸館の広間に集まった。


 三河は統治の難しい国だった。領主は自立心が高く、事あるごとに今川家に反抗した。しかし松平家に対しては比較的好意的な領主が多かった。

 水野家は三河の戦後統治を見据えて松平家を残した。しかし松平家に水野家に協力する意思はなく、軍を再建して水野家の三河侵攻に抵抗する様子を見せた。

 信元は岡崎城攻めを決断した。


「明日早朝、日の出を待って岡崎城に向かう。敵の兵数は三百以下。数は少ないが侮るな。鳴海と同じ失敗を犯すな」

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