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13-5

 二十日夜、沓掛城の近藤隊は城を出て北の山に入った。部隊はここに沢山の提灯を並べて旗を立てた。後にこの山は「提灯山」と呼ばれる。

 近藤は提灯山にいるように見せかけて、密かに北東の佑福寺に向かった。


 佑福寺は近藤家の菩提寺だった。この当時の寺は有事の際は砦になった。また檀家のネットワークで兵や物資を集める事も出来た。逃げ込んで再起を図るには格好の場所だった。


 二十日深夜、柴田勝家二千は沓掛城に突入した。

 城内は空だった。

 柴田隊は城に火をかけて立ち去った。城は激しく燃え上がった。


 近藤隊はたいまつも持たずに北東への道を進んでいた。

 最後尾の兵士が声を上げた。部隊は振り返った。

 沓掛城の方角から真っ赤な炎が上がっていた。

 部隊は夜空を焦がす大火をしばらく眺めた。


 地面に複数の小さな明かりが見えた。最初はとびっこ(ちらし寿司に入っている赤いプチプチ)ぐらいの大きさだったのが、やがてイクラぐらいの大きさに変わった。

 火縄に火を点けた柴田隊が全速力で突進してきた。


 勝家は提灯山の囮には引っかからなかった。

 柴田隊は近藤隊の背後から突撃した。近藤隊は壊滅。近藤景春は首を取られた。


 深夜、佐々成政隊六百は鳴海城に夜襲をかけた。

 夜襲を読んでいた岡部隊は火矢を打ち込み、油壺を投げ込んだ。佐々隊は炎上した。辺りが明るくなって、照準が付けられるようになった。

 岡部隊は昼間のように鉄砲を猛射撃した。佐々隊は炎で焼かれ、銃弾で打たれた。


 鳴海城の西側は海だった。東の陸地で戦っている間、本国からの使者が闇に紛れて船で入ってきた。


 佐々隊は大量の死傷者を出して明け方には撤退した。

 岡部隊はまた勝鬨を上げた。


 朝、城主の岡部は本国からの使者と本丸館で会った。

 岡部は黒い鎧、熊毛植黒糸威具足を着込んでいた。

 使者は岡部に書状を差し出した。岡部は書状を開いて文面を確認した。

 本国への撤退を命じる内容だった。

 岡部は一読した後、使者に告げた。


「太守様の仇を取らぬまま、武功一つも上げずに帰る事は出来ません。我らはここで最後の一人になるまで戦う所存です。そうお伝えください」


 今いい勝負が出来ているのは壁と弾薬があるからで、本国からの命令に応じて城を出れば、近藤隊のように一時間持たないだろう。

 今は城で可能な限り粘って相手から譲歩を引き出すしかなかった。


 織田家は鳴海城は落とせないと判断し、交渉の使者を送り込む事にした。

 二十一日午前、全権担当の林通勝が鳴海城に乗り込んだ。

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