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奇襲ルート-1

 信長は大きく右手を振った。織田軍は静かに動き始めた。


 南の丘には今川家重臣の朝比奈泰朝の部隊が布陣していた。朝比奈隊は戦闘準備を整えて待ち構えた。


 織田軍は東の丘陵地帯に向かった。

 丘の麓まで来た時、辺りが急に暗くなった。

 強い雨が降り始めた。西から東に向かって強い風も吹いてきた。

 部隊は一時停止した。兵士は弓鉄砲をカバーで覆った。

 遥かに西には熱田神宮がある。兵士は熱田大神が蒙古襲来の時のように神風を吹かせているのだと思った。大変な天気だが、不思議と嬉しくて笑みがこぼれてきた。

 雨は急に激しくなった。


 雨量が一時間三十ミリを越えると百メートル先の人間が見えなくなる。今回は強烈な風も伴っていた。


 午後一時、織田軍は山道に入った。


 この時、朝比奈隊は数百メートル先が見えない状態だった。

 指揮官の朝比奈泰朝は持ち場を守りつつ、周辺諸隊に救援要請を送った。

 豪雨の中、自分から二倍の敵に攻めかかれば壊滅する。

 しかし周辺部隊をかき集めれば四千五百にもなった。これだけあれば本隊が来るまで十分守り切れるだろう。

 泰朝は織田軍が中島砦にいると思っていた。


 織田軍は山道を東に移動した。起伏の多い地形だった。息を切らして坂道を上がったり、下ったりした。

 雨風は益々激しくなった。

 石つぶてのような冷たい雨が背中に当たり続けた。折れた枝や小石が宙に舞った。


 道を進んでいくと、正面に太子ヶ根という丘が見えてきた。丘の南側には東海道が走っていた。

 織田軍は太子ヶ根の北の麓で一時停止した。

 信長は勝家、可成、長秀を連れて太子ヶ根の頂上に上った。


 雨は多少弱まった。逆に風は激しくなった。

 太子ヶ根の東に沓掛峠という丘があった。

 峠の頂上に「境松」という大きな松の木が立っていた。近くには同じくらい大きな楠木もあった。

 強風でこの楠木が東に向かってへし折れた。楠木は境松をかすめて地面に倒れた。

 麓で見ていた兵士は「自分達は熱田神宮の神軍なのだ」と興奮した。


 この時の推定風速は三十メートル以上。トラックが横転するほどの強い風が一帯に吹きすさんでいた。

 雨は滝のように降り、地面には泥の川が出来ていた。風は大木が折れるほど強かった。命の危険を感じる所だが、兵士は幸福感に包まれていた。

 気分が上がっている時は何を見てもポジティブに考える。兵士のモチベーションは万全だった。

 信長は信心深い兵士のモチベーションを高めるため、戦闘前に四つの神社に参拝した。

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