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正面攻撃ルート-3

 地面はぬかるんでいた。織田軍三千人が走ると泥しぶきが大量に上がった。

 織田軍は黒煙を上げて攻めかかった。

 指揮官不在で戦える部隊は存在しない。麓の敵は一瞬で崩れて田楽坪方向に逃げ出した。武器も旗も投げ捨てた。

 織田軍の弓鉄砲部隊は立ち止まってカバーから武器を外した。槍隊はそのまま追撃した。


 今川軍首脳部は桶狭間山の本陣にいた。彼らは天幕の下で雨が止むのを待っていた。

 外から鬨の声や銃声が聞こえた。

 首脳部は本陣を出た。

 山の斜面から田楽坪の様子を見下ろせた。


 長坂道方面から敗残兵と織田軍が雪崩れ込んできた。

 田楽坪の各隊は大混乱に陥った。兵士は武器を捨てて逃げ出した。織田軍は混乱する戦場を突っ切って東に向かってきた。


 首脳部は慌てた。

 副司令官格の筆頭重臣、三浦義就は義元に進言した。


「ここは一度沓掛城まで退きましょう!」


 義元は頷いた。

 首脳部は急いで斜面を駆け下りた。地面は柔らかくなっていた。何人も足を滑らせて麓まで転がり落ちた。

 麓にいた本隊五千も逃げて半分に減っていた。しかし黒い鎧の精鋭近衛部隊は全員残っていた。

 義元は近衛部隊に指示した。


「私と来い!脱出するぞ!」


 二時、義元と近衛部隊は北西に向かって逃げ始めた。

 残った首脳部は部隊を取りまとめて義元を追った。

 井伊直盛は遠江の猛将である。


「ここで生きて帰っても『敗軍を見物して逃げ戻った』と物笑いの種になる!拙者と死地に同道せよ!」


 松井宗信は三河、尾張方面軍の司令官を長年務めてきた。


「井伊殿のお言葉ごもっとも!太守様の盾となって潔く死のう!」


 松平政忠は元康の叔父で、勝利を報告しに本陣に来た所で襲撃に巻き込まれた。


「松平衆、いるか!?今こそ太守様への御恩に報いる時だ!」


 織田軍は二手に分かれた。

 信長率いる二千は北東に向かった。柴田勝家率いる千は田楽坪に残って各隊の掃討に当たった。


 柴田隊は田楽坪を逆時計回りに移動して、敵を南西の隅に追い込んだ。

 敵は南西の丘に集まった。

 柴田隊は丘を取り囲み、周囲から激しく鉄砲を打ち込んだ。

 この丘は後に「巻山」と名付けられた。織田軍にぐるりと取り巻かれた事から付けられたという。


 信長隊二千は義元隊二千五百を追って北東に向かった。

 義元隊は井伊隊五百を分離した。井伊隊は決死の覚悟でしんがりに立った。

 信長隊から森可成隊三百が発進した。森隊は井伊隊に襲いかかった。

 信長隊は井伊隊、森隊が戦っている脇をすり抜けた。


 義元隊は三浦隊千を分離した。三浦隊はその場に留まって弓を構えた。

 信長隊から滝川一益隊四百が発進した。滝川隊は三浦隊に弓鉄砲を打ち込んだ。

 信長隊は三浦隊、滝川隊が戦っている脇をすり抜けた。


 義元隊は参謀長格の吉田氏好隊五百を分離した。吉田隊は追っ手に向かって突撃した。

 信長隊から丹羽長秀隊三百が発進した。丹羽隊は吉田隊の突進を受け止めた。

 信長隊は吉田隊、丹羽隊が戦っている脇をすり抜けた。


 義元隊五百は田楽坪を出て松原に入った。後ろから信長隊千が追ってきた。

 義元隊は松井隊二百を分離した。信長隊から前田利家、佐々成政隊三百が発進した。

 前田、佐々隊は正面突撃した。松井隊は突進を受け止められず、松原の西の丘の中腹まで押し上げられた。


 義元隊三百は義元を中心に円陣を張った。部隊は東へ逃げた。

 信長隊七百は義元隊を追った。


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