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首脳部は話し合いを続けた。そこに突然伝令が駆け込んできた。
伝令は大声で告げた。
「佐々政次勢三百、中島砦からご出撃!田楽坪方面に移動中です!」
中島砦から一部隊が独断でBルートを進み、田楽坪の今川軍に正面攻撃を仕掛けたという。
首脳陣は指揮官の佐々政次を褒めた。
「あっぱれ佐々隼人!織田武士の鑑!」
「殿、我らも隼人殿に続きましょう!」
内心は腹立たしい気持ちでいっぱいだった。これで敵の警戒度が跳ね上がった。
佐々隊を蹴散らした今川軍は、このままBルートを逆走して中島砦に突っ込んでくるかもしれなかった。または守りを固めたり、移動を始めるかもしれなかった。
信長は即断した。
「直ちに中島砦に向かう」
時間がないのでAルートはもう使えない。B、Cルートに賭けるしかない。
信長は立ち上がって一人で本堂を出た。
側近が白い馬を連れて本堂の前にいた。信長は馬に乗った。
後から重臣の林通勝が走ってきた。彼は馬の轡を取って出撃を止めた。
「お止めください!奇襲策は失敗しました!清州城に帰還すべきです!」
家臣の平手久秀も反対した。
「敵はこの勢いで中島砦に逆襲を仕掛けてきます!自分から包囲に飛び込んでいくようなものです!」
信長は手短に答えた。
「敵がこのまま押し寄せてくれば砦を放棄して籠城も考えよう。しかし来ないなら続行だ」




