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11-12

 十九日朝四時、元康隊は丸根砦、朝比奈隊は鷲津砦に攻撃を仕掛けた。酒井隊は正光寺砦と睨み合うだけで戦わなかった。


 元康隊は盾を構えて麓の入り口のバリケードに接近した。

 元康隊の先鋒は筆頭重臣の石川清兼が務めていた。彼は五月人形のような鎧、赤色威胴丸を着ていた。

 敵の反撃はなかった。石川隊は警戒しながら接近した。

 山の上から佐久間隊が駆け下りてきた。黄色い旗の雪崩が起きたようだった。

 石川隊は慌てた。清兼は部隊に後退を指示した。


「一旦引いて守りを固めろ!」


 佐久間隊は石川隊に突撃した。

 石川隊は混乱した。前線の兵士は次々討ち取られた。


 元康は石川隊を下げて、新手の大久保忠世隊を前線に出した。

 大久保忠世は歴戦の猛将である。黒い鎧、鉄黒漆塗十八間筋兜縦矧桶側胴具足を着ていた。


 大久保隊は盾を構えて前進した。石川隊は負傷兵を連れて後退した。

 大久保隊は地面に盾を並べて弓鉄砲を構えた。

 佐久間隊は盾を持たずに突スナで突っ込んできた。

 両隊は射撃戦を開始した。


 大久保隊は盾に身を隠して敵先頭集団を狙い打った。佐久間隊は動きながら不安定な態勢で射撃した。

 味方の玉は次々当たった。敵の玉は盾に弾かれた。

 佐久間の先頭集団十数人は打ち倒された。後続は命を惜しんでその場に伏せた。

「決死の突撃」と言っても、勇敢なのは一番先頭の集団だけで、彼らが倒されると後は身がすくんで動けなくなる。


 佐久間隊の突撃は失敗した。

 佐久間隊先鋒は後退した。代わって後方から盾を持った新手が上がってきた。

 大久保隊と新手は盾を挟んで打ち合った。


 元康と佐久間盛重は前線を何度も入れ替えた。疲れた部隊は後方に下げ、新しい部隊を前線に上げた。

 元康隊と佐久間隊は二倍の差があった。佐久間隊は入れ替える内に無傷の部隊がいなくなった。盛重は傷付いた部隊も前線に張り付かせた。

 佐久間隊はメンタルも切れていた。だからこそ短期決戦で無理に突撃したが、元康隊は受け止めて消耗戦に持ち込んだ。


 二時間後、佐久間隊は息切れした。

 反撃は減った。こちらが十発打つ間に向こうは二、三発打ち返してきた。

 負傷者も増えた。前線の兵士は体のどこかに白い包帯を巻いていた。


 元康は側近で清兼の息子の石川家成を呼んで指示した。彼は赤い鎧、紺糸威丸胴具足を着ていた。


「今出れば勝てる。旗本衆を率いて突入しろ」


 本陣から精鋭近衛部隊二百が出発した。部隊は赤や黒の鎧で完全武装していた。

 部隊は前線の盾の後ろに待機して、突入のタイミングを計った。


 味方が出る前に敵が動いた。

 敵の盾の後ろから、佐久間盛重が槍一本で飛び出してきた。他の兵士も雄叫びを上げて彼に続いた。

 盛重は白い派手な鎧、銀箔置白糸威具足を着ていた。敵部隊は盛重を先頭に突撃してきた。


 家成は一瞬慌てた。

 味方の盾の後ろから、黒い鎧、黒丸威胴丸具足を着た若い武将が槍一本で飛び出した。他の兵士は無言で彼に続いた。

 近衛部隊は黒鎧の武士を先頭にして突撃した。


 白と黒の武士は真正面から激突した。

 盛重は全力で顔に突きを打ち込んだ。黒武士は下を向きながら鋭く踏み込んだ。盛重の槍は頭上を通り抜けた。

 黒武者は下から槍を突き上げた。黒武者の槍は盛重の腹を貫き、背中から飛び出した。盛重は倒れた。

 黒武者は戦場全体に響く大声で叫んだ。


「松平蔵人佐の家来、本多平八郎忠勝!敵将、佐久間大学を討ち取った!」


 敵部隊はパニックになった。

 近衛部隊は忠勝を追い抜いて突撃した。敵部隊は逃げ出した。

 近衛部隊は敵を蹴散らして山道を駆け上がっていった。


 朝比奈隊と鷲津砦守備隊は山の麓で打ち合っていた。

 隣の丸根砦から炎が上がった。

 麓の守備隊は動揺した。反撃回数が減った。

 丸根砦を落とした近衛部隊が尾根伝いに鷲津砦に移動してきた。

 麓の守備隊は山の上に移動し始めた。兵数が減った。

 朝比奈泰朝は部隊に総攻撃を指示した。


「今だ!全軍突撃しろ!」


 朝六時、二つの砦は陥落した。砦は炎上した。

 佐久間盛重は戦死。織田秀敏は行方不明。部隊は壊滅した。生き残りは北に逃げていった。

 水野隊、佐治隊は三つの砦から退却した。酒井隊は彼らを追撃しなかった。


 大高城の部隊は歓喜の声を上げた。本当に朝起きたら敵が消えていた。

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