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11-10

 十八日夜、織田家首脳部は清州城の本丸館の広間に集まった。

 信長は正面奥に、家臣は部屋の左右に座った。

 丹羽長秀は状況をまとめた。


「大高城方面の動きです。

 夕方、丸根砦の佐久間大学殿から報告がありました。


 敵は昼に攻めてきた。夜には大高城に兵糧を入れてくるだろう。明日の朝には、満潮の時間を見計らって鷲津、丸根砦に攻撃を仕掛けてくるはずだ、と」


 清州城から大高城方面に移動するルートは二つあった。

 伊勢湾沿岸部を通る近道のルート。内陸部を通る遠回りのルート。

 潮の関係で近道のルートは午前中海に沈んでしまう。援軍をすぐに遅れないタイミングで敵は攻めてくる、と砦側は考えた。


 長秀は説明を続けた。


「また今日の昼から午後にかけて、複数の漁師から『沖合で服部水軍を見た』と目撃情報が寄せられています」


 滝川一益が分析した。


「既に大高港に入っているでしょう」


 池田恒興は砦の救援策を提案した。


「大高城の包囲は解除されました。今度はこちらが包囲を受ける番です。救援に向かわなければ砦は早晩落ちます。明日にも部隊を送りましょう」


 滝川一益は分析を続けた。


「現在の今川軍は伊勢湾のどこにでも移動出来ます。我々がどこかに出撃すれば、敵は手薄になった場所に上陸してくるでしょう。出撃せずに立て籠もれば堂々と北上してくるでしょう。

 今出撃するのは非常にまずいです」


 柴田勝家は長秀に尋ねた。


「義元の動きは?」


「現在、今川本陣は沓掛城にあると考えられます」


 勝家は出撃策を提案した。


「服部水軍が大高港に入った所で、今は運ぶ兵がありません。

 義元が大高城に入る前に仕掛けましょう。それ以外に手はありません」


 森可成も同意した。


「明日の昼、義元は田楽坪に現れるとの絶対確実な情報があります。

 梶島、実相寺では不運にも失敗しましたが、得難い経験が得られました。三度目は必ず成功します。明日昼、田楽坪に打って出ましょう」


 林通勝は籠城策を提案した。


「清州城の壁は高く食料、弾薬も豊富です。一年は優に戦えます。

 敵は稲作が成り立たなくなる限界まで兵を集めて攻め込んできました。村の女性だけで田んぼの手入れは厳しい。最長でも秋の刈り入れ時には帰らないと、今年の十分な収穫は見込めません。撤退時に追撃をかければ大勝利間違いなしと考えます。

 村井殿(財政、行政担当の村井貞勝)が管理する蔵なら二年は持ちます。(外交担当の)私は公方様から和睦の御内書をいただいてきましょう。六角家から二万の援軍を呼び寄せましょう。

 籠城こそが最適な作戦です」


 首脳部は意見を戦わせた。


 会議当初は籠城策が圧倒的支持を集めた。しかし可成、勝家、長秀が粘り強く籠城派を説き伏せていった。

 会議はやがて両派の折衷案に収束していった。

 明日出撃する。失敗した場合に備えてある程度城に兵を残す。砦の部隊は今日一日耐えてもらう。明後日から徐々に退却させる……


 話はまとまった。信長は決断した。


「明日、国境に部隊を出して今川軍を迎撃する。皆いつでも出られるように準備を進めてくれ。

 疲れたな?」


 首脳部は頷いた。三時間以上喋ったので頭も体もくたくただった。


「酒を用意しよう。飲み過ぎない程度に飲んでくれ」

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