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10-16

 鉄砲組は秀吉達の方にやってきた。

 大将は上品に挨拶した。


「我らは越前から参りました。

 私は荒深小五郎と申します。こちらは甥の三宅弥平次」


 副将は凛々しく挨拶した。


「三宅弥平次と申します。以後御見知りおきください」


 秀吉は挨拶した。


「織田上総介様家来、木下秀吉と申します。こちらは元同僚の前田利家」


「前田利家と申します!今は色々あって浪人中です!」


 四人は挨拶を交わした。

 小五郎は秀吉に尋ねた。


「それで、支払いの事ですが……」


 秀吉は請け負った。


「期日までに必ずお支払いします。津島商人が全員破産するまで借金してやりますよ」


「そうであれば、熱田の馬借頭から借りた方がいいでしょう。

 戦に勝ちたいのであれば、兵法ではなく運送を学ぶ事です。ここで馬借頭と縁を作っておけば、木下殿の将来に必ず有利になります。

 頭を口説く時は呼んでください。私も行きます」


 馬借の上には県トラック協会のような馬借頭がいて、ここが各地の馬借を取りまとめていた。馬借頭は金融業も兼業しており、地元のボスとして君臨していた。

 馬借頭と友好関係を築く事が輸送を円滑に行うコツだった。


 十人の槍足軽組がやってきた。周りは声を上げた。

 十人は野武士のような集団だった。「粗にして野だが卑ではない」という感じで、恰好は汚いが、決して卑しくはなかった。背中に鞘付きの槍を背負っていた。

 組大将は蜂須賀正勝。色黒、丸顔で黒団子のような青年である。元は斎藤道三に側近として仕えていた。道三死後は尾張に移り、幾つかの戦いで名を挙げたが、今は主君と喧嘩して浪人になっていた。

 正勝は利家に話しかけた。


「蜂須賀正勝と申します。我ら十騎、前田殿に世話になりたい」


 利家は覚悟を尋ねた。


「お前なら俺が首になった事情を知っているだろ。今回は復帰のために相当無理するつもりだ。楽に稼ぎたいなら他の職場を探してくれ」


「いいや、この戦で一番安全な場所は前田殿の陣です。楽をしたいから仲間に入れてください」


 利家の家臣の村井長頼が騎兵十人を連れてやってきた。

 騎兵は馬借の従業員だった。戦闘はともかく、馬の扱いは上手かった。

 秀吉は利家に話しかけた。


「これで三十人揃ったな。後はお前次第だ」


 利家は秀吉に頼んだ。


「俺はずっと槍一本で戦ってきた。部隊を率いるのは今回が初めてになる。

 力を貸してくれ、秀吉。俺が知る限り、お前はこの世で最も賢く、最も勇敢な人間だ。お前がいれば必ず勝てる」


「俺はただの根性なしの事務屋だって」


「違うんだよ。本当に強い人間は威張らない。優しくて真面目なんだ。そういう人間を集めて本気の今川家と戦える事を嬉しく思う」


 三十人は互いに挨拶を交わした。


 小五郎と正勝は集団から少し離れた場所に並んで立った。

 正勝は小五郎に挨拶した。


「お久しぶりです。俺は生きていると信じていましたよ。

 今は何を?」


「色々です。武者修行したり、傭兵したり。子供相手に塾をやったり、医者をやったりもしています。

 蜂須賀殿も元気そうで良かった」


「どこに行っても上司と喧嘩ばかりです。俺はね、斎藤山城っていう最高の上司を知っていますから。どうしてもあの方と比べてしまう。

 この戦い、勝つか負けるか分かりませんが、あなたといれば必ず生き残れます。

 頼りにしています。明智光秀様」


 決戦が迫っていた。


(続く)

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